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婚約者に裏切られて、知らない花婿と結婚したら、なぜか幸せです  作者: pinecone


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3/12

03話 これからの事

その日の夜。

咲は、自分の部屋のベッドに横たわり、天井を見つめていた。


「あの子…私と全然違う雰囲気だったな…」


怒りよりも『なぜ』という気持ちでいっぱいになる。


2人の交際は決して順風満帆ではなかった。

太一の交友関係の広さと、楽観的過ぎる性格。

後先考えない行動。

女の子とのうわさもしばしば…


これまでも、たくさん話し合ってきたのに。

周りには色々言われたけど…

その都度、2人で乗り越えて、ここまで来たじゃない。

どうして。

(あの子がいるのに…どうしてプロポーズなんてしたの?)


クッションを抱く手に力が入る。

『なぜ』を確かめるにはもう一度話し合う必要がある。

でも、太一と話し合うことはもうしたくない。

きっとまた同じことの繰り返しになるだろうから。


(…この3年間って、何だったんだろう)


『幸せにする』と言った、プロポーズの言葉。

どんなつもりで言ったんだろう。

笑っていた時間。

信じていた未来。

全部が、薄っぺらなもののよう。


それに…

(私は本当に彼が好きだったんだろうか?)


そう自問する。

正直なところ、恋愛感情はそれほどなかった。

どこか危なっかしい行動は、

『私がいなかったら、この人は大丈夫だろうか?』

と、そんな風に思わせるものだった。

いつからか、保護者のように世話を焼くことが当たり前になって…


(きっと煩わしかったのだろう…)


こんな気持ちだから、心が離れてしまったかもしれない。

太一も。

私も。


(私にも非があるのだろうな。)

そんな事を考えた。



そんな風に自分の気持ちに整理がついた時、現実が押し寄せる。


式場への連絡。

親族への説明。

諸々のキャンセル料…


やるべきことは山ほどあって、感傷に浸っている余裕はなかった。

つくづく自分の性分が嫌になる。


(こんな時、しくしく泣ければ、“かわいい”と思ってもらえるのだろうか…)


「…寝よう」

明日は、とても忙しくなる。

今晩はしっかり睡眠を取ることにした。

ガバッと頭から布団を被る。

無理やり思考を切り、ぎゅっと瞼を閉じた。



翌朝。


まずは自分の両親に報告することに。

昨日の出来事を淡々と話す。

あの写真も見せた。

言葉にすればするほど現実味が増していく。


両親は、この結婚に少し不安があった。

何度か顔を合わせたことがあるが、どうにも太一が信頼に値しなかった。

しかし、咲が選んだ相手なのだから。

そう思い、この結婚を承諾したのだった。


その事を咲は理解していた。

もちろん、太一に良い面もあった。

初めは、お付き合いするつもりはなかった。

でも。

諦めず自分の事を『好きだ』と伝えてくれる、この人を好きになった。

(この人となら)

そう信じ、プロポーズを受けた。


「太一とは、もう無理だと思う」


説明の後、両親にそう告げる。

せっかく応援してもらったのに。


「この先の未来が、まったく想像できないの」


両親はしばらく黙っていた。

やがて、父が口を開く。


「…咲」


優しい声。


「大変だったね、よく決断したね」


その一言で。

ようやく張り詰めていたものが、ぷつりと切れた。



「…ごめん」


声が震える。


「ドレス…見せられなくて…」


母がそっと肩をたたく。

その瞬間、咲は涙が止まらなくなった。


しばらくして、ようやく落ち着いた頃。

父が湯呑みを静かに置いた。

コトン、と小さな音が部屋に響く。


「咲」


父はまっすぐ咲を見た。


「式場はそのままにしよう」

「……?」

「ドレス、着るんだろう?」


穏やかな表情。


「父さんと母さんに、見せてくれ」

「え?でも…」


意味が分からなかった。

理解が追いつかない。


「…あとは」


父は立ち上がり、ジャケットを羽織る。


「全部、父さんに任せなさい」


それだけ言うと、スマホを片手に家を出て行った。


(…どういうこと?)


コトン…

ぽかんとした顔をする娘の前に、お茶を置く母。

母と目が合う。

にこっと笑い一言。


「あ、晩御飯食べていくわよね?」

「う…ん」


この時咲は、この案件は自分の手から離れたことを悟ったのだった。


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