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5.馬の男性を助けたい

レリィに連れ出された先は、山菜や果実を集めるグループだった。

そこで収穫量の記録をするのが俺の仕事らしい。


「本当は暇な人が空いた人がこれやるんだけどね。

 ちょうど誰も空いてなくて困ってたんだ」


彼女の説明だと、そんな感じの誰でもできる役割らしい。

そんなもんだろうなと荷台で待っていると、

大きな男がこちらにやってくる。


「初めまして、人間の方。

 私はケンタウロスのロバート・ノワ・ストーク。

 この荷台の運搬を担当しています」


大柄だが優しそうな男性だった。

ケンタウロスという言葉は俺も知っている。

確か半人半馬の種族だっただろうか。

その通り、彼は下半身が逞しい馬になっていた。


「イワミ様から話は聞いていますよ。

 この度はお嬢…レオノールを助けて頂き、本当に有難う御座いました」

「助けたなんてそんな…俺も必死だっただけですよ」


あの事で感謝されるのは何回目だろうか。

それだけの事をやったという自覚はあるものの、

繰り返し感謝されると少しこう、恥ずかしい。


「例え人間であっても、知人の恩人ともなる方を

 すげなく扱えばケンタウロスの恥。

 わからない事があったら何でも聞いてください」


なんかバイトの上司みたいだなこの人。

いや多分それは何も間違っていない。

現状、俺は一人のアルバイトだ。


「採集のグループは後から来ますが、

 私たちの方が遅いので今から出ましょう」

「わかりました」


立派な門を抜け、町から出て山道を進んでいく。

荷台はかなり重そうだったがロバートさんは難なく進む。

まさにベテランという感じだ。


「レリィ…レオノールとはどういった関係なんですか?」

「お嬢は自分たちのグループにいる古株の一人娘なんですよ。

 小さい頃からみんなを元気にしてました」


今でも十分小柄だが更に小さいレリィを想像する。

…うん、可愛いな。


「あの年ですでに皆の中心みたいな存在でして。

 少しお転婆が過ぎる時もありますが…」


彼女を語るロバートさんはまるで父親のように優しい。

父親か。少しだけ懐かしい気持ちになる。


「ですから人間の方…いえ、シュンさん。

 どうか、お嬢を宜しくお願いします。大切にしてやって下さい」

「え、あ、はい」


つい返事をしてしまったが、

何かとんでもない意味合いが含まれていた気がする…

それを考えていると、上空をハーピーが数人通過していく。


「採集のグループです。彼女たちが集めた物をこれに乗せていきます」


空を飛べるハーピーが集めて、ケンタウロスが運ぶ。

役割分担に無駄がなくかなり効率がよく思える。

因みに俺の役割は誰でもいい。


上で何か話しているようだ。俺を見ている…?


「少し進んだらそこで採集されたものを待ちましょう」


ハーピー達が少し気になりはしたが、

俺は先を行くロバートさんについていくことを優先した。



結論から言うと、仕事はクッソ簡単だった。


採集のグループが運んできたものを一旦出して仕分けして

数を記録した後にそれを荷台に分けて入れる。

俺の仕事はこれが全てだ。


しかもハーピーたちがそこまで重たい物は持てない事と

ロバートさんも手伝ってくれる事もあってそこまで体力も必要としなかった。

むしろここに来るまでの移動の方が疲れたくらいである。


更に俺の主な仕事たる記録も万が一にミスがあればエルが直してくれる。

そもそも俺いらなかったんじゃないか感がすごい。


そんな事を考えていると、ふと暫くハーピーが来ない時間ができた。

俺はやっと暇になったなとそんな気分だが、

ロバートさんはその不自然な時間を訝しんだ。


「おかしいな…。普段なら結構絶え間なくくるんだが…」

「何かあったのかもしれませんね」


思い当たるのは魔獣だろう。

どこかで遭遇して戦闘になっているのかもしれない。

…まさかハーレティクスと遭遇していたりしないだろうか。


「だといいが…何か企んでなければいいけど」


どうやらロバートさんの心配はそこではないらしい。

何か少し心当たりがあるようだ。


その時、エルが突然アラームを鳴らす。


『シュン様。南西西の方向より大きな反応が来ます』


相変わらずそういわれてもわからないので

俺はスマホを取り出し矢印の方向を確認する。


…バギィ! バキバキ! バゴォ!


そちらの方から段々と木々をなぎ倒す音が聞こえてくる。

恐らくは、魔獣だ。


「なんてこった、誰もいない時に!」


ロバートさんが狼狽する。

それに対して俺は冷静に音の方向を見つめる。


もし魔獣ではなくハーレティクスだった場合の事も考えておいた方がいいか?

魔獣ならば恐らく何の問題もなく倒せるし、

ハーレティクスなら逃げようとしても無駄だろう。


なら取る行動は一つしかない。


「この人数じゃあ危険だ、逃げよう!」

「ロバートさんは荷台を動かして、離れていてください」


そういえば、魔獣は恵みなんだったな。

あんまり派手に散らかすともったいない気もする。


「できるだけ少ない損傷で倒したい。できるか?」

『勿論で御座います。シュン様』


画面にずらりと様々な武器アイコンが表示される。

どれもきっと、この異世界には過ぎた力を持つ

恐ろしい武器ばかりなのだろう。


「人間…いや、シュン。何をするつもりだい…?」

「丁度俺にぴったりの仕事が来たみたいなので」


バギィィィ! ドガン! バッキィ!!


木をなぎ倒す音はどんどん大きくなる。

少し迷ったがここは遠距離から一方的に倒せそうな

弓アイコンをタッチする。


役割分担だ。ロバートさんが荷台を安全な場所に持っていく。

俺の貧弱な力じゃあの荷台は運べないからな。

そして俺はあの魔獣を仕留める。うん、実に効率的だ。


それぞれができる事をやっていこう。

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