1-1.何がどう「クラシック音楽」的なのか〜作品構造〜
『戦犯の孫』がどう「クラシック音楽」的なのか。
挙げ出したらキリがないんですが、次の三点がイメージしやすいのではないでしょうか。
・作品構造
・作品構成
・モチーフ回帰
もちろんこの三点も相互作用しているわけですが、一つずつ説明していきます。
◆作品構造について
『戦犯の孫』を構造で見ると、空間の広がり方が実は割とはっきりしています。
上に行けば行くほど、国家、戦争、歴史、思想。
一個人ではどうにもならない圧力を、上からかけているイメージです。
もちろん一番上は、祖父マクシミリアン・ダールベルクの巨大な影。五年前に亡くなった故人だっていうのに、その影響力は計り知れない。
一方、下に行くほど、川、麦畑、食事、生活。
要するに「普通に生きる」という感覚に近づいていきます。
この上下の圧力に挟まれて、ブランカやヴォルフたちが、あるいは名もなき人々が、苦しみ、もがき、揺れている。
そして、その全部が同時に鳴っている。
この構造、割とオーケストラなんです笑。
オーケストラの曲では、強い世界を表現するのにトランペットを始めとする金管楽器がよく使われます。コンサートホールを一発で圧倒するダイナミック担当ですね。
一方で、土っぽさや重力を、チェロ・コントラバスやファゴット・チューバの低音楽器が担当することが多い。下から這い上がる、みたいなのもよくやります。
その間で、バイオリンやフルートを始めとする他の楽器が揺れている。
例えば、ドヴォルザーク交響曲第九番『新世界より』。
あれ、結構土や生活の匂いがするんです。ある種ジブリ感かもしれない。
低音楽器の上に、オーボエやクラリネットが乗って、現実的な人の動きをする。
そこに有名な4楽章(絶対皆さん聞いたことある)で、金管楽器が広い世界を奏でる。
マーラーの交響曲第一番『巨人』も、いい例です。
始まりは、静かな森の空気から始まるのに、最後は金管大合唱で「世界そのもの」が押し寄せてくるように終わります。
ちなみにクラシックの曲は、突き抜けて終わるか、降りて終わるか、大体二択です笑。
さて、『戦犯の孫』で中層の主人公たちは揺れに揺れるわけですが、最後どっちに行くでしょうか。




