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異世界で本屋をやっています  作者: 白波
第二章 カード
10/10

九冊目 次なるカード

 広場の調査から三日が経った。

 これといった変化は訪れず、今日ものんびりと本屋の仕事をこなしていた。


 そんな時である。


「また、カードが見つかったぞ!」


 隆平が勢いよく飛び込んできた。

 彼の手にはいつもと同じようなカードがあった。


「数字は?」

「24だ」

「24か……」


 京介は渡されたカードをまじまじと見つける。

 前のカードを見つけてから4日。これまでにないペースでの発見だ。


「今回は早かったな」

「俺もそう思うよ。こうもすぐに見つかるものじゃなかったはずなのにな」


 相変わらずこれといった変化はない。

 いつもと同じカードだ。


「今度はどこで?」

「広場だよ。前に演説やってた場所」

「あぁ中央広場か……」


 それにしても不思議だ。

 あんな目立つ場所に落ちていたのならば、自分たち以外が気付いて拾ってもおかしくないのに……


「とりあえず、中央広場へ行くか?」

「そうだな。店を閉めたら行くか……」

「はい。そうですね」


 しかし、これは前々から感じていた疑問だ。

 どんなところに置いてあろうと、大体発見するのは京介か隆平で自分たち以外には不可視ではないかと疑いたくなるほどだ。


 だが、実際に京香がこれを見ることができることを考えると、それはないだろう。


 だとすれば、何者かが意図的に自分たちに拾わせている可能性が浮上してくる。


 こんなことは考え始めたらきりがないのだが、もはやこうなった以上は偶然で片づけてはいけない事案とみて間違いないだろう。


 あくまで推測の域を出ないが、このことをどのタイミングで話すかはちゃんと見極めた方がいいかもしれない。

 あまり考えたくないが、ほぼ毎回カードを発見している隆平も十分に怪しいのだ。


「いや、それはないな」


 京介はその考えを打ち消した。

 仮に隆平が関わっているとしたら、いちいちカードを持ってきてその場所の検証なんて真似をする必要がない。

 おそらく、彼は関係ないだろう。


「そうだ。少し行くところがあるからここで帰るから、閉店時間ぐらいには戻ってくる」

「わかったよ。そうしてくれると助かる」


 手を挙げて、立ち去っていく。

 その背中を見送った京介と京香は、客がくるのを待ちながら外を眺めていた。




 *




「……これで十分か?」

「はい。わざわざすいませんでした」


 本屋の近くにある小さな喫茶店。

 そこの一角に隆平ともう一人、すらりと背の高い女性の姿があった。


「これはほんのお礼です」

「いらないよ。それよりもお前の目的を聞かせてもらってもいいか?」


 女性がカバンから出した箱を押し返しながら、隆平が問う。


「なにも深い意味はございませんわ。あなた方があのカードを集めていると聞きつけたから、そうしたまでですわ」

「……本当にあれは、中央広場で拾ったものか?」

「えぇ。それも保証します。ただ、あなた方が“あれ”を有効活用できるかどうかはわかりませんが……私の能力を使った限りでは、ただカードを集めるだけでは意味がなく、またそれの真相にたどり着くことはできない。あのカードはそう告げています」

「物語の声を聴く能力だったか……相変わらず便利だな」


 隆平の言葉に女性は苦笑を漏らす。


「あなたこそそうではありませんか……むしろ応用の仕方次第では、相当使い勝手がいいのでは?」

「いやいや、いろいろと制約があって面倒なんだよ。これが……」

「そうですか……と私はここでお暇させていただきますわ」

「今日は早いな」

「えぇ。少し人と会う約束をしていまして……」


 そういうと彼女は、お代をテーブルの上において立ち上がる。


「それでは、失礼いたします」

「おう。またな」


 女性は深々と頭を下げてその場から立ち去っていき、その場には隆平と二つの紅茶が残されていた。

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