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THE WORLD  作者: 深海
17/17

「17話」

お久しぶりです。

少し進みます。

足元を照らす心もとない懐中電灯の明かり。

湿っぽい空気の筈なのに感じるホコリ混じりの不快な空間。

「どう考えたって最悪だ。」

周りの照明がついたと思ったら、いきなり目の前に半透明の異形『夢』が浮いていて、バルドに丁度手を伸ばしているところだった。

何てタイミングなのだと、咄嗟に銃を構え目に入ったコアに鉛球を打ち込む。

しかし、普段銃など馴染みのない彼はその反動でよろけて近くのもろくなった穴の淵に重心を移動させてしまう。

結果はそのまま数メートル下まで滑り落ちてしまったのだった。

どう考えてもどんくさすぎるその状況に額に手を置きつつ、あたりに懐中電灯の明かりを向けつつため息をつく。

「下に行けって、マジかよ。」

先程までしていた年下の先輩から言い渡された指示を、ベルトのトランシーバーに視線を向けつつ思い出す。

ここではコアがあるタイプの『夢』しか現れないとは言われた。

『アーチ』の近くは力場の影響からそのような現象があるらしい。

とりあえず物理的に撃退できる問う事だ。

それは、まあいいのだと思いつつ穴の先を見る。

「坑道って、こんななのか?」

ただの洞穴に見える。

所々配線があり吊り下げ式の照明やらが照らしているのが見えるが、ほぼ洞穴。

そこを今度は下へ進むのだ。

気が滅入るどころの話ではない。

だが、アーシアは先に進んでいろと言っていた。

「冗談じゃない。行かない訳にはいかないのだろうが・・・。」

進まなければ『夢』に殺される。

そう思いつつも、行ってもやばそうだと眉間にしわを寄せる。

ただ、何時までもこうしてはいられない。

「仕方がないか。」

銃の弾が心もとない気がするものの、1度息を深く吸い銃を持ち直して歩き出すのであった。




「バルドさんというのがもう1人の『現実の子』のお名前なのですね?」

「ええ。」

少し遅れて、正規の昇降口から地下に入ったアーシアとデビットは持ち得る情報交換をしながら先を急いでいた。

そもそも、『夢』は大声を出そうが小声でしゃべろうが『現実の子』にはどうやったって反応するし、それ以外には興味も持たないのだから、行動そのものをこそこそしても意味がないのだ。

それはアーシアはもちろんデビットも知っていた為、堂々としたものである。

「しかし、まさか男性の『現実の子』がいるなんて知りませんでしたよ。しかも、覚醒時期も20代後半。それまでは『夢』に脅かされることもなく暮らせるなんて。」

こういう事がもっと増えるなら、『現実の子』としての知識を理解してもらうのは少し難しいかもしれないが、生存率は上昇するかもしれない。

そう口にするデビットにアーシアも同意する。

ある程度の社会経験や、物理的にも大人であった方が行動範囲も広がるしできることも多くなる。

これまでの人脈を生かしての生存率も上がるだろうし、自身がとれる手段も増える。

確かにアーシアの様な『現実の子』としての英才教育は出来なくとも下地となる知識を持つ者もいるだろうから結果としては理想的な展開だろう。

「まあ、かなり難しいでしょうけど。」

バルドの子孫ならもしかしたら。

そんな含みに気付いたデビットは無言で頷きつつ考え込んだまま歩みを進める。

出来るならその方がいい。

生存率も上昇する。

『現実の子』の生存率の低さは、逆にその秘匿性にもあるのだ。

いざという時に頼れる人がいない。

通常の社会的サービスの利用制限。

自身にその資格がない、など。

ある程度の年まで普通に暮らしていればある程度は持っているものが無いのだ。

だが、バルドの様に社会的な地位を持っている『現実の子』ならば?

咄嗟に、今回のバルドの様に逃亡を図る事だって出来るのだ。


「夢幻のような話だけどね。」

実際には。

アーシアの感情の無い言葉にデビットも落胆の色が現れる。

「こればかりは、授かりものですからね。」

どうにもならない事を言っても仕方がない。

そう言っているような視線を1度向け次のはしごを降り始めるアーシアを見つめながら、デビットは1度ため息をつくのだった。



「やっとか・・・。」

アーシアとの会話の後、崩れていたり潰れそうになっている坑道をゆっくり通りてきたバルドは、事前に言われていた休憩所のような場所にたどり着いた。

中に入ると電源が来ているので弱々しいが蛍光灯が頭上を照らしている。

良くも悪くも殺伐とした室内で、今にも作業を終えて休憩に来る作業員が入ってきそうな雰囲気だった。

勿論、そんな人間はここにくることもないのだが。

そんな事よりと室内に踏み入るとあたりを見回した。

床に転がる銃弾がきらりと光るのが入室時に見えた。

という事は・・・。

「どこかに予備の弾丸があればいいんだが。」

期待はしていないもののあればあったで困らないと物色を始める。

殺伐としてはいるが、室内にあるものはそう多くはない。

となると必然的にロッカーなどの収納をあさる事となる。

休憩室という事もあり、私物も多く持ち込まれる事などを想定していたのかその数もそれなりにあったが、武器弾薬がしまわれた収納は2つほどだった。

一見そうとは分からないが、それでも明らかに他とは違うガンストレージ。

中にはまっさらなポンプアクション式のショットガンが1挺と古びたリボルバー。

その弾丸がそれなりに詰められていた。

これは非常にうれしい収穫で、ここに来るまでに遭遇した『夢』との交戦で消費してしまい、心もとなかった弾薬の補填にはこれ以上なかった。

ホッとしつつも急いで銃と弾薬をとり、予備としてリボルバーと弾薬は荷物の中へ。

ショットガンは弾丸を装填して予備の弾薬をポーチへ納め取り付けてあったベルトで担ぐ形で持つ事にした。

「これで、当分持ってくれるといいんだが。」

正直、ここまでの道のりで遭遇した『夢』の数が多かった。

最初の『アーチ』は地上にあったので逃走もしやすかった為、ほとんど相手をすることなく済んだが、今回の様な地下にある事がほとんどだとも聞いた。

ならば、こういった戦闘もこの先多くなるかもしれない。

それならば武器は多くても困らない。

「まあ、不審者の様に思われたくもないが。」

それで警察に捕まっては洒落にはならない。

とにかくと、立ち上がり1度周りを見回すと、もう何も役に立ちそうなものはなさそうだと思い出口へ向かう。

「アーシア達との合流は、更に下の階層なんだよな。」

あの後何度か連絡があったが、バルドが落ちた穴とアーシアたちの降りるのに使用した坑道は別の物であったらしい事が分かった。

バルドが落ちたのはいわば旧道とでもいうべきものだったそうだ。

ならば、戻るよりは各自が動き目的地で合流をという話になったのだ。

「新米を1人で動かすとか、大丈夫なんだろうな?」

内心おっかなびっくりのバルドは、1人ごちてドアノブに手をかける。

願わくば、もう合流までは『夢』に出会わない様にと。

勿論、この後も遭遇し続ける事にはなるのだが。




赤い。

紅い。

朱い。

紅い。

どの『アカ』とも違うが、どの『アカ』でもあるその欠片は暗闇でまどろんでいた。

『夢』はそのゆりかごの様な、檻のような。

だが、その『アカ』は待っていた。

本来帰るべき場所へ向かう日を。

何処へとは言わない。

もしかしたらもうありもしない場所かもしれな。

だが、それでも待っていた。

『彼女』と過ごした、懐かしい未来を。

いにしえの更に向こう側に想いを馳せながら。

どんどん暗く...(笑)

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