13話
お久しぶりです。
体調不良から長らく投稿が出来ずに大変申し訳ありません。
今後も不定期ながらこの『SINI』前夜祭シリーズも続いていき、
『SINI』も始めていけたらと思っていますのでこれからもよろしくお願いいたします。
頭の中に重たい塊があるような違和感と、いつもの可愛いげのない声が俺の中で浮上しては沈むを繰り返している。
まぶたが重い。
開くのが、酷く億劫で全てに背を向けうずくまりたいとすら思った。
勿論、直後に腰に感じた衝撃に呻いて振り払う事になったが。
「お、おい!」
咄嗟に挙げた声が、もうほとんど暗くなっている森にこだまする。
そして、誰の返事もない。
「おい!何で蹴るんだ!?」
俺、何かしたか!?
そんな思いとともに少女の「ムッ」とした顔に叫んでは見るものの、返事もなく背を向けられてしまう。
先程の奇妙な体験から俺はうずくまってそのまま意識を失っていたらしい。
見つけたアーシアの声で意識を取り戻し多はいいが、すぐには動けない状態でフラフラとなんとか地面に座ろうとしたところで何事かと事情を情け容赦なく説明しろとにらまれ口を開いた。
そして、蹴飛ばされた。
本当に俺が何をしたって言うんだ?
「その話は、忘れなさい。」
蹴られた場所を抑えて腰を落とした俺の頭上に、感情の無い声が降って来た。
勿論、声の主は俺を蹴った糞生意気真っ盛りの女王様だ。
「なん、だよ?アレが何だか、知ってるんだよな?」
何故だかそんな気がする。
いや、そもそも何も知らないのにこの仕打ちは酷すぎる。
知っていてくれ、と情けない胸中にもはや恥も何もない。
「別に。知っていてもいい事の無いことだから忘れなさいと言っているだけだけど?」
「いい事って・・・。」
俺が『現実の子』になってから良い事を経験した事はないので今更な気がする。
「少なくともあなたがこの事を知るのはまだ先ね。そんな事よりしておかなくてはならない事はあるのだし。」
「やっておかなくてはならない事?」
一体何だと、少し痛みの引いた体を起こし彼女の方を向くと、何やら眉間にしわを寄せて忌々し気に空を見上げていた。
本当に何がそんなに気に食わないのだろうか?
「何をするんだ?」
「一応、教えておこうと思ってね?」
何を教えてくれるのやらと、眉を寄せながら彼女の言葉を待つ。
少し眉間を揉んで彼女はため息混じりに再び俺の方に視線をよこした。
「・・・『夢』を一時的に追い払羅う方法。」
はああ!?
それが心底思って、発した叫びであった。
ただし、心の中で。
「何よ?はとが豆鉄砲食らった様な顔して。」
しまらないわねぇ、と呆れた顔して伸びをするアーシェ。
だが、そりゃそうだろ?
あれだけ散々『夢』は倒せないとか言いながら倒せて、コノヤロー!とか思っていたっていうのに、今度は一時的にでも追い払えるとか?
実は『夢』への対応方法は抜け道が結構あるんじゃないのか!?
「言っとくけど、簡単じゃないし苦肉の策だから過信は全く出来ないわよ?」
何だかこうしてこの娘に内心を読まれるの馴れてきた。
むしろ、こいつに読まれると説明しなくていいから楽だ。
「やめてよ、煩わしい。貴方、頭大丈夫?」
眉間にシワを寄せ、訝しげに視線を突き刺してくるアーシェ。
こいつなら悪さもしないし、口固そうだから何故だか大丈夫な気がする。
そんな事を考えていたら、「貴方のママじゃないの」と返された。
「まず、『現実の子』の力は強くイメージする事から始まるわ。」
言いながら俺を見て目を細めるアーシェ。
イメージ、ねぇ・・・。
「具体的なのは後でどうにかして。それで本来『現実の子』は無を有に替える『具現力』を持つの。それで展開するのが主な流れ。」
・・・正直何を言っているのかわからない。
それが俺の感想だった。
「イメージは赤。赤い目でも水でも石でも宝石でも何でもいいわ。とにかく澄んだ赤を考えて。何言ってるか分からないとか考えてるんじゃないわよ?」
だから、読むなよ。
頭をかきながら目の前のアーシアから視線を下へずらす。
「真面目になさい。」
「いや、漠然としすぎてどうしたらいいんだか分らないんだが・・・。」
この小娘もこんな方法で教えられてきたのだろうか?
それでも理解できているというのだから、彼女の理解力はかなり物もだと思っていると昭多様な声がすぐ頭上から降って来た。
「気合で何とかなさい。命がかかっているのよ?分かってる?」
命がかかっているのはわかっているが、相手があんなふわふわしたものである為実感がわかないのも事実。
一体どうしたら?
思いながら顔をあげると思わず体がこわばった。
「・・・。」
視界には明かりを背にしてこちらを見つめるアーシアが経っているのがうつるが、目を奪うのは彼女の眼だ。
「朱い?」
「何?」
アーシアの眼が鮮やかな朱に、わずかだが発光しているのだ。
人間の眼が光るのかと俺も目をかっぴらいているのに気づいた彼女が思い出した様に瞬いた。
すると光が収まる。
「一体・・・?」
「イメージしたからよ。正確には貴方に説明の為にうっかり考えてしまったからじゃない?」
そんな事で?
「貴方もなるわよ?力を使う時に。」
いやいやいやいや・・・待ってくれと勢いよく下を向いて手を振る。
目が光る?それは人間か?
「一応『現実の子』も人間よ?生物学的には。出来る限り調べたっていうくらいだけど。」
そんな人間がいるのか?
「そんな人間なのよ、私達は。で、この光はそう見えるだけで、実は本当に身体的変化が起きて光っている訳じゃないし。」
じゃあ何なんだ!?半ば混乱状態に陥る思考をどうにか頭の隅に押し込みながら食い入る様に、今は光っていない彼女の瞳を見つめるとあからさまに呆れたかのような、恐らく本当に呆れている視線が突き刺さる。
やめろよ、ホントなんだか・・・。
「・・・余計なこと考えないで、真面目にしなさい。次の『アーチ』は本当に危ないんだから。」
「・・・ん?」
何だって?
「次の『アーチ』よ。一応いくつかの場所は事前に調べてあるの。で、ここから数日中で回れる場所にいくつかあるから。」
「連続で?」
「いつまで生きていられるか分からないのに、随分と悠長なのね?」
マジでか?しかも、俺は何だか分からない事も経験した後だ。
「貴方の事なんて知らないわよ。さ、始めましょう。出発は明日なんだから。今夜中にどうにか形にするわよ?」
「いや、本当に、待て待て待て!」
「うっさいわよ、マザコン。」
「マザコン・・・て、もうそれやめろよ・・・。」
言っている最中に再びアーシアの脚が動き、衝撃が来そうなので慌てたのは言うまでもない俺を誰も責められんはずだ・・・。
「・・・徹夜で、2人乗りでのバイク運転はきついんだぞ?」
荒野を突っ切り、山道を進み完全に人里のいない廃墟の中を徐行しながら後ろの少女に言葉を投げるが周りを警戒しているせいか返事がない。
いや、警戒はするだろう?こんな怪しい場所。
アーシアに言われてバイクを走らせ辿り着いたここは、廃坑だ。
正確には廃坑が栄えていたころにあった町の廃墟だ。
増えまくっては廃墟になるショッピングモール並みにこういった場所は国中にある。
ただし、実際に期待とは思ったこともない。
会社の同僚は廃墟めぐりが趣味のやつがいたが、俺は何がいいのかも良く分からないからな。
「この先に廃坑へおりる為の工場施設があるわ。そこから地下へ行くわ。電機はここが廃墟になってからかなり経ってるけど、大丈夫らしいのよ。地熱を利用してるから。」
ここ、相当前に潰れてるのにか?地熱?
「何年か前に調査が入った時の遺物よ。まあ、その企業のお望みのものはなかったみたいで、そのまま放置したみたいだけど。」
一体何をしていたんだか、その企業は?
訳が分からないと思いながらも、示されたひときわ大きな建物にバイクを進めていく。
この先には何が待っているのやらと、安易な気持ちで構えつつ。
だが、そんな俺はここで『現実の子』の戦いを知ることになるのだった。
久々でいきなりと思われますが、新章が次からですのでよろしくお願いいたします。




