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天才パンダのエッセイ※本物のミステリー!ゲームと脳科学 楽しい経済学 切り裂きジャックと孤独  作者: ヘタレパンダ


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人気のドーナツ屋に90分並んでわかったこと

人気のドーナツ屋に90分並んでわかったこと


――行列ができることと、商売が上手いことは違う


先日、他県で人気だというドーナツ屋が近所にオープンしたので、試しに買いに行ってみた。


私は最初から、それほど味には期待していなかった。


ドーナツが1個250円前後。


安いというほど安くもないし、高級品というほど高くもない。なんとも中途半端な価格帯である。


しかも、店はコインランドリーと質屋の間。


看板は白と水色の、いかにもおしゃれを狙ったようなデザインなのだが、遠くから見ても何の店なのかわかりにくい。


おしゃれな看板を作りたいのかもしれないが、そもそも看板というのは、客に何の店なのか知らせるためのものじゃないのか?


おしゃれにすることと、商業デザインとして優秀であることは、別問題である。


まあ、看板はいい。


問題は行列だった。


なんと、ドーナツを買うだけで90分も待たされたのである。


私は腰を痛めている。


それなのに、立ったまま90分。


しかも途中で、店員が「売り切れて買えないかもしれません」と言い出した。


おいおい、ふざけんなよ。


それなら、もっと早く言えよ。


そもそも購入点数を制限するとか、整理券を配るとか、いくらでも対策があるだろう。


しかも、売り切れるかもしれないと言いながら、前の客には二箱も買わせている。


一体どういう在庫管理をしているんだ?


■ 行列が長い理由は、客が多いからとは限らない


私は行列に並びながら、店員の仕事ぶりを観察していた。


すると、原因がだんだんわかってきた。


レジが一つしかない。


しかも、店員がレジ操作に慣れておらず、商品を確認するのにも包装するのにも時間がかかっている。


商品は約40種類。


しかも、全部ドーナツなのに、10円、20円単位で価格が違うものがある。


これがパン屋だったらまだわかる。


フランスパンとメロンパンとクロワッサンなら、見た目で比較的簡単に区別がつく。


ところが、似たようなドーナツを何十種類も用意して、少しずつ値段を変えている。


店員は一つずつ見分けて、商品名や価格を確認し、レジに入力しなければならない。


そのうえ箱詰めまである。


そりゃ時間がかかるわ。


しかも、新しく並べられた商品を欲しがって、前の客がレジを離れたことがあった。


まだその客の会計は始まっていない。


そこで私は「だったら私の会計を先に済ませて」と言った。


すると店員は「順番ですから、それはできません」と言う。


はあ?


その人が商品を取りに行っている間に、私の会計なんて終わるだろう。


順番を守ることと、レジを止めて客を待たせることは同じじゃない。


こういうときに臨機応変に対応できる仕組みを作っておけばいいのである。


■ 私ならどうするか


まず考えたのは、開店直後の混雑時には、5個セットと10個セットを販売する方法である。


商品は店側が選んで、あらかじめ箱詰めしておく。


例えば、1個250円の商品を基準とするなら、10個セットをお試し価格2,400円で販売する。


これなら客は商品を一つずつ選ばずに済む。


店員も商品を一つずつ確認して包装する必要がない。


会計して商品を渡すだけである。


もちろん、5個セットも用意すればいい。


一度に10個も食べられないという客だっているのだから。


しかも、初めて来た客にいろいろな種類を試してもらえる。


気に入ったものがあれば、次回から好きなものを選んでもらえばいい。


もう一つの方法は、サーティワン方式である。


商品の種類は豊富でも、価格設定を単純にする。


例えば、全部250円。


そうすれば店員は個数を数えるだけで会計できる。


もちろん、原材料費の違いがあるだろう。


だったら商品開発の段階から、大きさや材料、トッピングを調整し、全体で利益が出るように設計すればいい。


それが商売というものじゃないのか。


別に全商品を同じ価格にするしか方法がないわけじゃない。


商品番号をつける、写真付きのレジを使う、包装担当と会計担当を分ける、レジを増設する。


いくらでも方法はある。


■ 優秀な店員を雇えばいい? そんな簡単な話じゃない


店員がモタモタしているなら、テキパキ働ける人間を雇えばいい。


そう考える経営者もいるかもしれない。


でも、ちょっと待て。


そんなに優秀な人材が簡単に雇えるのか?


人手不足の時代に、何十種類もの商品を瞬時に見分けて、計算して、包装して、会計までこなせる従業員を、いくらの時給で雇うつもりなんだ?


しかも、トイレに行く暇もないほど働かせるつもりなのか?


そんな優秀な人間が、わざわざその店で短時間、安い給料でこき使われることを選ぶとは限らない。


私は、従業員に無理をさせろと言っているわけではない。


普通の能力の従業員が、普通に働いても、効率よく販売できる仕組みを作れと言っているのである。


人間の能力に頼る前に、仕事の仕組みを改善すればいい。


■ 行列ができる店は、本当に儲かっているのか?


ここで、もう一つ考えてほしいことがある。


行列が長いことと、売上が多いことは違う。


午前11時に開店して、午後1時に売り切れる店があるとしよう。


「たった2時間で完売!」


なんて言えば、人気店に聞こえる。


でも、その店が何個売ったのかはわからない。


100個用意して100個売ったのか、1,000個用意して1,000個売ったのかでも話は違う。


一方、朝10時から夜8時まで営業して、行列も作らず、どんどん客をさばいている店があったとする。


どちらの売上が大きいのか?


それは実際の販売個数、客単価、利益を調べなければわからない。


しかも、行列というのは、人気があるからできるとは限らない。


単に店の処理能力が低くてもできる。


つまり、レジが遅ければ遅いほど行列が伸びて、通行人には繁盛店に見えてしまうことがある。


それを意図的に演出しているかどうかは知らない。


でも、行列が長いというだけで経営が成功していると判断するのは、間違いである。


■ ところで、肝心の味はどうだったのか?


ここまで散々悪口を書いたので、読者は私がドーナツを酷評すると思ったかもしれない。


ところが、である。


これが意外とおいしかった。


私は当時メントールガムを噛んでいたので、味覚に多少影響があったと思う。


その状態で75点。


ちなみに、私がミスタードーナツの味だけを採点すると73点程度である。


ガムを噛んでいなければ、78点ぐらいは取れたんじゃないかと思っている。


つまり、商品そのものは、十分に合格なのである。


なかなかやるじゃないか。


最初は30点程度だろうと予想していたのだから、これは予想外の高評価だ。


だからこそ、もったいない。


せっかくおいしい商品を作れるのに、販売方法が悪くて客を逃している。


私がもう一度買いたいと思ったとしても、また90分並ばなければならないのなら、次回は諦めるかもしれない。


■ おいしいものを作るだけでは商売は完成しない


私は、おいしい料理というのは気配りだと思っている。


食べる人が何を喜ぶか、どんな食感を求めるか、どんな温度で食べればおいしいか。


そういうことを考えるのが料理である。


だったら、その料理を買うまでの時間についても考えてほしい。


客の時間だって、無料じゃない。


従業員の労力だって、無限じゃない。


10円、20円の価格差を細かく計算する前に、90分待たせることで何を失っているのか計算してみたらどうだろう。


私は無理難題を要求しているわけではない。


すでに他の店が採用している方法を、応用すればいいと言っているだけである。


開店初日なら仕方ないこともある。


でも、翌日以降はデータを取って改善できる。


失敗したことよりも、失敗を分析せず、改善しないことの方が問題なのだ。


そして、最後に一つ。


「また来てください」と言うのは簡単である。


でも、また来たくなる店を作る方が、ずっと重要なんじゃないだろうか。


おいしいドーナツを作れる技術があるのなら、次はおいしいドーナツを気持ちよく買える技術を身につけてほしい。


それが私の今回の結論である。


――天才パンダ

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