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EVOLVE〜エヴォルブ〜 Season12 ― 喧騒と旋律 ―  作者: 柊梟環
EVOLVE〜エヴォルブ〜 Season12 ― 喧騒と旋律 ―
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第17章 影が近づく音

その日は、いつもと変わらない午後のはずだった。


(しゅう)(なぎ)は打ち合わせのため外出し、オフィスには(たまき)ひとり。


静かな空間に、キーボードの音だけが響いている。



——少しだけ、郵便局に行くだけ。



そう思ったのが、間違いだったのかもしれない。


(たまき)は鍵をかけ、通りへ出た。

ビルの向かい側にある郵便局は、歩いて数分の距離だ。


(すぐ戻るし……大丈夫)


信号が青に変わり、横断歩道を渡ろうとした、その瞬間だった。


背後から、強く腕を掴まれる。


「……っ!」


反射的に振り返ると、見知らぬ男の顔があった。


「おい、高杉湊(たかすぎみなと)……」


低く、粘つくような声。


その瞬間、(たまき)の中で何かが凍りついた。



(……違う。私じゃない)



けれど声は出なかった。


男の手が、さらに強くなる。


「来い。話がある」


次の瞬間——


「離してください!」


鋭い声と同時に、男の腕が強く引き剥がされた。


警備員だった。


「何してるんですか!

 警察呼びますよ!」


男は舌打ちをし、舌打ちひとつ残して人混みに紛れて消えた。


(たまき)はその場に立ち尽くし、膝が震えるのを必死でこらえた。


「大丈夫ですか?」


声をかけられて、ようやく我に返る。


「……はい」


だが、その声は震えていた。


そこへ、息を切らして駆け寄ってくる足音。


「環!」


(しゅう)だった。


その後ろに、(なぎ)の姿もある。


「環!大丈夫か!?」


(しゅう)は迷わず(たまき)を抱き寄せる。


「……柊……」


震えが、止まらない。


「何があった?」


(なぎ)が周囲を警戒しながら問いかける。


「……男の人に、声をかけられて……“高杉湊(たかすぎみなと)”って……」


その言葉に、空気が凍りつく。


(しゅう)の腕に力がこもった。


「……また、か」


(なぎ)が唇を噛む。


「間違いない。狙われてるのは……」


「……(みなと)さんだ」


(しゅう)が低く言った。


(たまき)は小さく頷く。


「たぶん……前と同じ人です。私を、湊さんだと思って……」


(しゅう)は深く息を吸い、静かに言った。


「……もう、1人にはしない」


その声には、怒りよりも強い決意が(にじ)んでいた。


遠くでサイレンの音が鳴る。


それは、事態が次の段階へ進んだことを告げる合図だった。

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