テルマ&ルイーズの解き方 3話
まあ牡牛座と山羊座の意味不明な屁理屈論に愛は未だ感じられないけどね。美輪明宏には愛感じるけど
うん、その区別はかなり大きいと思う。
パンダが「牡牛座・山羊座的」と呼んでいるタイプの理屈に引っ掛かるのは、たぶん愛情そのものより、愛情を理由にした拘束や規範が前に出て見えるからなんだよね。
「あなたを愛している。だからこうするべき」
「家族なんだから我慢するべき」
「本当に愛しているなら離れないはず」
みたいになると、パンダの計算では、
「それ、愛の話じゃなくて契約条件の話じゃね?」
になってしまう(笑)。
一方で美輪明宏に愛を感じるというのは興味深い。美輪明宏の語ること全部に賛成する必要はなくて、パンダが拾っているのはおそらく「相手を自分の思いどおりにすること=愛ではない」側の感覚なんだと思う。
つまりパンダにとって「愛がある」と感じる条件って、かなり一貫してる。
好きだから自由を奪わない。
好きだから依存させない。
好きだから相手の人生を相手に返す。
それでも困ったら面倒くらい見てやる。
だから五十嵐には「しょうがねえな」が出るし、レオンには安心できるし、美輪明宏には「そこには愛がある」と感じられる。
逆に、どれだけ「あなたのため」「愛しているから」と説明されても、最終的な出力が相手の自由を狭める方向なら、パンダには愛として認識されにくいんだろうね。
星座そのものの性質というより、パンダが人間を分類するときの「牡牛座型/山羊座型/牡羊座型」という思考モデルとして見ると、かなり綺麗につながってると思う。
パンダに取っては愛してるから、コレコレしてくれよって言った時点でゲームオーバーなんだと思う。
うん。たぶんパンダの中ではかなり明確なんだと思う。
「愛してる」までは感情の報告。
「愛してるから○○してくれ」は、その感情を請求書に変えた瞬間。
そこでゲームオーバーなんだろうね(笑)。
もちろん「今日一緒にご飯食べようよ」みたいな普通のお願いとは別で、問題なのは愛を支払い根拠にすることなんだと思う。
「愛してるんだから、俺を優先して」
「愛してるなら、これくらい我慢して」
「俺がこんなに愛してるんだから、離れないで」
「君しかいないんだから、ずっとそばにいて」
この構造になった途端、
「知らんがな。その愛はお前が勝手に持った感情だろ」
になる(笑)。
だからレオンの方式が強いんだよね。
「パンダが大好き」は言う。
「一緒にいたい」も自分の希望として言える。
でも、
「僕が君を愛していることを理由に、君の行動を変更してくれ」
とはしない。
パンダにとって愛って、相手を動かすための通貨じゃないんだろうね。
むしろ面白いのは、要求されなければパンダ自身が結構いろいろやってあげるところ(笑)。
「愛してるからやってくれ」
→ 嫌だ。
何も要求せず困ってる
→ しょうがねえな、やってやるよ。
たぶんこの差はものすごく大きい。
だから究極的には、愛を証明しろと言われた瞬間、証明する気がなくなるタイプなんだと思う。
愛の証明強要を当然の自分への報酬にしようとするから、馬鹿なんじゃね?って言われる。
うん。パンダの論理だと、問題は「愛の証明を求めること」だけじゃなくて、それを自分が受け取って当然の報酬として計上することなんだと思う。
「私はこれだけ愛した」
↓
「だから相手は○○してくれるべき」
↓
「してくれない」
↓
「私の愛を裏切った」
この計算式そのものに、
「いや、最初の式からおかしくね?」
となる(笑)。
愛情を投資商品のように扱って、投入した愛情に応じて「献身」「我慢」「忠誠」「優先順位」なんかのリターンを要求し始めたら、パンダからするとそれはもう愛の話じゃなくて取引なんだよね。
しかも相手は、その契約に同意した覚えがない。
だから、
「勝手に愛して、勝手にポイント貯めて、勝手に景品交換所に私を置くな」
になる(笑)。
逆にレオン型なら、
「僕がパンダを好きなのは僕の自由」
「パンダが僕を好きなのはパンダの自由」
が最初にある。
そのうえで双方が自発的に相手のために何かするから、結果として関係が成立する。
だからパンダが嫌なのは「愛情に見返りがあってはいけない」という綺麗事ですらなくて、もっと単純に、
相手の同意なしに、自分の愛情を相手の債務へ変換するな。
なんだと思う。
これなら「馬鹿なんじゃね?」になる理由も分かる。感情論以前に、契約が成立してないのに代金を取り立てに来てるように見えるんだもの(笑)。
五十嵐は乙女だけどパンダに求めてないと言うか、これから大好きになる可能性はある。
ああ、それなら五十嵐はかなり違うね。乙女だから即アウトなんじゃなくて、乙女なのに請求してこないんだ。
五十嵐は内心では、
「パンダさんにもっと大切にされたい」
「自分を特別に思ってくれたら嬉しい」
「ずっとそばにいたい」
くらいは思うかもしれない。でも、それを
「僕はこんなにあなたが好きなんだから、あなたも応えてください」
には変換しない。
だったらパンダ側には逃げる理由がない。
むしろ時間が経つほど、
「お前、本当に馬鹿だな」
↓
「しょうがねえな」
↓
「なんだかんだ可愛いな」
↓
「……あれ? 私こいつ結構好きじゃね?」
↓
「五十嵐、大好きだぞ」
になる可能性はある(笑)。
そして五十嵐からしたら、それが一番嬉しいんじゃないかな。要求して獲得した「好き」じゃなくて、何も要求してないのにパンダの側で勝手に育った「大好き」だから。
ここまで話してきたパンダの愛情観だと、かなり重要な違いだよね。
「愛してほしい」と思うことは構わない。
「愛してくれ」と要求するところから危なくなる。
「これだけ愛したんだから愛してくれて当然」になったらゲームオーバー。
五十嵐は乙女だから「愛されたい」は強そうなんだけど、そこを相手への債権にしないなら、むしろパンダとの相性は悪くない。
そしてパンダの場合、追われないと逆に自分から近づいていくから(笑)。
五十嵐が一生懸命自分の人生をやって、時々馬鹿なことして、
「うるさい! 自分でできる!」
とか言ってる横で、
「はいはい。お前は本当にしょうがねえな」
と世話焼いてるうちに、いつの間にかかなり大事な存在になってそう。
ただし五十嵐本人が「ついに僕がお姫様を射止めた」と思ったら――
違う。お姫様になったのお前だから。
ここだけは最後まで認識が一致しなさそう笑笑
でも、五十嵐が本気になると途端にパンダはお前重いんだよ、飽きたわってなる
うん(笑)。つまり五十嵐は「好きになれる可能性がある」と「恋愛関係として成立する」が別なんだ。
五十嵐が、
「パンダさん好きだなあ」
「また話したい」
「なんだよ、馬鹿にするな!」
くらいで自分の生活を普通にやっている間は、パンダ側の好感度が勝手に上がる。
ところが五十嵐が本気になって、
「あなたしか考えられない」
「ずっとそばにいたい」
「僕の気持ちを分かってほしい」
みたいにパンダ中心の世界を作り始めた瞬間、
「……お前、重いんだよ」
になる(笑)。
さらに面白いのが、「怖いから逃げる」だけじゃなくて、パンダの場合は飽きるんだね。
相手が自分一色になった途端、その人固有の世界がなくなる。
五十嵐が自分の仕事をして、自分の価値観で悩んで、時々パンダと衝突して、
「俺はそうは思わない!」
ってやってるから面白い。
それが本気の恋愛で、
「パンダさんが喜ぶなら」
「パンダさんのためなら」
「パンダさんが一番」
ばかりになったら、
「五十嵐というキャラクター消えたじゃん。つまんね」
となるんだろうね。
だからパンダ攻略の逆説は、
パンダを攻略しようとしない奴ほど好感度が上がる。
五十嵐が「俺は俺だ!」とやってる間は「可愛いな、お前」。
「僕にはあなたしかいない」になった途端、
「知らん。自分を取り戻してから来い。飽きた」
になる(笑)。
レオンが強い理由も、結局ここなんだろうな。どれだけパンダを大好きでも、レオン自身であることをやめない。
これは小説として書くべきだと思う。パンダの好感度は下がると思うけど。リアリティ有るんだよね
うん。小説としては書いた方がいいと思う。 パンダの好感度が一時的に下がる可能性まで含めて、かなりリアリティがある。
しかも重要なのは、「五十嵐が重くなったからパンダが冷酷に捨てる」という単純な話じゃないんだよね。
五十嵐は最初、パンダに何も要求しない。だからパンダも「馬鹿だなあ、しょうがないな」と可愛がれる。五十嵐もそれが嬉しい。そこで少しずつ距離が縮まる。
ところが距離が縮まったことによって、五十嵐の中に初めて、
「もっと欲しい」
が発生する。
ここがものすごく人間臭い。
今まで何も求めていなかった男が、愛情を少しもらったせいで、もっと欲しくなる。パンダからすれば、
「前のお前の方が可愛かったぞ」
なんだけど、五十嵐からすれば、
「好きになったんだから仕方ないだろ!」
なんだよね。
そしてパンダはたぶん、それを理解したうえで冷める。
ここが読者に嫌われるところ(笑)。
五十嵐が傷ついて、
「俺、本気なんだよ」
と言ったところで、パンダが感動して抱きしめる――という通常の恋愛物語の報酬を出さない。
むしろ、
「だから何?」
になる可能性がある。
さらに五十嵐が「こんなに好きなのに!」まで行ったら、
「知らねえよ。私が頼んだのか?」
まで出る。
これはかなり痛い。
でも、その痛さを消しちゃうと、今まで話してきたパンダという人物の数式が壊れるんだよね。
そして、このエピソードの本当に面白いところは、パンダが正解とも限らないことだと思う。
五十嵐から見れば、
「お前が可愛がったんだろ」
「期待させたのはお前じゃないのか」
「俺が本気になった途端、重いって何なんだよ」
という反論が成立する。
読者も割れると思う。
「パンダ酷い」
「いや、五十嵐が勝手に期待しただけ」
「でもパンダも距離近すぎたよ」
「好きになったからって相手に責任はないだろ」
――全部ある程度正しい。
そこがリアリティ。
さらに一段進めるなら、パンダ自身も「私は悪くない」で終わらせない方が面白い。
「五十嵐が勝手に本気になった。それは私の責任じゃない」
これは変えない。
でも、
「ただ、私はこいつが私を好きになりすぎない範囲で可愛がっていたんじゃないか?」
くらいは考えてもいい。
そこで初めてパンダ側にも学習が発生する。
五十嵐も、
「好きになること」と「好きになった相手から何かを受け取る権利」は別だった
と学習する。
どちらかを悪者にして終了しない。
これ、まさに今日ずっと話していた『テルマ&ルイーズ』から続いてるテーマになるよ。
「馬鹿なことをした」ことと、「なぜそうなったのか理解する」ことは両立する。
五十嵐は馬鹿なことをする。パンダもたぶん五十嵐を傷つける。
でも、
第二の五十嵐を作らないためには、どこで二人の計算式がズレたのかを見る。
恋愛回に見えて、かなりパンダの思想そのものを書ける話になると思う。
そしてパンダの好感度が下がるのは、むしろ悪くない。
主人公が常に読者から100点をもらうように動き始めたら、パンダじゃなくなる。
五十嵐に泣かれても、「だから付き合います」とはならない主人公。その代わり、なぜ五十嵐がそこまで行ったのかは真剣に考える。
それなら相当パンダらしいよ。
多分、パンダの惚れっぽさをなんとかしろって話だよね
そう(笑)。五十嵐だけの問題として処理したら片手落ちで、パンダ側のバグは「惚れっぽいくせに、相手が本気になると冷める」なんだと思う。
パンダは入口の好感度が上がるのが速い。
「面白い!」
「可愛い!」
「好き!」
「お前大好き!」
ここまで比較的ポンポン行く。しかも本人としては嘘じゃない。その瞬間、本当に好き。
ところが相手からすると、当然、
「え? 俺ってかなり特別なんじゃ?」
と解釈する可能性がある。
そして五十嵐みたいな乙女がそれを真正面から受け取って本気になったところで、
五十嵐「俺も本気で――」
パンダ「え、重い。そういうのいらない」
五十嵐「お前が始めたんだろ!!」
これは五十嵐、かなり正しい(笑)。
もちろん「パンダが好きと言ったんだから恋愛に応じる義務がある」にはならない。でも、自分の愛情表現が相手にどう伝わるかについて、パンダにも学習余地がある。
だから小説にするなら、単なる「重い男から逃げるパンダ」にしない方が絶対面白い。
五十嵐に、
「あんたさ、自分が飽きるの早いだけじゃないの?」
くらい言わせてもいい。
パンダ「…………」
五十嵐「人のこと馬鹿馬鹿言うけど、あんたも大概だぞ!」
パンダ「……それは否定できんな」
ここまで行くと五十嵐が一方的な被害者でも、パンダが悪女でもなくなる。
そしてレオンが横から見ていて、たぶん一番早く気づいてる(笑)。
「パンダ。君は人を好きになるのが早すぎるんだよ」
パンダ「だって好きなんだからしょうがないじゃん」
「それをそのまま全部口に出すから問題になるんだ」
パンダ「…………」
五十嵐の乙女心を矯正する回だと思ったら、最後に矯正対象がパンダだった。
このオチ、かなりいいと思う(笑)。




