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EVOLVE〜エヴォルブ〜 Season12 ― 喧騒と旋律 ―  作者: 柊梟環
EVOLVE〜エヴォルブ〜 Season12 ― 喧騒と旋律 ―
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第18章 迫る影

電話の向こうから聞こえた声は、いつもより低く、硬かった。


「……涼平(りょうへい)。今日、(たまき)がまた襲われた」


そのひと言で、涼平(りょうへい)の背筋が伸びる。


「……何?」


「今回は、完全に狙われていた。犯人は“(みなと)さん”だと思い込んでいた」


一瞬の沈黙。


「……そうか」


短く返したが、胸の奥に嫌な感触が広がっていく。


「こっちは環を守る。だが、湊さんの方も危ない。

 向こうはまだ気づいていないが、狙いは完全に定まってる」


「……わかった。俺がつく。絶対に1人にはさせない」


(しゅう)の声が、わずかに強まる。


「ああ……こっちは俺が引き受ける」


通話が切れた瞬間、涼平(りょうへい)は深く息を吐いた。


――嫌な予感が、確信に変わりつつあった。



◇◇◇



アークシステムズ、夜。


オフィスの照明は落とされ、最低限の明かりだけが灯っている。


デスクの上で、ノートパソコンが静かに起動していた。


(なぎ)は画面を見つめ、眉を寄せる。


「……来てる」


その言葉と同時に、画面がわずかに揺れた。


コードが流れ、アクセスログが一瞬、異様な挙動を見せる。


「また……か」


(なぎ)が息を詰める。


画面の端に浮かび上がる文字列。



 ―― Etude Op.10 No.12

   ショパン《革命》。



その文字を見た瞬間、(なぎ)の表情が変わった。


「来たな……」


ほぼ同時に、ドアが開く。


「凪!」


駆け込んできたのは蒼真(そうま)だった。


「始まった?」


「……はい。向こうも本気です」


(なぎ)はキーボードに指を置く。


次の瞬間、画面上でコードが奔流(ほんりゅう)のように走り出した。


高速で展開されるアクセスログ、侵入経路、書き換えられるデータ。


それはまるで、鍵盤の上を跳ねる指先のようだった。


「ショパンの《革命》か……」


蒼真(そうま)が低く呟く。


「なら、こっちは――」


(なぎ)がわずかに口角を上げた。


「“英雄”で行く」


2人の指が同時に動く。


リズムを刻むように、正確に、無駄なく。


攻撃は激しく、執拗で、巧妙だった。


だが、(なぎ)蒼真(そうま)は一歩も引かない。


音と音がぶつかり合うように、コードがぶつかり合う。


そして――

画面が一瞬、静止した。


次の瞬間。

侵入ログが逆流し、侵入元の痕跡が一気に(あら)わになる。


「……捕まえた」


(なぎ)が静かに呟く。


蒼真(そうま)は深く息を吐いた。


「これで、逃げ場はない」


画面には、確かに残された“痕跡”。


それは、次へと続く決定的な一手だった。



◇◇◇



同じ頃――


別の場所で、(しゅう)は窓の外を見つめていた。

遠くの街明かりが、静かに揺れている。


執務室のソファで眠る(たまき)の横に座り

そっと髪を撫でる

「……環」


そして、低く言った。

「必ず守る」


静かに、だが確かな覚悟とともに。


こうして、見えない場所で始まった戦いは、

確実に“決定的な局面”へと近づいていく。

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