表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
EVOLVE〜エヴォルブ〜 Season12 ― 喧騒と旋律 ―  作者: 柊梟環
EVOLVE〜エヴォルブ〜 Season12 ― 喧騒と旋律 ―
PR
11/27

第10章 暴かれる過去

深夜に近い時間帯。


部屋の明かりは最低限に落とされ、モニターの光だけが淡く浮かび上がっていた。


(なぎ)蒼真(そうま)は並んで画面を見つめ、キーボードの音だけが静かに響く。


(しゅう)は少し後ろに立ち、腕を組んだまま2人の動きを追っていた。


その少し離れた位置で、(みなと)は息をひそめるように座っている。


——何かが、明らかになろうとしている。


それだけは、はっきりとわかった。


「……来た」


蒼真(そうま)の低い声が、静寂を裂いた。


画面上に並ぶデータの羅列が、一瞬だけ波打つ。


次の瞬間、隠されていたログが展開された。


(なぎ)が息を吸う。


「これ……資金の流れ、やっぱり二重構造だ」


「表向きの帳簿と、裏で回してる帳簿……完全に分けてるな」


(しゅう)が腕を組み直す。


「で、どっちも“正しい”ように見せてる」


蒼真(そうま)が静かに頷く。


「片方は監査用、もう片方が本命。

 しかも、表のほうに“意図的なミス”を仕込んでる」


(みなと)が息をのむ。


「……それって……」


「“誰かが修正すること”を前提にした罠です」


(なぎ)が淡々と続ける。


「修正した人間に、裏の流れをなすりつける。

 その瞬間、その人が“実行者”になる」


部屋の空気が、さらに重くなる。


(しゅう)が、ゆっくりと口を開いた。


「……つまり」


その言葉の続きを、(みなと)が受け取った。


「……私が、犯人に仕立てられる予定だった」


沈黙。


誰も、すぐには言葉を返せなかった。


(みなと)は自分の手を見つめる。

震えてはいない。ただ、胸の奥がじんと冷えていた。


「……あの2件の“修正”。

 あれ、どっちも“間違いを直した”つもりだった」


静かな声で続ける。


「でも、あれが“正解”だったからこそ

 ……私が“犯人”になれた」


(なぎ)が歯を食いしばる。


「……ひどい話だ」


蒼真(そうま)が画面を(にら)みながら言った。


「しかも手口が巧妙すぎる。

 (みなと)さんの技量を、完全に計算に入れてる」


(しゅう)は、ゆっくりと息を吐いた。


「……狙われた理由は、技術だけじゃないな」


(みなと)が顔を上げる。


「どういう意味だ?」


(みなと)の問いに涼平(りょうへい)が答える。


「“疑われにくい人間”だったからだ」


その言葉に、(みなと)は小さく息を()んだ。


「実績があって、信用があって、派手じゃない。

 疑われにくくて、表に出てこない。

 ……一番、都合がいい」


涼平(りょうへい)の声は淡々としていたが、その奥には怒りがあった。


「だから、(みなと)が選ばれた」


(みなと)は、しばらく何も言えなかった。


沈黙を破ったのは、(なぎ)だった。


「でも、向こうの計算がひとつだけ外れてる」


全員の視線が集まる。


(みなと)さん、ちゃんと気づいた。

 それに——僕たちがいる」


蒼真(そうま)が小さく頷く。


「もう、相手の思い通りにはならない」


(しゅう)が一歩前に出る。


「ここからは、こちらの番だ」


その声は静かで、揺るぎなかった。


(みなと)は深く息を吸い、そしてはっきりと言った。


「……私も逃げないよ。

 最後まで、ちゃんと戦う」


その言葉に、涼平(りょうへい)は小さく微笑んだ。


「うん。守るだけじゃなく、一緒に戦おう」


モニターの光が、5人の顔を照らす。


それはもう、ただの“事件”ではなかった。


——それぞれの過去と誇りを賭けた、静かな戦いの始まりだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ