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婚約者に裏切られて、知らない花婿と結婚したら、なぜか幸せです  作者: pinecone


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04話 結婚式

——そして、式当日。


純白のドレスに身を包む。

顔面蒼白の新婦が一人。


「緊張されますよね。大丈夫ですよ!」


介添えのスタッフが、優しく微笑む。


(絶対…色々…大丈夫じゃない!)

心の中の声が表情に出てしまいそうになる。

ぐっと押し殺し、咲も優しく微笑み返した。


そこへ、正装した両親がやって来た。

二人とも、実に晴れやかな顔だ。

(…なんで?)

聞きたいことは山ほどある。

あの日から、何が起きていたのか。

何度も父に、確認した。


『いいから安心しなさい』


その度に、父はそう答えた。


キャンセルしなくて本当に良かったのか。

新郎のいない、この式をする意味があるのか。

何から話していいのか。

整理がつかず、口をパクパクさせる。


すると。

ドアをノックする音が聞こえた。


「お時間です」


(もうダメだ、どうにでもなれ…)

咲は覚悟を決める。

精一杯の作り笑顔で部屋を後にした。


父の隣に立ち、チラリと見上げる。

扉の前でスタンバイしていると、父が口を開いた。


「相手方との顔合わせは、式が終わってからにして頂いたから」


(…相手方?)


考える間もなく、そのまま歩き出す。

扉が開く。

光が差し込む。


そして——

先を見ると見知らぬ男性。


濃紺のタキシード。

長身で、遠くからも分かる、整った顔立ち。


(…どちら様で?)


厳かな音楽が流れる。

曲に合わせて、一歩ずつ進む。


やがて。

その男性の前に立つ。

父から新郎?へ、手を渡された。


神父の声が遠くで響く。

そして、誓いの言葉。


「私、鈴木大地は——」

(…え?)

「藤井咲を妻とし——」


思わず横を見る。

鈴木だいち(大地)。

元カレの名前は、鈴木たいち(太一)。

思考が追いつかない。

頭が追いつかないまま、咲の番となった。


「わ…私、藤井咲は——」

喉が乾く。

「鈴木…だ…大地を夫とし——」


宣言が終わる。

(本名…だよね)


ここまで来ると、緊張は少し収まり、余裕がうまれた。

『何とかなるものだな』

自分の適応力に感心する。


列席者を見ると、両家バランスのいい人数だ。

新郎だけでなく、ここにいる人たちは、どこから…

(これも父が…?)

どこまでが本当でどこまでが噓なのか。

そんなことを考えているうちに、プログラムはどんどん進む。


見たことのないプラチナのシンプルな指輪。

咲の薬指にピッタリだった。

(少し前に母からサイズを聞かれたのは、これのためだったのか…)

まさか本当に指輪を用意するとは…

両親の巧妙さに、少し笑ってしまった。

そして。

新郎、鈴木大地の薬指に、お揃いの指輪をはめる。


向かい合い、新郎はベールをそっと上げた。

咲が顔を上げると…

初めて、しっかりと目が合った。

優しい瞳。

トクトクと心臓が騒がしくなる。


(……)

(…この人が、旦那様…)


少しの間。


そして。

みんなが見守る中、誓いのキス。



——その後


披露宴は終始笑顔で乗りきった。

はじめのピンチは、いつもお互いをどう呼び合っているか聞かれた時だった。

適当に答えればよかったものの、変に思考がはたらいてしまった。

(呼び捨ては失礼かも…君も変だよね、苗字はもっと変だし…)

しどろもどろになり、どうなるかと思ったが…

新郎——大地が助け舟を出してくれた。


『僕は、“咲さん”と呼んでいます』


すかさず、それに便乗する


『わ、私も“大地さん”と…』


それから。

どこまで話して良いのか分からないことがあった時、

『大地さん』

と呼んで、大地に答えてもらった。


都合が悪いことは、

『それは2人の秘密です』

と、大地がにこやかに言うと、それ以上聞かれることは無かった。


時折見せる笑顔に、また騒がしくなる心臓。

それと同時に、ブレーキをかける。

(これは、お芝居だから…)

気持ちが動きそうになるのをこらえる。


咲は小さく深呼吸し、気持ちを落ち着かせた。

そして。

彼の話すことに、作った笑顔で相槌を打ったのだった。



3時間後。


何とかこの日を乗り切った。

慣れないドレスにお色直し、ゲストへの接客。

事前に何も知らされていない緊張感。

咲の体力とメンタルは、ほぼ限界だった。

披露宴会場を後にする。

手を引かれ、2人でタクシーに乗り込んだ。


(…それで?私、今からどこに行くの?)


その瞬間。

咲の意識が、ふっと途切れた。


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