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22.瞳の家族

「さっきレオノールちゃんも言ってましたが…

 私の両親は北の方からここにやってきたらしいです」


「私が産まれたころには既にこの町に定住してたのもあって、

 なんでここに来たのか詳しい理由はわかりません」


それから、ライラの表情が少し明るくなる。


「それで…その、父は魔法に詳しくて…、発明とかもしてたらしいです。

 小さい頃は新しくできた魔法を見せてもらったりして…」


父の事を話す彼女は嬉しそうだった。

きっと彼女にとっても父は大切な存在なのだろう。


俺だってそうだったさ。今もそうだ。


しかし彼女の高揚は一瞬で過ぎ、また影のある表情に戻る。


「…まぁ、父が苦労しすぎたためか早死にしちゃって。

 母もその後を追うように亡くなったので今は一人ですが…」


今受けている仕打ちとか別にしても普通に可哀想なんだが。

俺も父親を失っているから、その悲しみの半分はわかる。

それだけで押し潰されそうだったのに、彼女は母親まで。


ほら、話を聞いてるレリィなんか涙目じゃないか。

俺も実は後数発で泣くと思うぞ。


しかし、この話を悲しいなぁ。という感想だけでは終わらせられない。

俺はその先へ一歩踏み出す。


「…覚えてたらでいいんだが、

 周りから色々受け始めたのはいつぐらいからかわかるか?」

「どれくらいからですか?

 物心ついたときからずっとですよそりゃあ」


さも当然のように彼女は語る。

あまりにも辛いその半生に哀れみと怒りを通り越して無力感しか湧かない。

過去に戻れる力があったのなら…


…可能なのか? エルならば。

ハーレティクスを一撃で粉砕し、致死の傷さえ治すこのスマホならば。

あまりに恐ろしい発想だが、もしかしたらという思いつきが背中を這いまわる。

それの不気味な思考は、ライラの言葉により一旦払われる。


「何回か父や母に相談したんですけど…

 その時は何故か謝られるばかりで、私もそんな二人を見るのが辛くて…」


「子供ながらに、きっとこんな眼の種族として産んで

 ごめんなさいって意味なんだろうなと察して…

 それ以降は、まぁ一人で頑張ってきましたよ」


可愛そうにな、今まで苦労したんだな。

一人でよくここまで耐えたな。

…これが他人の話ならば、そんな感想を抱いて終わっていただろう。

しかし、俺はそこで止まらない。


「…両親が直接、そう言ったわけじゃないんだよな」

「えぇ、まぁ。流石に種族を全否定するようなこと言えないじゃないですか」


俺の問いかけにライラはキョトンとして答える。

そこを詰められたことが意外だったらしい。


なんとなく、なんとなくだがある可能性が一つ思い浮かんだ。

しかしそれを解明したとしても彼女の人生は戻ってこない。

もしかしたら、それを知って彼女はより傷つくかもしれない。

ならばそれを調べる意味はあるのか?


「…あるに決まってんだろ」


彼女がそれに妥協していたとして、両親がそれを後悔していたとして。

俺には何も関係はない。

俺はただ、俺が不快に思う現状を掘り起こし、

その不快の種を取り除きたい。それだけなのだ。


なんという我儘だろう。なんと強欲なのだろう。

しかし、俺の強欲を認めてくれた人がいた。

俺の我儘を手伝ってくれるこいつもいる。


迷う必要なんて、どこにもなかった。


「なぁライラ。魔法の研究ってどういうものなのか教えてくれないか?」

「え、えぇっ? いいですけど…魔法に興味がおありで?」

「まぁ興味ならあるな。興味ならな」


実際は多分使えないけどな。魔力0だし。

しかし別に魔法の使い方がどうとか知りたいわけじゃあない。

その「研究する」という行為しのものについてだ。

と、その時、


「おう、先にでとったのかシュンよ。レリィも一緒か」


ライラから詳しい話を聞こうとしたところに声をかけられる。

それはいくつかの本を抱えているイズモだった。

…明らかに体形に不釣り合いな程の重量の本を持っているが、

彼女は軽々持ち上げているので問題ないのだろう。


「あぁ。少し騒がしくしたらライーサに追い出されてな」

「あいつもそれが仕事じゃからのう。大目にみてやってくれ」


新たな人物の登場で再びライラが顔を隠そうとする。

それを俺は再び無理やり帽子を取り上げて阻止。

イズモは慌てるライラをじっくりと見て、


「ほう、スヘル家の者か。またシュンはピンポイントで人材を確保するな」

「あれ、イズモはライラさんの事知ってるの?」

「知ってるといえば知ってるが…知らんといえばしらんのじゃ」


レリィの問いかけにイズモはよくわからん言葉で返す。

いやどっちだよ。多分同じような突っ込みをレリィも心の中でしている。

イズモは少し改まって、いつもより気品を感じる態度になる。


「初めまして、スヘル家のお方。

 わらわはイズモ・リガ・ズィーレット。リガ家の一人娘じゃ」


始めて見る彼女の態度に面喰ってしまうが、

よくよく思えばあのイズモの娘だ。これくらいできて当然か。

それより驚いているのはライラだ。


「え、り、リガ家って…あのリガ家…ですか?」

「リガ家が二つも三つもあったらみんな大変じゃよ」

「ちょ、ちょっと待て。イズモの家族ってそんな凄いのか?」


流石に話についていけなくなったので問いかける。

そういえばイズモの屋敷くらいでかい家

他にないなーくらいは思ってたけど。


「す、凄いも何も…採集最大グループと狩猟次点グループを取り締まって

 更に地下水道の管理も任されてる一大家系ですよ!!」


え…

なにそれ俺の想像をはるかに上回るくらい凄い…

ふとイズモの方を見ると相当気持ちよさげにドヤ顔を披露している。


つまりイワミはそれらの大ボスで、イズモはその一人娘。

更に言えばメイはあの「わたしが一番強い」が嘘でなければ

そんな大ボスが最も信頼を置いている懐刀…


「え、えぇ…」


全部終わった後にネタ晴らしを食らっているような、あまり馴染みのない驚き。

俺、その大ボスにあんたの懐刀俺に下さいって言ってきたんだけど…


自分のやったとんでもない度胸試しに今更気づき、腰が抜けそうになる俺がいた。

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