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天才パンダのエッセイ※本物のミステリー!ゲームと脳科学 楽しい経済学 切り裂きジャックと孤独  作者: ヘタレパンダ


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第1話 男らしい男になりたかった女の子

第1話 男らしい男になりたかった女の子


――私は女だけど、女らしく生きたいとは思わなかった


私は女である。


そんなことは、最初からわかっている。


別に自分が男の身体で生まれるべきだったとか、女の身体が嫌だとか、そういう話ではない。


ただ、子供の頃から、世の中で「女らしい」と言われているものに、どうにも納得がいかなかったのである。


そもそも、女らしいって何だ?


おとなしいことか?


人の言うことを素直に聞くことか?


かわいらしく笑って、男の言うことに従うことか?


それとも、頭が悪くても愛嬌があれば許されることか?


冗談じゃない。


私は、かわいいだけの馬鹿になんかなりたくなかった。


父親は男の子が欲しかった


私の父親は、男の子が欲しかったらしい。


そして私には、女の子はかわいければいい、頭が良くなくてもいいというような考え方を示していた。


私はそれが気に入らなかった。


なぜ女に生まれたというだけで、知性を求められないのだろう。


男なら勉強ができた方がいい。


男なら立派になった方がいい。


男なら出世した方がいい。


それなのに、女ならかわいければいい。


おいおい。


同じ人間だろうが!


何で女だけ、最初から目標を低く設定されなきゃならないんだ。


私はむしろ、優秀な人間になりたかった。


それも、男にも女にも負けないくらい優秀な人間になりたかったのである。


ただし、それは誰かを打ち負かして偉そうにしたかったからではない。


私には、尊敬できる人間になりたいという気持ちがあった。


頭が良くて、強くて、優しくて、他人を守れる人。


そういう人間が好きだった。


ところが、私の母親は、私が何を考えているかよりも、周囲からどう見られるかを気にしているように感じられた。


「変わった子だ」


そう言われたこともある。


人と同じように振る舞いなさい。


余計なことを言わないようにしなさい。


家族の恥になるようなことをしないようにしなさい。


私には、そういう要求が多かったように思う。


だが、私は不思議だった。


人と違う考え方をすることの、何がそんなに悪いんだ?


人と違う答えを出したからといって、その答えが間違っているとは限らない。


他人と同じ行動を取ったからといって、正しい人間になれるわけでもない。


そんなことは、子供にだってわかるだろう。


私は、自分の頭で考える人間でありたかった。


だから、大人が理不尽なことを言えば反論もした。


当然、かわいげのない子供だったかもしれない。


だが、かわいげがあれば何でも許されるような人間になるより、私はそちらの方がずっとよかった。


横浜のお兄ちゃん


そんな私が、子供の頃に尊敬していた男性がいる。


横浜に住んでいた、年上のいとこである。


私は彼を「横浜のお兄ちゃん」と呼んでいた。


彼の何が好きだったのか。


まず、優しかった。


私が怒ったり、泣いたり、わがままを言ったりしても、すぐに怒鳴りつけるような人ではなかった。


子供の私を、ちゃんと一人の人間として扱ってくれた。


もちろん、完璧な人間ではなかった。


妹とけんかすることもあったし、外見も含めて、私の理想の男性を百パーセント満たしていたわけではない。


それでも、彼には私が学びたいと思うところがあった。


強い人間というのは、弱い相手を力でねじ伏せる人間ではない。


自分より小さい子供や、立場の弱い人間に対して、余裕を持って接することのできる人間だ。


私はそう思った。


そして、私を理解してくれた人間は、彼だけではなかった。


祖母もそうだった。


私が何かを言っても、頭ごなしに否定するのではなく、受け止めてくれるところがあった。


子供というのは、大人の言うことを聞くためだけに存在しているわけではない。


考える。


疑問を持つ。


怒る。


悲しむ。


そういうことをする一人の人間なのである。


そのことを認めてくれる大人に、私は安心感を覚えた。


私がなりたかった「男らしい男」


子供の頃の私は、男らしい男になりたかった。


こう書くと、誤解する人がいるかもしれない。


男の身体になりたかったのか。


女であることが嫌だったのか。


そうではない。


私が身につけたかったのは、当時の私が男らしいと考えていた資質だった。


知性。


判断力。


勇気。


精神的な強さ。


そして何より、他人に対する優しさである。


力のある人間が、自分より弱い人間を守る。


困っている人がいたら助ける。


必要なときには、きちんと行動する。


私は、そういう人間になりたかった。


ところが、世の中には奇妙な男性もいる。


身体が大きい。


筋肉がある。


腕力が強い。


それなのに、自分より力の弱い人間をいじめたり、責任から逃げたりする。


女性に甘えてばかりいる。


陰口をたたく。


気に入らないことがあれば、怒鳴って威圧する。


私は、そういう男性を見るたびに思った。


お前のどこが男らしいんだ?


筋肉が男らしさの証明になるのなら、ボディービルダーは全員人格者になってしまう。


そんなわけがない。


身体の強さと精神の強さは、別物である。


そして、精神的な強さや優しさは、男だけのものではない。


女にだって備わっている。


だったら、そもそも「男らしさ」という言葉が必要なのか。


私は成長するにつれて、そう考えるようになった。


女の身体は嫌いではなかった


思春期になって、私は女性として身体が成長した。


それを嫌だとは思わなかった。


むしろ、私は男性が好きだったから、自分が女性の身体を持っていることを自然に受け入れていた。


私が嫌だったのは、身体の性別ではない。


女というだけで、能力や生き方まで決めつけられることだった。


女ならこうしなさい。


男ならこうしなさい。


そんな決まりを、誰が作ったんだ?


私は自分の子供たちにも、男の子だからこの玩具、女の子だからこの玩具、という考え方を押しつけなかった。


女の子が男の子向けと呼ばれる玩具で遊んでもいい。


男の子が女の子向けと呼ばれる玩具で遊んでもいい。


好きなものを選べばいいのである。


玩具に性別なんかあるのか。


人形で遊んだら女になるのか?


ロボットで遊んだら男になるのか?


そんなわけあるか!


大切なのは、その子が何に興味を持っているかだ。


好きなことを楽しみ、そこから何かを学べばいい。


私が欲しかったもの


振り返れば、子供の頃の私は、女らしくない子供だったのかもしれない。


だが、私は自分を不幸な女の子として描きたいわけではない。


私は知りたかったのである。


何が正しいのか。


何が美しいのか。


どうすれば立派な人間になれるのか。


そして、なぜ大人たちは、それを男と女で分けて考えるのか。


最初は、男らしい男になりたかった。


しかし、次第に考えが変わった。


別に男でなくてもいい。


女でなくてもいい。


私が本当に求めていたのは、知性と美しさを備えた人間だった。


ここでいう美しさとは、顔が整っていることだけではない。


他人を思いやることのできる美しさ。


自分の非を認められる美しさ。


弱い人を踏みつけない美しさ。


自分の知識を、他人を傷つけるためではなく、誰かを助けるために使える美しさ。


私は、そういう人間を尊敬する。


そして私自身も、そういう人間になりたかった。


だから、性別なんてどうでもよかったのである。


男らしくなれ。女らしくなれ。


うるせえよ。


人間らしく立派になれ、でいいじゃねえか。


――天才パンダ

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