「16話」
お久しぶりです。
間が空いてしまい、大変申し訳ありません。
始まります。
私には家族がいない。
いや、正確には違う。
ハイスクールまではいた“はず”なのだ。
ただいまはいない。
事故などで亡くした訳でもない。
“いなかった事になっている”のだ。
この話を聞くと何の事かと思うだろう?
だがある日突然、私の実家のあった地域ごとこの地上から、人々の記憶からも消えてしまったのだ。
私は実家からでて、全寮制の学校に入学した。
だから・・・。
その後の人々の記憶には、私は叔父の家で暮らしていた事になっていた。
どういう事かもわからない。
大学受験が迫る中、私は混乱した。
今までいたはずの家族がいなかったものとされているのだから。
何か手掛かりはないのかと考えた。
本当に何か僅かでもと。
そうして聞いたのは、やけに胡散臭い都市伝説であった。
しかし、その内容が私の身に起きた事とあまりにも酷使している事にも驚き、それらを研究する学者までもがいるとあってはすがるような思いで連絡を取った。
結果としては、その現象は『夢』という化け物が『現実の子』という存在を殺害すると、世界のどこかが消滅し、最初から存在しなかったかの様に認識されるのだという。
まさに同じ現象が起きていた。
そしてその科学者も、同じような出来事に遭遇していた。
彼の場合は従兄弟たち一家だったという。
1人っ子だった彼とは実の兄弟のような間柄で、中学校の頃に事が起こったという。
私はその件から受検する大学や学科を急遽変更し、その道に進む事にした。
ただし、その科学者からは別の、世間では本命とされる学科を取り、一定以上の功績、そして収入を得られるようにはしておくようにというアドバイスをされたが。
それから数年、『現実の子』の支援をする彼らとは離れ、家族のみに何があったかを調べる日々が続いた。
そんな中、私はとある地下遺跡に求める情報があるのではと調査をしていたが、その途中である女性と出会った。
赤い瞳に黒い髪の女性。
ボロボロに傷ついてはいても美しい彼女に驚きつつも何事かと手を差し伸べたその時、闇夜に透き通った偉業が浮かび上がる。
咄嗟で声が出なかったが、傍らで引きつり絶望の光を瞳に移した彼女を慌てて抱えて近くの茂みに身を隠した。
そのままで、随分経ちいくら待っても化け物が来ないと女性が言う。
彼女曰く、化け物に追い掛け回されていたのだという。
一体なぜ?
その問いに、私の求めた『夢』と『現実の子』についての話が語られた。
私は教授となったあの学者に連絡を取ると、しばらく同行してやって、でいれば支援してほしいという依頼を受けた。
どうも手があかないらしい。
流石に私としても、あんな化け物に追われている人間を見殺しには出来ないと依頼を受ける事にした。
それから数年、私は彼女と行動を共にした。
いつまで続くかは分からないものの、彼女との会話は楽しかった。
知っていたはずの私達を私達が知る親類すら知らない。
でも彼女もその親もそんな感じで、だからだろうか?
そうしていると、何時からか私たちは恋人になっていた。
使命を果たす彼女。
その支援をする私。
共にいて、ずっといて、いつか子を成し、この戦いは続くのだろう。
それでもと思っていた。
しかし、そんな未来はあっけなく幕を閉じてしまう。
その遺跡で調べた資料を持っていくからと車にいた私に少し見てみるからという彼女。
近くならと思い近くを離れたその数分後、嫌な感じがした。
幾度となく私たちの前に現れ、彼女を消さんとした異形の化け物―――『夢』が。
地面には彼女が倒れて、粒子の粒となり消えていくのが見える。
化け物がその上に浮かんでいたが構わず私は彼女を抱き起した。
その赤い瞳に光はなく・・・。
その後、ある地域が地上と人々の記憶から消えた。
私は後日、その事を教授に連絡した。
教授も情報提供のため彼女と面識があった為、電話の向こうでの声が詰まるのが分かったが、すぐに「そうか・・・。」という短い返事があった。
この人は、私達の仲について知った時も笑顔で喜んでくれたのだ。
『現実の子』だって幸せになれる、と。
この日から私は決意した。
あとどれくらいいるかも分からない『現実の子』の支援をしていく事を。
もう、こんな思いをしたくないと。
自己満足でもいいから、と。
廃坑に遺跡がある。
微妙な情報だと教授も言っていたが、何か感じるようなものがあって、その廃坑の調査に訪れていた私の前に、数年ぶりに『夢』が現れた。
濁った、彼女の瞳とは似ても似つかない朱が固まって異形の胸元にはまっている。
それ以外は透けている。
形状は少し違う気もするが・・・。
何で私の前に浮いているんだろうか?
私は『現実の子』ではないのに。
ただいるだけなのだろうか?
いやそんな事は・・・。
思いつつも見つめるが、『夢』は私に反応しない。
どうやら、本当に私には反応してこないようだ。
そうか。
それなのに彼女は・・・。
そんな事を、驚きのあまりしりもちをついたまま見上げていた私の前の異形は光の粒となり消えていた。
そして現れる、彼女と同じ瞳を持つ少女。
何となく直観では彼女も『現実の子』だと思った。
高圧的で、口調や態度から年上かとも思ったがまだ年端もいかない少女だ。
そして、私は彼女に協力を申し出た。
結果から話すと協力は受けるという事だが、約束もさせられた。
その内容がなんとも・・・。
本当に、せいぜい10代半ばの少女なのかと思うほどの内容で。
思わず、もっと自分を大切にしてくれといいたくなってしまったが、少女には少女の矜持の様なものがあるように思えて仕方がなく、結局お互いの条件のもとでの協力関係となった。
そうして私は今、地下の遺跡にたどり着く為に暗い坑道を歩いている。
もう1人いる、『現実の子』としては珍しい男性の『現実の子』と合流するためだ。
正直女性ばかりだと彼女を思い出しそうでつらいのと、やはり戸惑いもあるので気分的にどうした者かとも思っていた協力支援だったが、男性の『現実の子』もいるという事で若干気が楽になったのは言うまでもない。
とにかく彼らを支援して、少しでも彼女の様な結末を迎える『現実の子』その運命を変えられるように願い、私は歩き出した。
温かな光が射し込む坑道は、土が四方を構成しているからか、その匂いが漂っていた。
発電機を起動させるため、アーシアが1人穴に消えた後、ベルトに金具で止めたトランシーバーに視線を落とす。
整備は万全の状態を保っていたので、意図的に破壊しない限りは異常は出ないだろうと眺める。
この大昔の穴蔵に『アーチ』がある。
「不思議な感じだ」
思わずこぼれた呟き。
たった3日前まではこんな昼前に廃坑なんて場所をうろつく事になるなんて思ってもみなかった。
だと言うのに今、自分は足元の遥か下から「何か」を感じとっている。
しかも、まったくのファンタジーな世界を。
正直、訳が分からない。
分からないが、これが今の現実。
今からの日常なのだと、廃坑に着くまでの間年下の先輩に言われ続けたのだ。
自覚しなければ死ぬ事になる、と。
まだ現実味のない頭に、まるで刷り込むかの様に繰り返し言い聞かされた。
新たなる仲間のデビットさんでした。
今後もよろしくお願いいたします。




