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9.蟻塚調査作戦…2

俺とメイは土の塔のすぐ近くまでたどり着いた。

中からギー、ギーと夥しい数の魔獣の鳴き声が聞こえる。


「じゃあ、はじめますか」


メイはスッと眼鏡を外す。

更に鞄を乱暴に蹴り上げ、中の道具が飛び出る。


「…これを使うのも、久しぶりだな」


それは見た事もない金属の塊だった。

大きな砲身に巨大なカッターが抉るようについていて、

エルの出したどの装備よりも暴力的な印象を受ける。


「精々、死なねーようについてきな!」


乱暴に俺に向かって叫ぶ。

やっぱり眼鏡を外すと豹変する系じゃないか…


彼女はその巨大な装備を片手で軽々持ち上げ、

スカートを翻し土の塔へと進撃する。


「俺たちも行くか、エル」

『了解ですシュン様。こちらが今回のおすすめです』


俺は走りながらエルをタッチする。

すると今度は完全に銃らしい見た目の武器が落ちてきたのでそれをキャッチ。

黒くゴツい容姿とは裏腹に意外と軽い。


『右手を引いてバット…えーっと、

 後ろの出っ張っているところを肩の辺りに触れさせて

 左手で前方のグリップを持つのが通常ですよ』

「通常じゃない持ち方もあるのか」

『はい。これは重量も軽く、多少は自動ロックが働くので

 適当に両手で持って乱射する方法もあります』


映画で見たような二丁拳銃がこれならできるって事か。

それは魅力的だがそこまでするとオーバーキル気味だな。

そもそも間違えてメイに当たってしまう可能性も出てくるから一丁で十分だ。


「敵の来そうな方向のアナウンスとか任せたぞ」

『はい、お任せください』


魔法も使えない、体力もない、

そんな俺は現代兵器を担いで魔獣の巣に挑む。

何もない俺にはエルだけが頼りだった。



「ギー! ギー!」


巣の中にいたのは蟻に蜘蛛の足と角を与えて

それを2m前後まで巨大化したような魔獣だった。


『シュン様、進路方向斜め上です』

「おう」


バババババ、バババ、ババババババ


『F3K-12 3式加速粒子短機関銃。対象への誘導調整を行います』


奴らは壁や天井を張って襲い掛かってくるが、

その全てはエルによって予知され俺はそれを銃撃する。


次々と発射される細い緑の光は蟻たちを一瞬で解体していく。


「しかし、あれ凄いな…」


先を行くメイの方向を見る。

巣の中は暗いが、メイの武器が大きな光を発しているため

周囲を見る分には不都合はなかった。


「エンチャント・シャープ! エンチャント・シャープ! エンチャント・シャープ!」


魔法を連続で唱えながら蟻を次々と刻んでいく。

踊るように殺すその姿につい見とれてしまいそうになる。


その彼女の前方に、ひときわ巨大な蟻が現れる。

蟻は発達した巨大な脚でメイを押しつぶそうとするが、

ひらりと交わされ巨大ナイフを胴体に差し込まれる。


「タクティカル・チェンジ! バスター!」


砲口に光が集まり、そのまま蟻に至近距離で炸裂する。

強力な甲殻を持つ蟻だったがこれには爆発四散。


蟻の赤い体液でメイド姿が染まる。


「リターン・エッジ」


新たな魔法を唱える。蟻の甲殻や内臓でぐちゃぐちゃになったナイフが

表面だけばりんとはじけ飛び、まるで新品のようになる。


メイはそれを確認すると、こちらに振り向く。


「おい、死んでねーか?」

「まだ生きてるよ」

「なら問題ねーな。行くぞ」


メガネを外して口調は変わったが性格はそこまで変わっていない気がする。

もしかすると、戦闘時へ切り替える精神的なスイッチなのかもしれない。


エルによるとこの塔は下にも掘られており、

その先に大きな反応があるとの事だ。


俺とメイはそれを信じて下へ下へと進んでいく。



「ギ、ギ、ギ!」

「邪魔だ! エンチャント・シャープ! エンチャント・シャープ!」


巨大蟻がメイを取り囲む。

それらを彼女は一撃一殺で次々とバラバラにする。

ものの数十秒で蟻は全滅してしまった。


「ここが最奥らしいな」

『この内部から大きなマナ流動を感知しました』


そこには一際大きな空洞があった。

中に何かがいる気配はするものの、そこまで光が届かない。


「さっさと片づけるぞ」

「お、おう」


先に進むメイに遅れて反応する俺。

なんだか今日はずっとこんな感じだ。



「ギィィィィィィ! ギギギギギギ!!」


空洞の中には、流れ的に予想していた通り女王蟻がいた。

その巨体は10mはあるだろうか。

大きな空洞とはいえ頭部が天井に接している。


「タクティカル・チェンジ! バスター!」


ドゴォォォォォォォォォォォォ!!


メイは女王蟻に向かって砲撃を行う。

それを受けた女王蟻はのけぞり、巨大な脚で四肢を支える。


俺もとりあえず撃ってみるが、

あまりの巨体でいまいち効いている気がしない。


「これあいつに効いてるのかな」

『ダメージは受けていますが少し威力不足ですね。

 別のを用意しましょうか?』

「じゃあ頼む」


エルの画面のアイコンを適当に押す。

細長い筒状の物体が落ちてくる。バズーカというものだろうか?

それを手に取ろうとした時、


「いってぇぇぇ!?」


右腕に激痛が走る。

痛みのする場所を見ると、30cmくらいの先ほどの蟻よりは小さいが

十分に巨大な蟻が俺の腕に噛みついていた。


「くそっ、このっ!」


俺はそいつを3発ほど殴ると顎の力が弱まるのを感じる。

そこで俺はそのままそいつを掴んで放り投げた。


「噛み千切られるかと思ったぞ…」

『対象の動きに注視していたため反応が遅れて申し訳ありません』

「あぁ、繋がってるから大丈夫だ。それよりあいつを倒すぞ」


痛む右腕を抑えながらバズーカを担ぎ、

そのまま女王蟻に向けて発射する。


バシュゥゥゥゥゥウウウウウン!!


それは女王蟻の胴体の側面に命中。

腕を弾き飛ばす。しかし、それでは終わらない。


「貰ったァ! くたばれェェェェェ!!

 タクティカル・チェンジ! エッジ!!」


そこにすかさずメイがとびかかる。

女王蟻は巨大な脚で払いのけようとするがバランスを崩し上手くいかない。

そのまま、メイは首元に振りかぶり


ズジャアアアアアアアアアアアアア!!


「ギィィィィィィィイイイイイイ!!」


ナイフでそれを切断する。

女王蟻は鳴き声をあげながらのたうち回り、そのまま絶命した。

初めての討伐任務はこうして終わりを告げた。


『群体の中核の崩壊を確認。まもなくこの群れは解散します』

「…これ、調査じゃなかったけ」


今更それに気づく俺。

調査と聞いていたが何故か巣の奥底で女王蟻を退治してしまっていた。

しかしメイが先行しまくった結果でもある。


「いや、まだ終わっちゃいねーさ」

「えっ」


メイが女王蟻の亡骸からこっちに歩く。

その眼はさっきまで蟻に向けられていたものと同じだ。


彼女は俺のすぐ前まで来て、


「まだお前が残っている」


今最も聞きたくない言葉を躊躇わず口にした。

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