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婚約者に裏切られて、知らない花婿と結婚したら、なぜか幸せです  作者: pinecone


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16/18

16話 本音1

23時ごろ。

大地の帰りを待つ咲に、大地のスマホから着信が入った。


「はい!咲です」

『あーすみません、同僚の佐々木と言います』


知らない声。


「え?は、はい!?」


一瞬、大地に何かあったのかと胸がざわつく。


『あの、鈴木君がちょっと飲み過ぎてしまって…今タクシーでそちらに向かっているのですが、マンションの下まで迎えに来られませんか?あと10分ほどで着くと思います』

「わ、わかりました、すぐ行きます」


通話を切った後、急いで上着を羽織り、マンション下で待つ。

暫くするとタクシーが止まり、佐々木の肩に手をまわし、持たれかかりながら大地がふらふらと出てきた。


「だ、大地さんっ!」


咲が駆け寄り、大地の反対側の手を自分の方にかける。


「すみません、こんな感じの再開で。結婚式、呼んでいただきありがとうございました。」


佐々木が挨拶をする。

咲は「あ!」と思い出し、慌てて挨拶をする。


「こ、こちらこそありがとうございました、あの、大地さんからよく名前をお聞きしています。」

「えー、どんな事でしょう?鈴木、変なこと言っていませんか?」


にかっと笑って、そう答えると、咲の緊張は少し和いだ。

マンションの入り口まで少しの会話を楽しんだ。

咲は終始大地を心配そうに見ていた。


(心配することなさそうだな…)


佐々木は、そう感じた。



「おーーーい、すずきー、家だぞー」


ぺちぺちと頬を雑にたたき、佐々木が雑に大地を起こす。


「う…ん…」

「大地さん、大丈夫ですか?歩けそうですか?」


心配そうな咲が目に映る。


「さきさぁん…ただいまぁ…」

「わっ!」


そう言ってバランスを崩し咲にもたれかかる。

倒れそうになりながらも必死に耐える咲。

どうやってこの状態のまま部屋に戻るかを考えていると、佐々木が後ろから羽交い絞めをし、咲から大地をべりっと剥がした。


「こらー、しっかりしろ、奥さんに嫌われるぞー、しっかり立て!」

「……いやだぁ、きらいにならないでぇ~」


そう言って自分で何とか自立したが、ふらふらだ。


「大地さん、手を…」


咲が、向かい合わせて手を取り、後ろ歩きに進む。

佐々木は、もう大丈夫だと確認すると、そのまま待たせてあるタクシーへ向かった。


「あ、あのっ佐々木さん、今日は本当にありがとうございました!また、家にもいらしてください!」


咲がそう声をかけると、ひらひらと手を振ってタクシーに乗り込んだ。



◇◇◇


「うぅ…さきさぁぁん…」

「…は~い」

「さきさんんんん…」

「はいは~い…えっと、ここに座れますか?」

「うう…」


(大地さん、かなり飲んでるな…)

駄々っ子モードの大地をベッドに座らせる。


「あの、お水持ってきますので、ちょっと待っていてくださいね」


そう言って手を放そうとすると、上目遣いでギュッと袖をつかまれた。

(うっ、かわいい…)


「だ、大地さん、これだとお水が取りにいけません…お水、いりますよね?」


こくこくとうなずく。


「えっと、じゃあ手を…離せますか?」


暫く咲が困った顔で大地をじっと見つめると、ふっと力が弱まった。


「すぐ来ますからね」


そう言って咲はキッチンに向かった。



酔ってるものの、意識がかろうじである。

(こんな飲み方をしたのは初めてだった。制御が効かない。あぁ、咲さんに呆れられたらどうしよう…)

うとうとしながらそんなことを思っていると、咲が水と着替えを持って戻ってきた。


「大地さん、お水どうぞ」


そう言って、大地の口にコップを運び飲ませる。

ぽたぽたとシャツとスーツのズボンにこぼしてしまった。

飲み終わると、コップをサイドボードに置き、ボタンに手をかける。

咲の様子を見て、佐々木の言葉を思い出す。

(ほんとうに、嫌われてないのかな…)


「さきさん…やさしい…」

「…?そうですか?…こっちの腕、曲げてください…」


テキパキと着替えさせる。


「嫌いにならないで…ください」

「え?…そんな訳ないじゃないですか」


頭にパジャマをすぽっと被せ袖に腕を通す。

咲をじっと見つめ、辛そうな顔をする。


「だって逃げたから…」

「……え?」

「僕から離れるから…」

「……あ…」


こんな大地の姿を見るのは初めてだった。

今まで会社の飲み会は行っていたし、家でも2人で結構飲むこともあった。

だが、大地はお酒には強い方で、一度も酔い潰れたことなんてなかった。


(うわ言も新鮮だな)


と、タクシーから降りてきた大地を見て、咲は大地のまた新たな発見が出来たと、のんきに考えていたが、“僕から離れるから”と言われハッとした。

身に覚えがある。


(あの時だ)


嫌っているのではなく、恥ずかしくて距離を取った。

ドキドキしてどうしていいか分からず、目をそらした。

その行動に大地が傷ついていた。

言葉が足りずに…


(私…大地さんを傷つけたんだ、こんなになるまで追い込んでしまっていたんだ。)


咲はいたたまれなくなり、大地をぎゅっと抱きしめた。


「……さきさん…?」

「昨日は…ごめんなさい。大地さんのこと、嫌いじゃないです!」


咲からの言葉に安堵し、大地もそっと咲を抱きしめる。


「…ほんとう…ですか?」


酔っているせいで感情が高ぶり泣きそうになる。


「本当ですよ。大好きです、大地さん」


一番聞きたかった言葉を咲からかけてもらえ、夢見心地になる。

体の力が抜け、咲の支えがないと座っていられなくなった。


すぅすぅと寝息が聞こえる。

咲が大地を横たわらせ離れようとした時。

大地は咲の袖口を掴んで離さなかった。

子供のように眠る大地の隣で、咲も一緒に眠りについた。


御拝読ありがとうございます!

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