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4.異世界のメカニズム

「そのダニエル教授って、どんな人なんだ?」

「どんな人と言われましてもですね…特に会話した事ないですし、

 実験とか発表の時しか見ませんのでなんとも」


いまいち研究室とか教授とか、そういうのがわからない。

そもそも俺の最終学歴は高校生なわけで、

そういった話は大学とか就職してからのものだろう。


「私が知っているのは、先ほど言ったように遠隔魔導技術…

 えっと、わかりやすく言うと遠く離れた場所から魔法を送ってですね

 別の魔導装置を動かす、といった技術のすっごくえらーい人なんです」


ライラが身振り手振りで俺に遠隔魔導技術なるものを伝えてくれる。

彼女の華奢な手足に女性らしい体躯と端正な顔つき、そして眩しく大きな瞳。

女性に耐性らしいものがない俺はそれらについ見とれてしまいそうになる。


「それで、この証明書は教授から直接手渡しされる大事なものなんです。

 そうやって教授が選んだ研究員であると認められるわけですね」


彼女は自慢げにカードを取り出しながら語る。

にんまりと笑みを浮かべるそのドヤ顔はエルを思い出す。


こいつの頭もつついてやろうか。

流石に今はしないが、もし全部片が付いてもう少しだけ仲良くなれたら

つい手が滑ってしまうかもしれない。


「…しかし、それだけだと流石に手がかりにならんな。

 何かもっと知ってそうな人は…」


とはいっても俺の人脈など限られている。

イズモやレリィには頼めないだろう。メイも研究区間には疎そうだ。

イワミにこれ以上迷惑をかけるわけにもいかない。だとすると…


「あっ、いた。丁度いい感じの人が」

「えっ、あ、はい?」


閃いた俺に事情がわからないライラが反応する。

そういえばいるじゃないか、研究区間の事に詳しそうな相手が。


「エル。こっから前いったあの研究所までどれくらいかかる?」

『今からですと言って屋敷に戻る頃にはギリギリ夕食時でしょうか』

「そんなにか…。まぁ仕方ないな」


結構遠かったしな、ケンタウロスの足でなければそれくらいかかるだろう。

そうと決まれば俺は今から出る事にした。行動するなら早い方がいい。

そうして席を立つ俺にライラが驚く。


「あ、あれ? もう行っちゃうんですか…?」

「えーっと、ちょっと用事ができたというか」


さっき彼女は初めて人を上げたと言っていた。

俺はそんな初客人がこうもあっさり帰っていいのかと自問自答する。

その結論を出す前にライラが、


「じゃ、じゃあそこまで送りますね。この辺りは初めてだと思いますので…」


そう言って彼女も立ち上がる。

なんというか少し申し訳ないがここで一旦ライラの部屋を後にする事となった。

今度またちゃんと時間を用意して来よう。

その時はレリィやイズモも一緒に。



俺とライラは一旦通りに出て話しながら進む。

来た時よりも人通りは多くなっている。

その中、ライラは顔を隠しながら歩いていた。


「どこに行きたいんですか?」

「えっと、向こうの方にある変な塔の建物…でわかるかな」


俺はフロレンのいた研究所を精一杯表現しようとした。

しようとした結果貧弱な語彙を晒してしまう!

もう少し国語の勉強しとくべきだったな。


しかしそれで充分伝わったようで。


「えぇ! フロレンツィーア博士の研究所ですか!?」

「そ、そうだけど…何か不味い?」

「不味いってそんな…。あそこに出入りできるですか?」


これで多分できるんじゃないかな。

俺は懐からフロレンに渡された白いカードを取り出す。

彼女はそれを「うわ、ほんとだ…」と驚きの表情で見ていた。


「あなた、一体何者なんですか…?」


何者と聞かれてもただの人間としか答えようがない。

あるいはイワミの客人でもいいかな。

そう思っていると、前の方から大きな音がする。


ギィィィィイイイイ、ガッコンガッコン。ギィィィイイイイ……


前方には馬車も進むことができる大通りがあった。

そこを何か黒い箱みたいなものが騒音を立てながら走っている。


それにはこちらから見ると三つの車輪が地面と接していた。

恐らく対面にもあるだろう。それらが回転することで前に進んでいる。

その上には馬車の荷台に装甲を与えたような部屋が置かれていた。


俺はこれを自動車の仲間と少し時間をかけて理解した。

その窓から、見た事のある顔が覗く。

丁度会いたかった人だ。


「やぁシュン。お久しぶり」

「あ、久しぶりです」


独特のモノクルを付けた白衣の蜘蛛。フロレンツィーアその人だ。

とんでもなくいいタイミングででてきたな…


「これから研究所に戻るところだけど。

 何か小生に用があるなら乗っていくかい?」

「じゃあお願いしようかな」


フロレンは蜘蛛の脚で器用に扉を開ける。

そこから梯子がぱたんと降り、これを登れという事らしい。


ライラの方を見ると何故か固まっていた。

この謎の機械にびっくりしてしまったのだろうか。


「じゃあライラ、また今度な」

「え、あ、はい…」


茫然自失といった感じのライラに挨拶すると俺はその車?に乗り込む。

中は意外と広く、椅子だけでなく机や小物も用意されていてなかなか生活感があった。

ただフロレンがちょっと…主に下半身が…大きいので、

少しだけ手狭に感じない事もなかった。


「フロレンツィーア博士と普通に会話しただけじゃなく…

 貴重な魔導車両に誘われるって…一体何者なんですか…」


フロレンが再び脚で扉を閉める際、

向こうからライラの零すような言葉が聞こえてきていた。

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