↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/65

16.異世界神話

このお話もプロローグ2と同じく長めの話が出てきます。

「そもそもは、私たちの間で言い伝えられてきた神話が発端です」

「神話…?」

「はい。私たちがどこから来たのか、というものです」


ここまで進んだ文明を持っているならば、

自分たちの由来を示す神話を持っていてもおかしくはない。

実際に元の世界では古い歴史を持つ場所になればなるほど、

その地域ごとに異なった神話を持っていた。


「どこまで本当かもわからない、

 ただの話を信じ込むというというのは愚かに思うかもしれません。

 しかしながら小さい頃から教えられてきた私たちには、

 もはや事実のように思っている者も少なくないのです」


その内容とは、こうだ。



まず始まりに、二人の創造主がいた。

彼らは自分たちに瓜二つの姿を持つ種族を作り、

その者たちが暮らせる世界を作った。


しかし、最初の種族は数を増やすにつれ争いを繰り返し

遂には自らをも滅ぼしかねない力をも得たのだった。

その姿を見た創造主は深く嘆き、その世界から消えてしまう。


創造主は新たな世界と種族を作ることにした。

その種族は様々な姿や特徴を持ち、

そして創造主の力の欠片である魔法を与えられた。


新たな種族は姿かたちの違うお互いを思いやり、助け合い、

そして愛し合うことでゆっくりと繁栄していった。


創造主は最初の世界では、その種族の敵となる生物を用意しなかったという。

そのせいで種族たちは驕り、またその憎しみや恨みを同じ種族にぶつけた。


新たな世界では、その種族を脅かす生物をあえて作った。

ある者は巨大な体を、ある者は恐ろしい鎌を、ある者は死に至る毒を。

それらは種族たちが持っていない脅威であった。


しかし、新たな種族たちはそれを協力し合い討伐した。

するとどうだろう、生物たちの体からは様々な恵みが齎されたのだ。

これに種族たちは感謝し、創造主を祭ったという。



「…というのが、私たちに伝えられてきた、純粋な形の神話です」

「人間もうダメみたいですね」


純粋な形、というのが少し引っかかるが、概ねは理解できた。

つまりこの神話における人間は力を持ち過ぎ、

自らを破滅に追い込んだ種族なのだ。


「当然ながら、現実とは違います。

 しかし私たちがあなたのいた世界を知らない以上、

 この神話を元に考えるしかないのです」


実際に自分たちを滅ぼし得る力を持っていたのは事実だろう。

しかしながら100年前に一度滅びかけたのは多分だが人間の力ではない。

イワミは続ける。


「そして私の祖母の代に、この神話は書き加えられる事になります」

「書き加えられる?」

「はい。…そちらの世界から、人間がやってきたのです」


彼女の母の代となると、60年かそこらだろうか。

異世界追放刑がいつから執行されているのかは知らないが、

その頃には人間はある程度復興していただろう。


「その人間は恐ろしく狂乱した様子で、襲い掛かったといいます。

 幸い負傷者は少なかったものの最後には心中し、

 その姿は当時の祖母やその仲間に強く印象に残ったのでしょう」


地獄と聞いていた異世界で精神的に限界の状態だったのだろう。

俺もエルや、イズモにレリィがいなければそうなっていた可能性は十分にある。


「それ以降、先ほどの神話に一文が加えられました。

 創造主の寵愛を持たぬ最初の種族は、

 未だに新しい種族と世界を妬み、恨んでいる…と」


今更死んだ人間にとやかく言うつもりはないが、

もしその人が凄く優しくてここの人たちに受け入れられていれば

神話は変わり、俺はもうちょっと楽できたのかもしれない。


「…さて、これで私たちが人間を警戒している理由はわかったと思います。

 現実にはあなたは見ず知らずのイズモを助けてくれる、心優しい方でした。

 古い認識は早急に改めなくてはなりません」


彼女はこちらに優しい笑顔を向けながらそう言う。

別に心優しくなんかないぞ。

俺は自分も殺されそうだったから動いただけで。

しかし、うむうむと可愛く頷くイズモを見るとそれを口に出し辛くなる。


「何か質問は御座いますか?」

「じゃあ、一点だけ」


この神話には明らかに一つ、わからない点がある。

あの巨大魚と遭遇したからこそこの疑問を浮かべる事ができるのだが。


「神話にある恵みになる生物っていうのは、

 俺と二人が地下水道で出会った巨大な魚みたいなので間違いないですよね」

「はい。他にも様々な姿を持ち、その多くが私たちと敵対しています。

 私たちはあれらをまとめて『魔獣』と呼んでおります」


魔獣、まさにそんな感じだ。

更にイワミは「あの魚の身は美味で、また鱗は装備や食器になります」と続けた。

あれは本気で食べれるものらしい。

しかし、本題はここからだ。


「じゃあ…同じく俺と二人が遭遇した、あの白い怪物…

 あれも、魔獣なのか?」


気になるところはそこである。

あの巨大魚と白い怪物には相違点がありすぎる。


まず俺の知っている生物の特徴を持つ巨大魚に対して、

記憶のどこにも類似する存在のない怪物。


次に魚は死んだあと切り分けられ最悪俺の目の前に並ぶが、

あの怪物は俺とエルが消し飛ばしたせいもあるが

そもそも何かの役に立つとも思えない。


そして最後に、これが一番重要なのだが…

頑張れば勝てそうな強さか、

あまりに規格外すぎてそんな発想の浮かばない絶望か。


少し考えて、イワミは話始める。


「それに関しては、二つ目の質問と関連するところもありますが…」


その表情はあまりにも暗く、思い出したくもない存在を

事細かに語らされているようだ。


「結論から言いましょう。あれは神話から逸脱した存在。

 私たちはハーレティクスと呼んでいます」


ハーレティクス。その聞きなれない言葉に異質なものを感じる。

しかしながらあの怪物を表すには丁度よい言葉だとも思えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。