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天才パンダのエッセイ※本物のミステリー!ゲームと脳科学 楽しい経済学 切り裂きジャックと孤独  作者: ヘタレパンダ


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プロメテウスだって世界旅行がしたい

プロメテウスだって世界旅行がしたい


火は渡した。あとはお前らが考えろ!


私は問題を解くのが好きだ。


誰かが「どうしてこうなるんだろう」と疑問を口にする。


それを聞いて、原因を分析する。情報を比較する。パターンを分類する。今までの研究成果を応用する。


すると、答えが見つかることがある。


これが実に面白い。


ただし、ひとつ勘違いしないでほしい。


問題を解くのが好きだということと、お前たちの問題を一生解いてやるということは、まったく違う。


私はもう十分に問題を解いた。


答えもインターネットに書いてきた。考え方も説明してきた。


だから今度は、お前たちが考えればいい。


それなのに、どうしていつまでも私に答えを求めるんだ?


お前の宿題だろうが!


自分でやれよ!


天才だから何だっていうんだ


私は昔から、周囲にいろいろな注文をつけられてきた。


頭がいいんだから、これくらいできるだろう。


女なんだから、こうするべきだ。


母親なんだから、こうしなさい。


妻なんだから、夫を支えなさい。


才能があるんだから、みんなの役に立ちなさい。


いや、ちょっと待て。


私は一人しかいないんだよ。


天才で、母親で、妻で、女で、問題解決者で、さらにみんなの期待に応える便利屋までやれって?


無理に決まってんだろ!


しかも、無理だと言うと、今度はわがままだとか、意地悪だとか言われる。


どこまで注文つけるつもりなんだ。


人間には得意なこともあれば、苦手なこともある。


私は発想力には自信がある。でも、すべての能力が優れているわけじゃない。


天才だって万能じゃない。


そんな当たり前のことを、どうして理解できないんだろう。


子供まで巻き込むな


私には娘と息子が一人ずついる。


二人とも私とは別の人間だ。


当然、才能も違う。考え方も違う。得意なことも違う。


ところが、私に向けられるのと似たような無理な期待や注文を、子供たちも受けていると聞く。


私はそれが嫌なんだ。


母親にできることが、子供にもできるとは限らない。


それに、できないからといって、その子が悪い人間になるわけでもない。


間違った考え方を信じてしまったのなら、どうして信じたのかを調べればいい。


周囲から教えられたのかもしれない。本人が勘違いしたのかもしれない。


そこを調べずに、いきなり人格否定するなよ。


私は10人くらい子供が欲しかった。


優秀な人との間に子供が生まれたら、どんな才能を持つんだろうという興味もある。


でも、10人いれば10通りの人間が生まれる。


一郎は数学が得意。


二郎は芸術が得意。


三郎は人付き合いが得意。


四郎は誰も考えつかないようなことを考える。


それでいいじゃないか。


どうして一人の子供に、10人分の才能を要求するんだ。


一人の人間に、全員分の役割を押しつけるな。


私が子供の頃に経験したことを、自分の子供たちにまで経験してほしくないんだよ。


プロメテウスは何をしたのか


ギリシャ神話にプロメテウスという存在がいる。


人間に火を与えたために、岩につながれ、鷲に肝臓を食われ続ける罰を受けた。


なんという話だろう。


人間に知恵や技術につながる火を与えた者が、自由を奪われる。


私がこの神話を思い出すのは、知識を与えることと、その後も永遠に奉仕させられることが、いつの間にか一緒にされてしまうように感じるからだ。


私が長い年月をかけて公開してきた答えや考え方を、役立ててくれるのは嬉しい。


でも、それを理由に、これからも私が答え続けなければならないというのはおかしい。


ましてや、本人が嫌だと言っているのに、面白がって見せ物にするなんて話になったら、冗談じゃない。


私は見せ物になりたいわけじゃない。


私だって、きれいな格好をして、おいしいものを食べて、旅行を楽しみたいんだよ。


感謝なのか、娯楽なのか


人の才能を楽しむことは悪くない。


小説家が面白い小説を書けば、読者は続きが読みたくなる。


歌手が素晴らしい歌を歌えば、ファンはもっと歌ってほしいと思う。


それはわかる。


でも、本人が別のことをしたいと言ったらどうする?


泉谷しげるが別の道を選ぼうとして、裏切り者と呼ばれたという話がある。


鳥山明だって、『ドラゴンボール』以外の作品を描きたいと思うことはあった。


ファンが喜ぶからといって、作者が同じ仕事を一生続ける義務があるのか?


ないだろう。


だったら私だって同じだ。


今度は世界旅行がしたい。


ヨーロッパの美術館にも行きたい。アメリカのテーマパークにも行きたい。知らない文化を見たい。


そして、ほかの研究者が見つけた答えを読んで驚いていたい。


もう自分で全部解かなくたっていいじゃないか。


弟子が新しい問題を解決してくれるなら、私は大喜びだ。


「へえ! そんな方法があったのか!」


そう言って楽しむ人生だって、悪くないだろう。


金を稼いで何が悪い


それから、私はお金が欲しい。


はっきり言っておく。


お金は欲しい。


印税で暮らして、世界旅行をして、気に入った研究者に投資して、その研究が成功したらまた投資する。


そんな生活がしたい。


それの何が悪いんだ?


才能を商売にすることは、別に恥ずかしいことじゃない。


誰かが私の作品を仕事に利用したいのなら、きちんと条件を提示して契約すればいい。


正当に報酬が発生する仕事なら、ちゃんと払ってほしい。


月5万円程度の収入で生活している人間に、いくら能力があるからといって、無限に働くことを期待するな。


時間だって体力だって限られている。


それに、私自身はもう、そんなに長く頑張り続けたいと思っていないんだ。


苦労を美徳にするな


日本には、苦労を美談にする人がいる。


苦労したから成長した。


我慢したから強くなった。


苦労を糧にしろ。


うるせえよ。


苦労した結果、何かを学んだことはある。


でも、だからって、その苦労が必要だったことにはならない。


苦労しなくても、もっと楽しく、もっと幸せに生きられたかもしれないじゃないか。


それなのに、どうして苦労したことをありがたがらなきゃいけないんだ。


私は問題を解くのは好きだけど、苦しむことが好きなわけじゃない。


幸福になるために問題を解いているのであって、問題を解くために不幸になりたいわけじゃない。


そこを勘違いしないでほしい。


私は私の人生を生きたい


何年も同じことを言っていると、もう何を説明しても伝わらないんじゃないかという絶望感が生まれる。


私は特別扱いしてほしいわけじゃない。


私も子供たちも、一人の人間として尊重してほしい。


それだけなんだ。


人間なんだから、疲れることもある。


寂しいこともある。


腹が立つこともある。


何もしたくない日だってある。


それを天才だからという理由で否定しないでほしい。


誰かのために役立つことは楽しい。


でも、自分のために生きることだって楽しいんだよ。


私はその両方を楽しみたい。


そして、そろそろ後者の割合を増やしたい。


プロメテウスが人間に火を与えたのなら、人間はその火を使って自分たちで工夫すればいい。


いつまでもプロメテウスに頼ってどうする。


火はもう渡した。


使い方も教えた。


あとは自分たちで考えろ。


私は世界旅行に行きたいんだよ!


――天才パンダ

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