シャングリラ 新しい演出とは?
テーマパークは金をかければ面白くなるのか?
――ダイソーの陳列から考えるジャングリア改善構想
私は以前、ダイソーで商品の陳列をしていた。
実は、この経験が私の経営に対する考え方の基礎になっている。
商品の陳列なんて、ただ棚に商品を並べるだけだと思っている人もいるかもしれない。
冗談じゃない。
同じ商品でも、置く場所や見せ方によって売れ行きは変わる。
何を隣に置くか。どのように組み合わせるか。どうすればお客様が商品を手に取りたくなるか。
そして、一番重要なのは、
「お客様はいったい何を欲しがっているのか?」
ということだ。
自分が売りたい商品と、お客様が欲しい商品は必ずしも同じではない。
だから私は、まず少し商品を置いてみる。
売れ行きを確認する。
売れるようなら拡大する。
売れなかったら、置き方が悪いのか、商品そのものに需要がないのか、価格が問題なのかを考える。
こうやってデータを取る。
最初から大量に発注して、大きな売り場を作ればいいというものではない。
そもそも予算が決まっているのだ。
金が無限に湧いてくるわけじゃない。
数打ちゃ当たる? そんなことをしていたら死んでしまう
私は体力がない。
だから、何でもかんでも試して、数打ちゃ当たる方式でやっていたら、本当に体がもたない。
時間だって限られている。
勉強する時間も、実際に作業する時間も、好きなだけ使えるわけではない。
そして仕事には予算がある。
つまり、体力も時間も予算も有限なのだ。
だったら、どうするか?
すでに誰かが成功した方法を研究すればいいじゃないか。
過去に大勢の人が試行錯誤して、成功したり失敗したりしている。
そのデータが残っているなら、まずそれを調べればいい。
自分が一から同じ失敗を繰り返す必要はない。
もちろん、他人の成功例が自分の店でも必ず成功するとは限らない。
だから、小さく試す。
結果を確認して、うまくいったら拡大する。
何も難しいことを言っていない。
むしろ、これが経営の基本ではないのか?
私の経営知識はテレビから得たものが多い
では、私はどこでそういうことを学んだのか?
もちろんダイソーでの実践もある。
でも、もともとの知識はテレビから得たものが多い。
コンビニの商品開発。
スーパーの陳列方法。
百貨店の売り場づくり。
ヒット商品の開発秘話。
売上が伸び悩んでいた企業が、何を変更して業績を改善したのか。
そういう番組を私は好んで見ていた。
テレビというのは、実はかなり面白い教材なのだ。
開発者たちが、どれほど苦労して商品を作っているか。
なぜ失敗したのか。
何を改良したら売れるようになったのか。
テレビは、そういう涙ぐましい努力をよく紹介してくれる。
私はそれを見ながら、
「ああ、こういう考え方もあるのか」
「この方法は別の売り場でも使えるんじゃないか?」
と考えていた。
何も全部自分で発明する必要はない。
優れたアイデアを考えた人がすでにいるのだから、研究して利用すればいい。
テレビを馬鹿にする人もいる。
もちろん、ただ笑うだけの娯楽番組だって悪くない。
しかし、娯楽の中に少しくらい知性があってもいいと思うのだ。
動物番組だって、動物の行動や心理、信頼関係の築き方を学ぶ材料になる。
ただ見て楽しむだけでもいいけれど、そこから何かを学んで実生活に応用することもできる。
私はそのようにして知識を増やしてきた。
そして、ダイソーで実際に試した。
今度はその方法を、テーマパークにも応用してみようというわけだ。
ジャングリアをもっと面白くするには?
沖縄にできたテーマパーク、ジャングリア。
私はこの施設について考えているうちに、次々と改善案を思いついた。
別に何十億円もかけてジェットコースターを作れと言っているわけではない。
むしろ逆だ。
できるだけお金をかけずに、どれだけお客様を喜ばせられるか。
まず考えるべきなのは、そこだと思う。
例えば、すでにある恐竜ライドや恐竜パフォーマンス。
これは活用すればいい。
そのうえで、違う種類の体験を増やす。
恐竜版・戦慄迷宮
富士急ハイランドの戦慄迷宮。
あの仕組みを参考にして、恐竜版を作ったらどうだろう?
舞台は恐竜研究所。
バイオハザードのような雰囲気の研究施設を、お客様が自分の足で移動する。
突然警報が鳴る。
恐竜が脱走したらしい。
暗い廊下の奥から足音が聞こえる。
そして恐竜に遭遇する。
本格的な恐怖体験だ。
大型ジェットコースターとは違う方法で、お客様を楽しませることができる。
ただし、この施設は別料金でもいいと思う。
小さい子供には刺激が強すぎるし、大人でも怖いものが苦手な人はいる。
参加したくない人にまで、特別な施設の維持費を上乗せした入園料を請求する必要があるのだろうか?
だったら、希望者から追加料金をもらえばいい。
もちろん需要と運営費を調べて、採算が合う料金に設定する必要はある。
それから、本家の戦慄迷宮と正式にタイアップするのも面白い。
「この施設は戦慄迷宮に着想を得ました。他の怖い体験をしたい方は、ぜひ本家へ!」
そう言って、提携した割引チケットを渡す。
逆に富士急側からも、ジャングリアの恐竜施設を紹介してもらう。
お互いに宣伝できるではないか。
幼児向けの恐竜ショーも作ろう
一方、小さな子供には、怖くない恐竜施設を用意する。
『おかあさんといっしょ』や『ポケモン』のような、かわいい恐竜たちが登場するショーだ。
恐竜のリアリティを追求する必要はない。
恐竜さんと一緒に歌ったり踊ったりできればいい。
そして、希望する子供たちを舞台に上げる。
その様子を撮影して、映像を販売する。
自分の子供が恐竜さんと一緒に踊っている映像だ。
お父さんやお母さんにとって、宝物になるかもしれない。
私はキッザニアのような体験施設で、こうした記録が親子にとって価値のあるものになることを知っている。
だったら、それを恐竜ショーに応用すればいい。
さらに、人気の恐竜キャラクターのぬいぐるみやフィギュアを販売する。
「私が一緒に踊った恐竜さんが欲しい!」
そういう子供だっているだろう。
ショーで楽しんでもらう。
記念映像を販売する。
グッズを販売する。
また会いに来てもらう。
一つの企画から、いくつもの商売につなげられるのだ。
CGで作った映像を商品にする
ジャングリアは開業当初、宣伝映像と実際の体験の違いが批判された。
だったら、CGを使った映像そのものを商品にすればいい。
例えば、翼竜にさらわれて空を飛ぶ体験。
これを大型ライドで実現しようとしたら、相当な設備投資が必要になる。
しかし、ハリー・ポッターのスタジオツアーのように、クロマキーで撮影する方法ならどうだろう?
お客様自身を撮影し、翼竜にさらわれて大空を飛んでいる映像を制作する。
完成した映像をスマートフォンに保存して持ち帰ってもらう。
最初からCG撮影体験として販売するのだから、本当に空を飛べると誤解させる必要もない。
しかも、映画の主人公になったような映像が手に入る。
これだって、十分に楽しめる商品になるのではないだろうか?
汽車ポッポやカルーセルでもいい
ほかにも、小型の汽車やコーヒーカップ、カルーセルなどを作ればいい。
恐竜の形をしたカルーセル。
恐竜の森を走る汽車。
それだけでも小さな子供は楽しめる。
既製の遊具を応用すれば、すべてを一から開発する必要もない。
ジェットコースターは確かに魅力的だ。
でも、費用がかかる。
ならば、まず比較的安く導入できる施設から試す。
お客様が増えて、十分な利益が出るようになったら、ジェットコースターの導入を検討すればいい。
何も一度に全部作る必要はないのだ。
世界を巡る恐竜ショー
さらに、シニア世代のお客様も取り込みたい。
例えば、豪華客船で恐竜ショーを開催するというのはどうだろう。
おいしい食事。
快適な寝具。
そして夜は、大規模な恐竜ショー。
これなら、絶叫系の乗り物が苦手な人でも楽しめる。
しかも豪華客船なら、世界各地を回ることができる。
アメリカ、イタリア、アフリカ。
各地で恐竜ショーを開催しながら、ジャングリアの宣伝をする。
もちろん、船を建造するには莫大なお金がかかる。
だから、必ずしも船を造れと言っているわけではない。
既存のクルーズ会社との提携だって考えられる。
大切なのは、恐竜ショーの収益だけでなく、世界中にジャングリアを宣伝できるという複数の利点があることだ。
最初から全部作る必要なんてない
ここまでいろいろな案を出してきたけれど、私は何も難しいことをしているつもりはない。
すでに成功したものを研究する。
なぜ成功したのかを調べる。
その仕組みを自分なりに改良する。
そして、できるだけ小さく試す。
売れることが分かったら拡大する。
当たり前の話ではないか。
私は昔から、他人が考えた優れたアイデアを利用してきた。
泥棒と言われたら、まあ泥棒かもしれない。
でも、最初に優れたアイデアを考えた人がすごいということは認めている。
だったら、相手と正式に提携して、お互いに利益が出るようにすればいい。
既存の知識を利用することと、他人の権利を侵害することは別の話なのだ。
そして私は思う。
ジャングリアを手がけた刀には、マーケティングの専門家がいるという。
だったら、当然こうしたことは研究しているはずだろう。
もっとも、実際にどこまで検討したのかは私には分からない。
さまざまな制約で実現できなかった企画もあるかもしれない。
しかし、それでも考えたい。
お客様が欲しがっているものは、本当に何なのか?
自分たちが作りたいものを先に決めて、それをお客様に押しつけてはいないだろうか?
必要なのは、まず需要を調べることだ。
実際に売れているものがあるなら、それを研究する。
試しに提供して、数字を取る。
結果を見て判断する。
それが基本だろう。
自分の頭の中で考えただけのアイデアを「すごいでしょう」と自慢されても、実際にどれだけ売れるのか、いくら利益が出るのかが計算できていなければ、商売としてはまだ不十分なのだ。
私は無限の体力を持っていない。
時間も無限ではない。
予算だって無限ではない。
だからこそ、他人が苦労して集めた知識やデータを大切にする。
その知識を利用して、なるべく失敗する可能性を減らす。
そして実際に試し、結果が出たものを拡大する。
金を使い切ることが目的ではない。
豪華な設備を作ることが目的でもない。
お客様に喜んでもらい、満足してもらい、その結果として利益を生み出すこと。
私は、それが商売の基本だと思っている。
そんなことを、私はダイソーの陳列と、テレビで見てきた数多くの成功事例から学んだのである。




