3-5.脳内演奏~第一楽章~
さて、これまで「交響組曲『戦犯の孫』ヘ短調」(※実在しません)のモチーフについて解説しました。
一回ざっとおさらいしておきますね。
◆前回までのおさらい~~~~
*ブランカのモチーフ
調:ヘ短調(F moll)
感情次第ではF#もF♭も。
ブランカの日常:6/8系(忙しなさと揺れ)
ブランカの感情:2/2系(叶わない夢への切望)
*ヴォルフのモチーフ
基本:ト (G)
ヴォルフのタタタタ:本質 2/4系のト短調(G moll/走りながら考える推進力と土臭さ)
ヴォルフのタータ:包容力 6/8系のト長調(G dur/安心感)
担当楽器:チェロかファゴット
*ブランカとヴォルフのロンド
6/8系のクエスチョン・アンサー系語り合い
ヴォルフはGdur で励まし、G♭(=F#)に降りる
ブランカはFmollで臆病になりながら、F#に引っ張られる
二人で一緒に揺れる(As mollので繊細で空気の濃い優しい音楽)
ブランカはコンサートマスター(バイオリンソロ)、ヴォルフはチェロソロ
*祖父のモチーフ
ミラシミレ/ミラシミドの通奏低音
低音楽器でオルガン感を作る。
祖父のモチーフに各モチーフを重ねることで、世界への影響力を作る。
*フィルマンのモチーフ
9/8のニ長調(D dur)の優雅なワルツ
イングリッシュホルンがフィルマン本体
フルートでフィルマンの正体を隠す
弦の一列目でフィルマンの仮面を作る
単旋律のフーガから旋律が三分裂する。
ブランカのFに絡みにいく。
ファゴットが正体を知っている。
*ギュンターのモチーフ
低弦・ティンパニー・バスドラムのダッダッダッダ
中高弦・スネアドラムのギャンッギャンッギャンッギャンッ
木管・ホルン・チューバの中低音伸ばし
トランペット・トロンボーンのお出まし
*アロイスのモチーフ
4/4のハ長調(C Dur)
前向きな八分音符か十六分音符の旋律を、重さで表現し分ける
厚かましさ:弦のピッチカート+木管のスタッカート
大人なアロイス:スラ―多め、流れる感じ
地下組織のリーダー:スラ―少なめマルカート
地下組織リーダーの最終形:ペザンテな全テヌートの三連符で、全てをCdurに引っ張る。
*生活のモチーフ
麦:チェロ・ヴィオラのレラレラ
川:高弦トレモロとフルートとクラリネットのロングトーン
風:ホルン
*戦争のモチーフ
十六分音符の激しい動き
アロイスやヴォルフのテーマとは異なる。
~~~~~おさらい終わり
今回からは、これらのモチーフを活用して、どんな曲の流れにするかを解説していきたいと思います。
まずは一楽章から。
◆第一楽章は、祖父と世界と、ブランカとヴォルフを提示する章
第一楽章は本文の第一章に相当します。
しかし、曲というのは便利なものです。
実際の小説だと設定を小出しして登場人物が何を考える人なのかを積み上げていく必要があるんですが、曲は設定の説明とか要りませんし、モチーフのシーン分けみたいなのも必要ないんですよね。
読むと数時間、聴くと数十分。
これが小説と音楽の違いですね。
一方、交響曲の一楽章で大事なことは何かというと、全楽章を通してメインとなるテーマは何かを、きっちり曲で表現する必要があります。
『戦犯の孫』で全章通して関係あることというと、以下の点です。
・祖父の影響
・戦後の世界
・ブランカ
・ヴォルフ
・二人の関係
これらを、大体15分くらいで表現出来る形を考えたいと思います。
◆冒頭はやはり祖父
祖父は通奏低音という話をしましたが、気が付いたら祖父の上に載っている、という風にするよりも前に、世界の地面が何で出来ているのか、を提示したいと思います。
なので、曲の始まりはこんなイメージ。
①ミーラーシーミー(チェロとコントラバスのピアニッシモから始まる)
②ここにレーのロングトーン重ねる(ファゴット、ホルン、トロンボーン)
ミーラーシーミー(チェロとコントラバス)
③ここにドーのロングトーン重ねる(コントラファゴット、バストロンボーン、チューバ)
ミーラーシーミー(チェロとコントラバス)
④ここに高いミーとレーとドーを重ねる(高弦、他の木管)
ミーラーシーミー(チェロとコントラバス)
⑤段々テンポが速くなり、クレッシェンドしていく。
そして戦争のテーマへ。
◆戦争のテーマ
祖父から始まった一楽章は、まずはAllegro vivaceの速い十六分音符の戦争のテーマに変わります。嵐のような暴力的な音楽を弦が必死に演奏し、その上に管楽器の突き抜けるようなロングトーンで世界を支配します。下からはティンパニーの圧。
その中で、フルート・オーボエはその巨大な音の流れから必死に逃げます。
これは本文で言うところのプロローグの流れを意識したものです。
ここでいうところの弦は止めることのできない歴史の流れ、金管楽器と打楽器は国家権力、フルート・オーボエはその中で逃げ惑うブランカを表現します。
逃げた先にあるのは、麦畑 (レラレラ)や川 (トレモロなど)です。
◆ブランカのテーマ(第一主題)登場
麦畑のレラレラと、川のトレモロ、ホルンによる澄んだ空気の中に、ようやくブランカ登場です。
登場時のブランカは、バイオリンにさせるのがいいかな。迷いがある感じ。
ちなみにこの一番最初に出てくるブランカは、6/8系のモチーフですね。
日常の忙しなさをバイオリンで表現していく中に、2/2系モチーフにある叶わない切望感をフルートで重ねていく。
けれどふとした時に、下から祖父のミラシミが聞こえてくる。だから前に行けない。
それが第一主題のブランカです。
正直この時点で意味不明かもしれないですね笑
ブランカって本文でもそうなんですけど、結構堂々巡りするんです。
第一主題も少し堂々巡り気味になってもいいのかなと思います。
しかしそこをスパンと切るのがヴォルフのテーマです。
◆ヴォルフのテーマ(第二主題)登場
まずはヴォルフの2/4の推進力あるト短調 (ヴォルフのタタタタ)から入ります。
出だしはファゴットがいいかもしれません。渋くかっこよく、でも重すぎない。
その裏で、戦争のテーマや祖父のミラシミが薄く背景で鳴っていると、その歴史の中を生き抜いてきた男感をいい感じに表現できるかと思います。
でも走っているうちに、やはり麦畑のレラレラやホルンの風の流れに、推進力のある動きも溶けていく。
そうして包容力のト長調 (ヴォルフのタータタ)に移ろう。
ヴォルフの包容力タータタが、関係の浅いブランカとヴォルフのロンドを軽く触れるような形になると素敵だなと思います。
◆戦争の影は消えない(展開部)
ブランカとヴォルフの関係が何か発展しそう、そんなときに上から下からミラシミ(祖父のテーマ)が聞こえてきます。
そして戦争のテーマ再び。
フルート・オーボエ・バイオリンのブランカは必死に逃げます。
しかし金管・コントラバス・コントラファゴット・打楽器の戦争と祖父のテーマがブランカを追いかけます。
そこに呼びかけるのは、チェロとヴィオラ、ファゴット・ホルンによるヴォルフの語りかけ(2/2系の包容力の方)です。
ヴォルフのタータタが、ブランカをつなぎとめようとします。
◆二人の関係は進展するのか?(再現部⇒コーダ)
祖父と戦争の影を追いやったヴォルフは、ブランカに語りかけます。
しかしブランカは答えられない。
ヴォルフは諦めずに語りかけます。
つまりここは、バイオリンとチェロのデュオから始まるブランカとヴォルフのロンドの構造に入ります。
しかしブランカがヴォルフに近づこうとすると、どうしても祖父の影がちらつく。
そうしてブランカが手を伸ばそうとしたとき、戦争のテーマが二人を引き裂きます。
ヴォルフのタタタタ(推進力のテーマ)が再び現れる。
その上にブランカの叶わない2/2系の切望が重なる。
やがてヴォルフのテーマは消えていき、祖父のテーマの上でブランカの切望がゆっくり降りる。
(※この楽曲はフィクションどころか実在しません)
思い思いのままに語りましたが、なんか頭の中でこういうのが鳴ってるんですよ。
もうなんとでも仰ってください。




