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EVOLVE〜エヴォルブ〜 Season12 ― 喧騒と旋律 ―  作者: 柊梟環
EVOLVE〜エヴォルブ〜 Season12 ― 喧騒と旋律 ―
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第19章 反撃の旋律

静まり返ったオフィスに、規則正しい電子音が響いていた。


モニターに映るコードの流れは、まるで生き物のようにうねり、形を変えながら画面を埋め尽くしていく。


(なぎ)はキーボードに指を置いたまま、わずかに息を整えた。


「……来る」


その声と同時に、画面が一瞬だけ暗転した。


次の瞬間、異様な速度で文字列が流れ出す。


「侵入経路、確定。向こう、完全にこちらを狙ってる」


(なぎ)の背後で、蒼真(そうま)が低く呟いた。


画面の隅に、見覚えのある署名が浮かび上がる。



 《Etude Op.10 No.12》



「……やっぱりな」


(なぎ)は唇を引き結ぶ。


相手は、間違いなく“あの男”だ。



 ——日比野(ひびの)(たける)



自分の技術に絶対の自信を持つ、天才気取りのハッカー。


そして、彼が今、狙っているもの。


「……(みなと)さんのデータだ」


(なぎ)の声に、蒼真(そうま)が頷く。


「個人情報だけじゃない。履歴、経歴、改ざん用の下地……全部だ」


画面上では、(なぎ)が組んだ防御プログラムをすり抜けようとするコードが、まるで旋律(メロディ)のように踊っている。



 ショパン《革命》。



速く、激しく、容赦のない音の連なり。


「来たな……」


(なぎ)の指が、キーボードの上を走る。


「なら、こっちは“英雄”で迎える」


蒼真(そうま)が別の端末を起動する。



 ——《Blue_echo》、起動。



その瞬間、画面の色調が変わった。


侵入してきたコードが、徐々に反転していく。


攻撃が、反転し、解析され、記録されていく。

(なぎ)の声が低く響く。


「……誘導成功。こっちの土俵に引きずり込んだ」


蒼真(そうま)の指が止まらない。


「このまま、相手のアクセス元をトレースする」


数秒後、画面に一行のログが浮かび上がる。



 《Connection identified》



(なぎ)が息を呑む。


「来た……!」


次の瞬間、画面が一斉に暗転した。


そして、浮かび上がる文字。



 ―― SYSTEM LOCKED

 ―― DATA SEALED

 ―― Blue_echo : Complete



室内に、静寂が落ちた。


それは勝利の静けさだった。


(なぎ)はゆっくりと椅子にもたれかかり、深く息を吐いた。


「……終わった」


蒼真(そうま)も画面を見つめたまま、静かに頷く。


「いや、正確には……“始まった”だな。ここからが、本当の勝負だ」


モニターには、犯人のアクセス履歴、偽装されたログ、改ざんされた証拠の全てが、整理されたデータとして並んでいた。


それは、もはや“攻撃”ではない。


告発のための、完全な証拠だった。


遠くで、街のサイレンが鳴る。


その音を聞きながら、凪は静かに呟く。


「……これで、逃げ場はない」


その時、別の部屋で静かに眠る(たまき)の姿が、ふと脳裏をよぎった。



 ――必ず守る。



その誓いを胸に、(なぎ)は次の画面を開いた。


物語は、ついに核心へと踏み込んでいく。

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