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EVOLVE〜エヴォルブ〜 Season12 ― 喧騒と旋律 ―  作者: 柊梟環
EVOLVE〜エヴォルブ〜 Season12 ― 喧騒と旋律 ―
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第9章 反撃の旋律

静まり返った部屋に、キーボードの音だけが響いていた。


それは規則的で、一定のリズムを刻んでいる。


まるで、静かなホールで誰かがピアノを弾いているようだった。


なぎ蒼真そうまは、並んでモニターに向かっている。


互いに言葉は少ないが、視線と指の動きだけで意思が伝わっていた。


――始まったな。


凪の指が軽く跳ねる。


「来た……第一波」


画面に、微細なログの変化が走る。


通常の監視では気づかない程度の改変。


だが、凪と蒼真にははっきりと“意図”が見えた。


蒼真が淡々と呟く。


「想定通り。

 切断後、30分で第2段階。律儀だな」


凪が口元を歪める。


「教科書どおりすぎて、逆に油断してる感じですね」


2人の指が同時に動き出す。


凪は表層を撫でるようにアクセスし、わざと“気づいた素振り”を見せる。


対して蒼真は、裏側へと潜り込み、静かに回路を組み替えていく。


まるで、連弾だ。


1音ずつ、役割の違う旋律が重なり合い、ひとつの楽曲を形作っていく。


――テン、テン……。


攻撃が来る。


凪が小さく笑った。


「来た。真正面から殴ってきた」


蒼真は画面から目を離さず、淡々と応じる。


「いい。受け止める。……はい、ここでカウンター」


凪が即座に追撃する。


「了解。じゃあ、僕は少し派手にいく」


キーを叩く音が速くなる。

画面上で、データの流れが変調し始めた。


犯人は気づいていない。

自分が追い込まれていることに。


そのとき――


「……来た」


凪の声が低くなる。


「向こう、気づいた。軌道を変えようとしてる」


蒼真は一瞬だけ微笑んだ。


「遅い」


次の瞬間、2人の動きが完全に重なる。


凪がおとりとなって大きく動かし、蒼真が深部へと潜り込む。

それはまるで、二重奏。


旋律と伴奏が入れ替わりながら、完璧なハーモニーを奏でる。


画面に表示された数値が、一気に書き換わった。


——沈黙。


そして、画面の隅に、ひとつのログが浮かび上がる。


「……来た」


蒼真の声が低く響く。


そのログには、外部サーバーへの不正通信履歴と、

複数の偽装アカウントの痕跡が残されていた。


同時に、別の端末でしゅうが低く息を吐く。


「……見つけた。裏の帳簿だ」


柊の画面には、複数の数値のずれが並んでいた。


表向きは正常。


だが、差分を重ねると、確かに“消えた金”がある。


たまきが隣で息を呑む。


「……これ、意図的に改ざんされてますね」


「うん。しかも、長期的に」


柊は淡々と答えた。


「単発じゃない。何年も、少しずつ抜いてる」


涼平りょうへいが拳を握る。


「……相当、手慣れてるな」


そのとき。


凪が小さく息を吐いた。


「……相手、気づいた」


全員の視線が集まる。


「完全に、こちらを認識しました。今、逃げに入ってます」


蒼真が即座に応じる。


「なら、逃がさない」


キーボードを叩く音が、一段と鋭くなる。


画面の中で、光が走る。


それはまるで、楽曲がクライマックスへ向かう瞬間。


重なり合う旋律。

加速する鼓動。


その中心で、凪が低く言った。


「……捕まえた」


次の瞬間、画面にログが確定する。


犯人の痕跡。

アクセス経路。

隠されていた不正の証拠。


すべてが、そこに揃っていた。


室内に、静寂が戻る。


キーボードの音が止み、

冷たい空気が、ゆっくりと落ち着いていく。


そして――


誰かが、深く息を吐いた。


戦いは、ひとつの山を越えた。


だが、まだ終わりではない。


彼らは、次に来る“現実”と向き合わなければならない。


静かに、だが確実に。


物語は、次の局面へ進んでいく。

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