32.魔獣群討伐作戦…2
馬鹿騒ぎが終わると、ロバートさんを始めとする数名のケンタウロスは
それぞれ二人か三人で馬車を引き、
俺たちは各々それぞれの馬車に乗り込んだ。
俺が乗った馬車には他にメイとさっきの猪のお兄さんに
猫っぽい耳と尻尾のあるお姉さんの四人が乗っている。
「いやぁ、しかしメイが人間を選ぶとはなぁ」
「そうだにゃー。普通の人じゃあ無理だとは思ってたけど。
まさか噂の人間さんを捕まえつにゃんてにゃー」
猫のお姉さんは猫アピールがかつてない程に激しい。
語尾にはにゃーってつけるし話してる途中にもにゃってあるし。
うちのメイは語尾にウサとかつけない よ。
「人間、ええっとシュンっていったか。
君は多分イワミさんの屋敷で働いてからのメイしか知らんだろう。
昔のこいつかなり凄かったんだぞ~」
「え、ちょっと、昔の話するのやめません?」
珍しくメイが慌てている。
流石の彼女でも自分の黒歴史(中二病みたいな?)の話をされるのはキツイらしい。
けどメイの昔話は聞きたい。もの凄く聞きたい。
「昔のメイって、どんな感じだったんですか?
一応戦闘中の顔みたいなのは見ましたけど…」
「なら話が早いな。あれをもーっとぶっきらぼうにして、
しかも全部一人でやれるとか言うような奴だったんだよ」
「実はそれ もみんにゃを心配しての事だったんだにゃ。
根はすっごく優しい子なんだにゃー」
「あの、この話やめません? もっと建設的な話しましょうよ」
話を聞いているとヤンキーだけど実や優しいみたいな、
そんな感じの人物像を思い描く。
なんというか、結構メイらしいんじゃないだろうか。
当の本人は顔を真っ赤にして話を逸らそうと必死だ。
「自分が他のムーンラビットとは違うところ気にしてたり
可愛いところもあるんだにゃ。大切にしてやってくれにゃ」
「あぁ、もう…恥ずかしすぎます……」
普段余裕ありげな態度で過ごしているメイが
こうやって必死になる姿はなんと いうかとても可愛い。
しかしそろそろ彼女も涙目になってきたので
一旦この話は切り上げる事となった。
そのまま馬車は森を抜け、草原に出る。
そこですべての馬車は一旦停止し、皆は降りて一カ所に集まっていく。
ここから担当毎に別れて配置につくようだ。
「あと2時間ほどで北方向から魔獣の群れが通過します。
第1と第2班は両サイドから群れを刺激して散らせてください。
第3と第4班は第1班の、第5と第6班は2班の後方に配置してください」
帽子(獣耳を通すための穴があいている!)を被った人狼の女性が指揮を執る。
直進する魔獣の群れに対して横から攻撃して分散させ、
それを各個撃破していく作戦のようだ。
「わたしたちは4班のようですよご主人様。
前衛が倒し損ねた魔獣を倒す仕事なので楽と言えば楽ですね。
ですが…」
初心者という事で配慮されたのか、そこまで大変な配置ではないようだ。
しかし、メイは最後に真剣な顔つきで、
「何かのアクシデントがあった場合、
そのフォローをするのがわたしたちです」
「アクシデント? それって…」
「前衛のミスや予想以上の数の魔獣がこっちに来た場合が殆どですが…
一番重要なのは、ハーレティクスが襲来した時の時間稼ぎ役です」
また君か。厄介な奴だよハーレティクス…
こういった大規模な作戦の役割の一つとして、
あいつらへの対策があるという事は、
それほどまでに異世界の人たちに対して大きな障害となっているのだろう。
『その時はわたくしとシュン様が解決致します』
「あぁ。まぁそれくらいしか俺たちにできる事ってないからな」
俺の出会った異世界の人たちはみんな働き者で優秀で、
正直なところ俺ができる事なんて限られていると思う。
それでもそんな彼らを襲う災いが俺とエルにしか倒せないというのなら、
俺はここに暮らす人たちのためにもそいつらをできるだけ倒したい。
「それでは移動しましょうかみなさん」
第4班のリー ダーを任されたらしいミノタウロスのお兄さんが先導する。
本番前の緊張はまだ慣れない。
しかし慣れ始めたくらいが一番危険とも言うからな、
この感覚を大事にしていこう。
魔獣は牛に強靭な足と羊みたいなモコモコの毛を付けて
更に鹿の角を生やしたような割と俺がいた世界でも探せばいそうな…
いやちょっと盛りだくさんすぎるかな。そんな見た目だった。
「ブオオオオオオオオ!! ブオオオオオオオオオオ!!」
容姿は割と牧場で草を食んでいてもおかしくないのだが、
その群れの勢いたるや土砂崩れを想像させる程だ。
そんな群れに向かって炎や槍や色々なものが飛んでいく。</ div>
ヒュー、ドゴォォン! バシュゥゥゥゥ…
ドガァッ! パァァァァン! バジィィィイイ!!
その振動は高台で様子を見るこちらまで伝わってくる。
なんだろう。こんな場面で不釣り合いな例えかもしれないが
大きな花火が爆発して体の底から震える感覚に似ていた。
「まるで戦場だな…」
『こちらの世界では魔獣の存在から他の集落と抗争する意味が薄いので、
実質的にこれが彼らにとっての戦争のようなものですよ』
「なるほど、それもそうか」
攻撃を受けた魔獣はある個体は倒れ、別の個体は怒り、
それぞれ群れの流れから外れていく。
第1班や第2班の布陣 に突撃していった魔獣はハチの巣にされ、
体力に自信のあるメンバーにより素早く回収される。
素人の俺から見ても、かなり完璧なフォーメーションに見えた。
「ご主人様、そろそろわたくしたちも配置につきましょう」
「そうだな。人間も役に立つってところ、見せていかないとな!」
「ふふふ。ご主人様はもう十分にご活躍されてますよ」
武器の確認やストレッチなんかをしていた第4班のメンバーが続々集まってくる。
みんなの顔はやる気に満ちていて、激しい活気を感じる。
ここからが俺の仕事だ。




