17話 本音2
翌日。
時計は10時を指していた。
「ん…うー…」
体が気怠い。
(あぁ、昨日飲み過ぎて…)
大地の視界が戻ると、目の前に無防備に眠る咲がいた。
「…!」
ビクッとして半分身体を起こす。
その動きで咲も眠りから覚めてしまった。
「…あ。大地さん…おはようございます」
咲も身体を起こし、まだ少し眠そうにしながら
「体調はどうですか?二日酔いとか、なっていませんか?」
「は…い…」
何とか返事をしたが、大地の脳は、昨日の記憶を処理するのにいっぱいいっぱいで、気の利いた言葉が出なかった。
しばらくして…
(う…わぁ。全部覚えている…)
佐々木に言われた事も、帰ってから咲に駄々をこねた事、咲の介抱、それに咲に言われた“大好き”の言葉も。
(普通あそこまで飲んだのなら、記憶が飛ぶものじゃないのか?いっその事忘れさせてくれよ…)
自分の酒の強さを悔いつつも、咲の言葉は忘れたくなかった想いもあり、なんとも複雑な表情を浮かべていた。
すると。
咲がグイッと顔を近づけスンスンと匂い、一言。
「んん!大地さん…お酒臭いです…」
「!、あの、ご、ごめんなさいっシャワー!シャワー行ってきますっ!」
そう言い残し、急いでバスルームに駆け込んで行った。
(助かった…ちょっと、冷静にならなければ…)
頭からシャワーをかぶり、どうやって昨日のことを謝ろうか考える。
大地がシャワーを終え出てくると、卵粥とお味噌汁が用意されていた。
「お粥、ありがとうございます。美味しそうですね」
「昨日、飲み過ぎてたみたいだったから、お粥にしてみました。お味噌汁はシジミじゃないんですけど…」
と、豆腐の入ったお味噌汁をよそう。
「豆腐も好きですから、嬉しいです」
そう言って大地は箸とお茶を用意し、食卓へ並べ、2人で食べ始めた。
咲が何か話さなければと思いながらも、どう切り出そうかと考えていた時。
大地が、先に話し始めた。
「あの、咲さん…昨日は本当にすみませんでした…その、色々と我儘を言ってしまったというか…かっこ悪いところを見せてしまいました…」
「い、いえ!えっと、その…かわいかったですよ!」
「え…?」
「…あ」
思わず本音が出て、目が泳ぐ。
が、逃げてばかりでは気持ちが伝わらないと、今回の事で学んだ。
咲は覚悟を決めて、大きく息を吸い自分が思っていたことを口にした。
「あの、大地さん」
「は、はい…」
その真っ直ぐな眼差しに、昨日のことを、咎められると覚悟し大地は背筋を伸ばす。
「私は、大地さんが、だ…大好きなんです…結婚も、はじめは、あんな感じだったけど、今では大地さんと結婚出来て本当に良かったと思っています」
「は…い」
予想していなかった言葉に嬉しくも、少し戸惑う。
今まで“会話”はたくさんしてきたが、自分の気持ちを伝える“会話”はしてこなかった。
始まりが特殊な二人。
『核心を突く事』は、お互いに、どこか入ってはいけない領域のような感じがしていたからだ。
咲からの嬉しい言葉に、トクトクと心臓が高鳴る。
咲が続ける。
「それで、その…なんで逃げちゃったのかと言いますと…遥と優梨が…いや、2人は関係ないんだけど関係あるというか教えてもらったというか…結婚するとイロイロするとかなんとか…」
まとまらない言葉で懸命に伝える。
「で、そのイロイロのために、遥と優梨からもらった下着をね…着てみたりして、準備してみたんだけど、恥ずかしくなっちゃって…その、逃げちゃってごめんなさい」
「そ…うだったんですね…」
あの日の咲の行動の理由がハッキリ分かり、くすぐったい気持ちになる。
さすがに咲にばかり負担をかけるのは忍びなく感じ、大地も話す。
「咲さん、僕も咲さんが大好きです。嫌われてなくてよかった…」
「そ、そんな!嫌いになんてなりませんよ!」
嫌いになんてならないと言われ、この上なく幸せを感じる。
(自分の気持ちを…そして伝えていなかったことを素直に伝えよう)
大地はそう決心した。
「僕は咲さんと一緒にいられるだけでいいと思っていました。」
「……」
「でも、日に日に増していくこの咲さんへの感情を、突然結婚してしまった咲さんにぶつけたら嫌われるんじゃないか、この関係が壊れてしまうんじゃないかって…だから…」
咲は、今、お互いに同じ気持ちだと確信し、嬉しく思った。
だけど…
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