目を覚ます度に
目を覚ます度に、
何かを忘れている気がする
体はある
手も、足も、胴も、頭もある
持ち物は多くない
財布、携帯、鍵があればいい
昨日の私と同じ
一昨日の僕と同じ
いつも通り
でも、──何か足りない
記憶は連続している
どんな風に1日を過ごしたか
どうやって眠りについたか
ちゃんと覚えている
風景、
自分の感情、
大事な思い出、
嫌なこと、
全部、全部
アルバムに仕舞った写真みたいに
大切にすることも
捨てることもできず
焼き付いてしまって。
「忘れることができない」
それは呪いのはずだった
一歩先に進んでも
繋がれた家畜のように
過去の意思に縛られている
流れのある一点が楔で縫い止められて
その半径でのみ行動できる
時間軸に沿って直線上に
山陵に沿って脈々と
軌跡を描いたら鎖のように
あるいは二重螺旋のように
峠に着いて振り返れば
そんな景色が背後にあった
──ならば、それはもう。
私を縛る鎖であり
私を守る命綱
──そんな風に思えたなら。
コルクボードに貼り付けた
忘れざるものの結晶片を
鼻唄に乗せて軽々と
風船みたいに、窓から空へ
そんな小人が住んでいる
心の部屋の片隅に
シルキーみたいな世話好きが
夢の世界で働いている
今日も私は目を覚ます
微睡の中に記憶の砂を零しても
悲嘆に暮れたりはせず
その砂がダイアモンドのように
煌めきを残しながら
内燃機関の燃料として
今日も私を歩かせてくれる




