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EVOLVE〜エヴォルブ〜 Season12 ― 喧騒と旋律 ―  作者: 柊梟環
EVOLVE〜エヴォルブ〜 Season12 ― 喧騒と旋律 ―
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第8章 反撃の輪郭

室内に漂っていた緊張が、わずかに緩んだ。


だが、それは安堵ではなく、嵐の前の静けさに近い。


モニターに映るログは静止しているように見えて、その奥で何かが(うごめ)いている気配があった。


(なぎ)は椅子にもたれ、画面を(にら)みながら指を組む。


「……完全には切れてないですね。

 接続は遮断したけど、“痕跡”はまだ生きてる」


蒼真(そうま)が画面を拡大し、細かくスクロールを走らせる。


「うん。消したというより、隠した感じだ。

 相手、かなり慎重だな」


(しゅう)は腕を組んだまま、2人の背後からモニターを見つめる。


「つまり……まだ、こちらの様子をうかがっている可能性がある」


その言葉に、部屋の空気が少し張り詰める。


そのとき、涼平(りょうへい)が静かに口を開いた。


「……でもさ。逆に言えば、相手はもう“動いた”ってことだよな」


全員の視線が向く。


「手を出したってことは、何かしら焦りがある。

 でなきゃ、こんなリスクのある真似しない」


蒼真(そうま)がふっと笑う。


「確かに。優位な側は、わざわざ姿を見せたりしない」


(なぎ)も頷いた。


「相手、思ったより“人間”ですね」


その言葉に、(しゅう)が小さく息を吐いた。


「……つまり、隙がある」


その瞬間、空気が変わった。


ただの防御から、“反撃”へ。


誰も声を荒げてはいないが、確かに空気の温度が変わった。


(しゅう)は机に手をつき、全員を見回す。


「ここからは、相手の土俵じゃなく、こっちの土俵に引きずり出す」


(なぎ)が小さく頷く。


「仕掛ける、ってことですね」


「そうだ。だが、派手にはやらない」


(しゅう)の目が鋭く光る。


「相手が気づかないうちに、じわじわ追い詰める」


蒼真(そうま)が口角をわずかに上げる。


「得意分野です」


涼平(りょうへい)が腕を組み、少し真剣な表情で言った。


「じゃあ俺は、表側を洗う。人、金、過去の案件。表に出てる情報を全部洗い出す」


(しゅう)が頷く。


「頼む。俺は全体の流れを見る。(なぎ)蒼真(そうま)は、内部の動きを掴んでくれ」


「了解」

2人の声が重なる。


その時、静かに聞いていた(みなと)が、ふと口を開いた。


「……ねえ」


全員が彼女を見る。


(みなと)は少し言いづらそうにしながらも、まっすぐ言った。


「もし、相手が“わざと”私を狙ったとしたら……

 その理由、わかる?」


一瞬、沈黙が落ちる。


(しゅう)が答えようとしたが、涼平(りょうへい)が先に口を開いた。


「……たぶん、湊が“一番無防備”だと思ったんだろ」


(みなと)は静かに頷いた。


「やっぱり、そうだよね」


(なぎ)が続ける。


「でも、それは同時に“一番核心に近い”ってことでもある」


蒼真(そうま)も頷く。


「うん。だから狙われた」


その言葉に、(みなと)は少しだけ息を吸い込んだ。


「……だったら、私も逃げない」


全員が一斉に(みなと)を見る。


(みなと)は、まっすぐに視線を返した。


「守られるだけじゃなくて、ちゃんと一緒に立つ。

 それが、今回の正解だと思う」


(しゅう)は一瞬だけ目を閉じ、ゆっくり頷いた。


「……わかった。無理はさせない。だが、排除もしない」


(なぎ)がにやりと笑う。


「じゃあ、役者は揃ったってことですね」


蒼真(そうま。)がキーボードに指を置く。


「舞台は整った。あとは、相手がどこまで踊ってくれるか、だ」


モニターの光が、静かに彼らの顔を照らす。


それぞれの視線が、同じ未来を見据えていた。


――静かに、しかし確実に、反撃の幕が上がった。

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