第21章 迫る影、明かされる真実
静まり返った夜のオフィスに、低く唸るような電子音が響いていた。
アークシステムズ――
深夜にも関わらず、ひとつの端末だけが静かに稼働している。
画面の前に立つのは、北澤優だった。
彼の視線は一点に注がれている。
画面に表示されているのは、
1本のデータラインと、その先に連なる膨大なログ。
「……やはり、来たか」
静かな声に、確信が滲む。
数分前、警察の専用回線を通じて届いたのは、
1本のメモリースティックだった。
差出人不明。
だが、添えられた識別コードを見た瞬間、北澤は理解した。
――これは“彼ら”からのものだ。
解析を開始すると、画面には次々とデータが展開されていく。
不正アクセスの履歴。
改ざんされたログ。
資金の移動履歴。
そして、意図的に仕組まれた“書き換え用データ”。
「……なるほど」
北澤は、静かに息を吐いた。
その中に、明確な“名前”が浮かび上がる。
《日比野 健》
《板橋 克則》
《諏訪 晴彦》
それぞれが、異なる立場で、同じ流れに関与していた。
そして――
画面の片隅に、ひとつの名前が浮かぶ。
高杉 湊
だがそれは、犯人ではない。
“書き換え対象”として、意図的に紛れ込まされた名前だった。
「……なるほど。最初から、彼女を“犯人役”に仕立てるつもりだったわけだ」
北澤は、静かに呟いた。
彼らは、湊の技術と立場を利用し、
全ての罪を被せるための“舞台”を整えていた。
そしてその過程で、障害となる存在——
環を排除しようとした。
だが。
彼らはひとつ、大きな誤算をしていた。
――湊が、ひとりではなかったこと。
そして、
凪と蒼真という“異質な才能”が、すでに動いていたことを。
北澤は静かに端末を閉じ、電話を取る。
「……こちら北澤。例の件、裏が取れた」
短く、しかし確信を込めて言う。
「対象は、想定通り。
マネーロンダリングと情報改ざん、両方に関与している」
受話器の向こうで、誰かが息を呑む気配がした。
「証拠は十分だ。だが……」
北澤は一瞬、言葉を区切る。
「相手は、まだ動く。
最後の悪あがきを、必ず仕掛けてくる」
視線の先には、暗く沈む街の夜景。
そのどこかで――
“獲物”を狙う影が、まだ蠢いている。
だが同時に、彼は確信していた。
もう、この事件は終盤に入った。
真実は暴かれ、
役者は出揃い、
舞台は整った。
あとは――
誰が先に、引き金を引くか。
静かに、しかし確実に。
運命の歯車が、音を立てて回り始めていた。




