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2.狐の少女には夢がある

朝食はイズモと二人でとる事になった。

メニューは果物と山菜のスープ。

スープはコクがあっておいしいがやはり味が薄い。


「シュンよ。お主がわらわに食べさせたパンやちょこれーと…

 あれらに比べるとわらわたちの食事は些か劣ると思わんか」

「いや、まぁそれはその土地特有の都合とか…」

「わらわはな。この食事の向上が必要だとも考えておるのじゃ」


イズモは時折真剣とも冷酷とも言い難い、不思議な顔を見せる。

それはきっと、母親から受け継いだ、上に立つ者としての顔なのだろう。


「食事はそれだけで皆を幸福にする。

 しかしそれが味気ないものであり続けたのならば、

 いつかただの栄養を取る作業となり果てるじゃろう」


彼女はそれを良しとしない。

幸福になるための努力を惜しまない、まさに強欲な統治者だ。


「何かアドバイスはないかのう?」

「アドバイスといえるほどの事でもないが…」


この町に来て気になった事がいくつかある。

それについて話しておくのも悪くない。


「食べられる植物を育てたりはしているのか?」

「いや、しておらんな。昔はそれをやろうとした形跡があったが、

 繰り返される魔獣の襲撃に懲りて以降はやっておらん。

 そもそも、魔獣の死体からは様々な種類の山菜が取れるからの」

「そうか、魔獣が来るのか…。じゃあ難しいかもな」


そういう事情があったのか、確かにあの巨大魚の陸戦版が

繰り返し襲ってきては作物を守る事もできないだろう。


「しかしそれも昔の話じゃ。今では町がある。大きな壁もある。

 それに、町の外であってもかなりの広さの魔獣は狩り尽くした」


そこまで言ってイズモは続ける。


「育てるなら何がよい? 適当な野草でよいというわけでもなかろう」

「俺も詳しくは知らないが…、豆や稲、後は根菜がいいと思う」


言葉が通じるか少し微妙だったがイズモはうむうむと頷く。

どうやら問題なく通じたようだ。


「稲といっても数多く存在するのう。どのような種がよい?」

「どのようなって言われてもな…」


しょうがない、ここは最新機種様の出番だ。


「エル。できるか?」

『勿論で御座います。最新機種ですから』


エルの画面が様々なイネ科の植物を表示する。

ネット回線はないのにこういう事はできるのか。


『こちらがイズモさんがパンを食べた際におっしゃっていたキビ。

 これが調理することで米と呼ばれる食材になるイネ。

 またこちらが食料の他に油などの利用法があるトウモロコシ』


画像の中を顔文字が飛び回り説明する。

イズモはそれを興味深そうに見ていた。


『そして、これがコムギ。

 …パンの原料となる食物です』

「パンを作れるのか!?」


イズモがエルを持ち上げて問いかける。

エルは強い衝撃を受けるとユニークな反応を示す本能のせいか

画面の中の壁に当たっては弾き飛ばされてを繰り返す。


『はい。シュン様により与えられたものは少し手が加えられておりますが

 こちらの世界にも同様の植物が存在しましたら可能です』

「そうか、あれを作れるのか…」


イズモは画面の中でボコボコになったエルと画面

を感極まった瞳で見つめる。


となれば、当然その次もあるわけで


「…もしや、あのちょこれーとも作る事ができるのか?」


エルの画面に太い木の実とその中身の小さな実が表示された。

これは俺も知っている。カカオの実というものだ。


『他にもミルクやバターなどの材料は必要ですが、

 恐らく魔獣から得られる物で代用可能かと思われます』


つまり


『結論から言いますと…。この植物さえ見つかれば

 チョコレートの製造は可能です』

「まことか!? まことなのじゃな!!

 よっしゃああああああああああああああああああ!!」


イズモがキャラを忘れて歓喜する。

あまりの声の大きさに食事を運んできたうさ耳メイドさんが様子を見に来る。

いやなんかすいませんね。


「こうしてはおれんな…やる事ができてしまった!

 少し早いがわらわは出かけるぞ。またな、シュンよ!」


そのまま風のように駆け抜けるイズモ。

まさか一人でカカオを探しに行ったとは思い難いが…

彼女ならやりそうである。


「しかし言いそびれてしまったな」

『何かほかに御座いましたか?』

「あぁ。もしかしたら怒られるかもしれないが…

 魔獣の飼育ってのは、可能なのかね」


聞く限り、魔獣とは肉も皮も何かしらの用途がある。

更に骨は養分となり山菜を生やすらしいから本当に隙がない。

それは狩猟採集だけでここまで進歩したこの町が証明している。


もし、そんな魔獣の中でひときわ弱くてそこそこ増やしやすい物がいて、

それを飼育することができたのなら…

この町の生活は一変するのではないだろうか。


「流石に少し恐ろしい発想だったか?」

『いえ。歴史の観点からすると何もおかしくはないと思います』


安定と供給。俺がいた世界ではどこまでもそれを追い求めたいたはずだ。

創造主の恵みだか何だか知らないが、少し楽させて貰ってもいいだろう。


そんな事を考えていると、再びうさ耳メイドが現れる。


「人間さん。お食事がお済みでしたら、

 次の予定のご案内をさせて頂いて宜しいですか?」

「あ、はい。お願いします」


このメイドさんは少し雑談に触れると独特の軽い話し方になるが

こういう仕事の部分だけは普通なので切り替えがはっきりしている。


「この後は占術の先生から人間さんのステータスを見てもらいます」

「ステータス?」


聞き覚えはあるがまず日常生活では耳にしない単語が飛んできた。

まさかこの世界ではステータスを覗けるというのか。


「はいー。わたしたちは皆、職務に就く前にそれを見てもらって、

 それから自分のステータスに合ったものを選ぶんです」


なるほど。それは確かに無駄がないな。

しかし突然RPGみたいなシステムがでてきてちょっと困ってるぞ。

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