3‐3.キャラクターモチーフ~フィルマン~
「交響組曲『戦犯の孫』ヘ短調」(※実在しません)のモチーフについて。
祖父まで話しました。
◆前回までのおさらい~~~~
*ブランカのモチーフ
調:ヘ短調(F moll)
感情次第ではF#もF♭も。
ブランカの日常:6/8系(忙しなさと揺れ)
ブランカの感情:2/2系(叶わない夢への切望)
*ヴォルフのモチーフ
基本:ト(G)
ヴォルフのタタタタ:本質 2/4系のト短調(G moll/走りながら考える推進力と土臭さ)
ヴォルフのタータ:包容力 6/8系のト長調(G dur/安心感)
担当楽器:チェロかファゴット
*ブランカとヴォルフのロンド
6/8系のクエスチョン・アンサー系語り合い
ヴォルフはGdur で励まし、G♭(=F#)に降りる
ブランカはFmollで臆病になりながら、F#に引っ張られる
二人で一緒に揺れる(As mollので繊細で空気の濃い優しい音楽)
ブランカはコンサートマスター (バイオリンソロ)、ヴォルフはチェロソロ
*祖父のモチーフ
ミラシミレ/ミラシミドの通奏低音
低音楽器でオルガン感を作る。
祖父のモチーフに各モチーフを重ねることで、世界への影響力を作る。
~~~~~おさらい終わり
今回はやけに解像度高いフィルマンの話をします。
◆フィルマンはタチの悪い後期ウィンナーワルツ
私が考えるフィルマンはこんな感じです。
・洗練されたフランス紳士(フラウジュペイ人なのでね)
・優雅さはピカイチの胡散臭さ
・表面は美しい、でも黒い
・爽やかに見えるけどねっとりもする
・なんか、くどそう
とにかく優雅で華やかなワルツのイメージなんですよね。
間違いなくニ長調(D dur)の優雅さがある。
ベルサイユの鏡の間で映えそうな感じですね。
しかしウィンナーワルツというと、皆さんは『美しく青きドナウ』を思い浮かべるかもしれません。
ニューイヤーコンサートでウィーン・フィルが毎年やってるあれです。
フィルマンは、こっちではありません。
私がイメージするフィルマンのワルツは、リヒャルト・シュトラウスの『ばらの騎士』にあるようなウィンナー・ワルツです。
オーストリア帝国末期に近いのに、退廃的な爛れた貴族のワルツ。香水と不倫だらけ。
これがフィルマンぽいなと思います。
リヒャルトの『ばらの騎士』、一回やったことあるんですが、オーケストラめっちゃ難しいんです。
とにかくテンポの揺れが激しい曲で、合わせるの、難しいんですよ。
中で弾いてると、何でこんな曲作ったん?って聞きたくなる感じで……。
いやでも、作りたくなる理由が分かりましたわ。
フィルマンを表現するには、テンポ揺らしまくるのは必須やと思うんです。
オーケストラごと翻弄させる感じ、これがフィルマンかなと思います。
テンポ揺らしまくるウィンナーワルツ。
フィルマンは間違いなく3拍子系なんですが、くどさを出すなら9/8ですね。
3/8のワルツを三回セットでまとわりつく感じ。
◆下衆なフィルマンはブランカに絡みに行く
フィルマンはニ長調(D dur)なので、F#を持っています。
一方でフィルマンって下衆じゃないですか。
下衆って、Ges (G♭)にも出来る。
F#とG♭は実音は同じですが、実際弾く時はG♭は暗めにし、F#は明るめにして表現します。
要するに下衆 (Ges)なときは、ちょっと暗め。
皆さん、覚えてますか?
ブランカの憧れや切望はF#。
フィルマンは、さりげなくブランカに絡みに行ける要素があるんです。
これがまたいやらしい。
しかもGes (G♭)からいくと、何気にブランカ本体 (F)も絡められるので、しつこさとくどさを演出出来る。
ブランカ(F系)に絡みに行くところは、テンポをためたり揺らしたりして、まとわりつく感を最大限に表現したい。
◆フィルマンは万華鏡
フィルマンって掴みどころのない人でもある。どれが本体か分からないみたいな。
上でフィルマンのイメージ旋律を出しましたが、実際はどれが旋律か分からない動きをするのがフィルマンぽいのではないかと思うのです。
今私の頭の中で描いているのは二案ありまして、
①フーガにする
②三種類の旋律を同時に鳴らす
フーガとは、カエルの合唱のことです。
同じ旋律をタイミングずらして重ねる手法ですね。
聴き手としては、あっちからもこっちからも聞こえる……!みたいな、気が付いたら囲まれている感じを出せます。
でも単旋律でやるのはなぁ。
良い折衷案として、こうしましょう。
①単旋律でフーガ的に始まり、途中で三分裂する。
②どれを追いかけたら良いのか分からない、けど耳心地はいい、みたいな三旋律融合体を作る。
③でも最終的には主旋律に集合し、ブランカに絡みに行く。(G♭からF付近を行ったり来たり)
うん。
これ、優雅で華やかで気持ち悪くていい。
◆フィルマンはイングリッシュホルン
フィルマンパート、オーケストレーションもかなりイメージあるんです。
まずここだけ整理しときましょう。
フィルマンの本体(主旋律):イングリッシュホルン
フィルマンの本体隠し(主旋律補助):フルート
フィルマンの第一仮面(第二旋律):弦楽器トップ(コントラバス除く)
フィルマンの第二仮面(第三旋律):弦楽器トップサイド(コントラバス除く)
イングリッシュホルンは、木管楽器の中で一番変幻自在な楽器だと私は思います。
曲に安心感も与えるし、不安も作る。
ロマンチックな甘いメロディも作れる。
哀愁も作れる。
この何にでもなれる性質が、優雅であやしいフィルマンのヤバさを表現するのにもってこいだと思います。
しかしフィルマンって、外見はオシャレで洗練されている。
同じ旋律をイングリッシュホルンの上にフルートで重ねることで、フィルマンの外面紳士を作ります。
次に第一仮面 (第二旋律)と第二仮面 (第三旋律)。
これは上記で説明した三分裂の残り二つなんですが、やっぱり優雅に華やかに行きたいので、ここはコントラバス以外の弦。
しかしフィルマンモチーフはテンポの揺らしが結構あります。これを弦楽器みんなでやるとばらけやすい。旋律が揃ってないのは美しくない。
これの解決策として、第二旋律は弦トップ、第三旋律は弦トップサイド。
どういうことかというと、第二旋律と第三旋律は、オケ配置で言うところの弦楽器の最前列の演奏者のみのアンサンブルで作ると言うことです。
オケは楽器がいっぱいあるからこんなことが出来るんですよ。
◆他の楽器でフィルマンの世界観を作る
フィルマンの旋律の話を先にしました。
次に旋律を支える世界観をどう作るか。
まずワルツのブンチャッチャ。
コントラバスが『ブン』係。
弦の二列目以降の奏者の半分が『チャッチャ』。
曲の序盤はみんなピッチカート(弦をはじく奏法)ですね。
次に空間を作る和声 (ハーモニー)
これはホルンと弦の残りで作ります。
ダンスホールの空気が満たされている感じですね。
それからワルツの華やかさを出すのにシンバルは必須。
たまに登場するカミーユ。
カミーユは小物なので、小物で対応しましょう。
フルート二番のトリルと、トライアングル。
曲が盛り上がってきて他の木管金管も混ざる。
みたいなのが華やかでいいですね。
ただし重要なのはファゴット。
ファゴットだけがフィルマンの正体を知っている。
他の楽器が浮かれて舞踏会で踊っているところに、「俺は知ってるからな」という不穏な合いの手をファゴットに吹かせる。
これは結構面白い構図になりそうです。
◆まとめるとこうなる
わーっと語ってしまいましたが、最後に上記を踏まえた曲の流れをまとめます。
①弦のモブたち『ブンチャッチャ』
ホルン&弦の残りのモブたち 和声で空気作り
たまにシンバル『シャーン』
②イングリッシュホルン+フルート→弦の一番前外側→弦の一番前内側の順に、主旋律をタイミングずらして重ねていく。
(フーガ、カエルの合唱方式)
③②の弦が、それぞれ第二旋律、第三旋律に分裂する
分裂のタイミングで、フルート二番のトリルとトライアングル重ねる。
④三分裂した旋律がGG♭FG♭ (ソソ♭ファソ♭)で集合し、イングリッシュホルンだけ最後のG♭を長めに吹く。(ブランカに絡みに行く)
⑤④の後、ファゴットが合いの手入れる。
「俺は知ってるからな」
なお④⑤のときは、ブンチャッチャはなし。
⑥ブンチャッチャと②③を少し形を変えて広げる。他の木管金管も混ざって華やかさアップする。
⑦やはりGG♭FG♭でイングリッシュホルンがブランカに絡みにいく。
ファゴット合いの手。
(このとき、他の楽器はお休み)
みたいな感じで、優雅で華やかで弾いてても聴いてても気持ちのいい翳りのあるワルツ、にしたいと思います。
やけに解像度高いな笑
交響組曲内のモチーフだってのに、フィルマンのモチーフは一曲として成立出来ちゃいそうですね。
交響組曲『戦犯の孫』で一番人気出そう笑。
曲出来たらフィギュアスケートのショートプログラムで使ってくれやんかな。




