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23.普通の帰路

イズモが来たことで、その場は一旦解散する事にした。

当然、ライラに再び会う約束をして。


「絶対、絶対に来いよ。逃げたら直接お前の家に行くからな」

「えぇ…逃げませんけど、そこまでします?」


言動が完全にヤミ金融の取り立てめいている。

しかしこれくらい言わないと彼女は逃げそうでもあるので、

ある意味仕方ない措置だ。


帰り道、俺・イズモ・レリィの三人は日の沈んだ町を歩く。

イズモの誘いでレリィも夕食をイズモの屋敷でとる事になったのだ。


「いやぁ、しかしまさか連日新しい娘に手を出すとはのう…」

「何だよ手を出すって」


凄い奴もおる者じゃ、とイズモは勝手に納得している。

人をそんなナンパ好きのヤンキーみたいな表現されるのは心外だ。

…まぁライラには手を出したといえば手を出したかもしれない。

捕まえた時もかなり無理やりだったし。


「ね、ねぇシュンくん」

「なんだレリィ」


俺の右隣を歩くレリィが上目遣いに聞いてくる。

現在、彼女の天使カウンターはメイとエルの喧嘩を阻止した分と、

今日のライラの話を進展させた分の合計2つ乗っている。


なんだよ天使カウンターって。


「シュンくんもやっぱり…、ライラさんみたいにおっきい方がいいの?」

「えっ」


彼女は翼を胸元に当てながら、紅潮した頬で聞いてくる。

その愛らしさといったら戦略兵器レベルだ。

エルの出すECシリーズでさえこれほどの破壊力は生み出せないだろう。


けどこれをエルに言うとまたエルがちょっと怒って

張り合いそうな気がするから言わないけどね。


「なぁレリィ。たとえ話をしよう」

「たとえ話?」


返答に困った俺はイエスとノー以外の回答を持ち出す。

それを興味深そうにレリィは聞いてくれる。


「例えば、俺が今よりずっと…そうだな。

 ケンタウロスのロバートさんくらい。

 あれくらい背が高かったら俺の事嫌いになるか?」

「ううん。そんな事絶対ないよ!」


彼女は首を振って否定する。それに従い揺れる髪も愛らしい。


「というかロバートさん知ってたんだね」「あの人凄くいい人だよ」

「うん、わかる」「俺あの人大好き」「そ、そう…」


そんな感じで少しの脱線を挟み、続きを放す。


「じゃあ逆に、俺がレリィと同じかそれより少し小さい。

 それくらいの子供だったら、どうだ?」

「えっと…」


きっとそれでも嫌いじゃない、と答えてくれるだろう。

つまりは大小など大した問題ではない。そう伝えたいのだ。

我ながら完璧な理論だ。別に答えをはぐらかしてなんかないよ?


しかし、レリィの様子がおかしい。


「小さいシュンくん…ぼくより小さくて…ちびっ子で…

 それすっごくいい…!」


彼女は小さくなった俺(幼少)を想像し、目を輝かせる。

どうもストライクゾーンだったらしい。


「もしそうだったら頑張るシュンくんを

 ぼくがよしよししてあげるね」


翼を伸ばし、それでも届かないので脚も伸ばして俺の頭を撫でようとする。

俺は腰を折って頭を下げると、レリィの翼がそれを優しくなでる。


なんだろう。こういうのは嫌いじゃない。


「なんかもう、デレデレじゃな」

『けどシュン様これ多分兄妹愛くらいにしか思ってませんよ』

「今はそれでよいかもしれんのう。

 時期が来ればどれだけ鈍感でも気づくじゃろうて」


何かエルとイズモが話していたようだが、

俺は一生懸命に俺を撫でるレリィを眺めるので手一杯で

そこまで気が回らなかった。



三人が屋敷に戻ると、


「お帰りなさいませ、ご主人様」


俺たちのただいまより先にメイの先制攻撃が繰り出される。

こんなセリフ、テレビでやってたメイド喫茶くらいでしか聞いた事なかった。

まさかそれを言われる立場になろうとは。

遠いところまで来たものだとしみじみ思う。


「えっ」


さっきの俺みたいな、理解の追い付かない場面に

出くわした人特有の語がレリィの口から漏れる。

その原因は当然メイの首輪だ。

どうもムーンラビットの首輪の意味は異世界で広く知られているようだ。


レリィは反射的にイズモの方を向く。

それを認識したイズモは静かに首を振る。

そして次に俺の方を向く。首を縦に動かすしかなかった。


「えぇ…」


その反応は驚嘆とも関心とも取れない。

しかしどこか納得も含んでいるようでごちゃ混ぜな感情を表している。


「ご夕飯はもう少しかかりますので、少しお待ち下さいね」


メイは一礼をするとそのままきちんとした足取りで厨房に向かう。

…ん? という事はさっきまで厨房にいて、

俺たちが戻ってくるのに合わせてここまで出てきたのか?


そういえばメイはメイすぎて(形容詞)忘れがちだが、

一応兎なので聴力が優れていても何らおかしくない。

俺たちの足音を感知したのだろう。


「いやぁ…もう完全にシュンの下僕じゃな…」

「うん…シュンくんのために人生を使える事が何よりの幸福って顔してたよね…」

「そ、そんなにか…?」


二人の認識が思いのほか重くて少したじろぐ。

そこまで変わっただろうか?

しかしメイが俺に向ける笑顔やその言動はとても幸せそうで嬉しそうで、

彼女たちの認識も間違っていない気がする。


「けど、シュンくん何をやったの…

 シュンくんはよく知らないかもしれないけど、メイさんって相当凄い人だよ」


それはつい数時間前に鱗片だけ知った。

俺はメイについてあまり知らない事も事実だ。

この機会に色々聞いてみるよう。


「うむ…。あやつはあれでもかなり苛烈な側面も持っておるからな。

 それを超えてどうやって契約したのかわらわも知りたい」


それも話さないといけないなとは思っていた。

俺は食事の席に移動しながら、どこからどこまで話したものかと悩む。

イワミとメイが俺を疑ってた事まで話すと気まずくなりそうだしな、

どうしたものか…

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