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11.地下水道の魔獣

「足元に気を付けるのじゃぞ。今明かりをつけるからな。

 白光流・一の形。先照明光」


イズモが短く技を唱えると、彼女に手元に光の玉が現れる。

それは俺の知る限りどの電球よりも明るく力強い。


真っ暗だった洞窟の中がかなり先まで照らされる。


「凄いな、まるで魔法みたいだ」

「うむ。わらわの使う魔法は九尾流といってな…」


おい待て待て待て。当然のように魔法だと認められてしまった。

魔法みたいな光景は何度も見てきたが、

それが当然みたいな認識だと流石に驚く。


「魔法って、こっちじゃ普通なのか?

 俺には全く未知の存在なんだが…」

「なんじゃシュンは魔法を知らぬのか。

 今までどうやって生きてきたんじゃ」


一つ知らないだけでどうやって生きてきたとまで言われたのは初めてだよ。

異世界では魔法が空気や水のごとく当たり前の存在らしい。


「魔法を使う源の魔力は誰にだってある。

 そうじゃ、向こうについたらシュンにも魔法を教えてやろう」


え、俺魔法使いになれるの!?

その提案に少しわくわくする俺。心がお伽噺に憧れていた頃に返るようだ。


「きっとシュンくんなら凄い魔法が使えるよ!」

「どうだろうな…けど日常生活が楽になるレベルの魔法は使いたいな」


目を輝かせるレリィと現実的な範囲で用途を考える俺。

実際に使えるかどうかはわからないが夢を抱くくらいは別にいいだろう。



洞窟の中は涼しく、地上から染み出た水が滴る音だけが響く。

足元はボコボコでしかも濡れているためよく滑るが、

イズモが周囲を照らしてくれるおかげで問題なく進むことができた。


そこで、今まで一本道だったところが突然二手に分岐する。


「これはこっちじゃな。ついてくるのじゃ」

「反対側には何があるんだ?」

「何もないぞ。すぐに行き止まりじゃ」


RPG的な思考回路で通っていない道が気になる道が気になる俺。

しかし現実は行き止まりに宝箱が置いてあるなんて事はない。


『あっ…』

「どうしたエル。何か近くにいるのか?」


先行するイズモについていこうとしたところでエルが声を出す。

しかしそれは自信がないのか、戸惑っているように感じる。


『いえ、何もありません…少なくとも、今は』


エルには珍しく言葉を濁す。一体何を見つけてしまったのか。

しかしそれについて言及するつもりはない。

エルが今ではないというのならきっと今必要な事ではないのだ。



そこから更に進むと、岩で囲まれた洞窟が終わり、石レンガの通路に出た。

完全に人工物である。


「もうこの辺りからは町の地下じゃな」

「地下に道があるのは知ってたけど、外まで続いてたんだね」


どうやら町は壁だけでなく地下空間まで持っていたようだ。

当然のように使われる魔法といい、異世界の技術力は侮れない。


「凄いな。隙間なくきっちり埋められてる」

『石を切り分けた後研磨し、更に接合部を魔法で融和させる事で

 セメントなどによるつなぎを用いらず組み立てられています』

「お、今の解説はなんとなくわかるぞ」

『有難う御座います。これからも一層精進します』


知識量の次元が二つか三つ違うエルの話は全く分からない事がある。

今回はそんな俺に合わせてくれたのか、

俺の知っている単語だけで説明してくれた。


「シュン、レリィ。地下水道についたぞ」

「ここまで来ればもう壁の中だね。ようこそ、ぼくらの町へ!」


レリィは歓迎してくれているがここは地下だ。町に来た感じはしない。

しかし俺はそれを言葉に出すほどの余裕はなかった。


なんと、水道施設まであるのか。

俺が驚く様子を見てイズモが自慢げに話しだす。


「これは近くの湖から直接引いているのじゃ。

 このあと流れた先で大きな石や動物を取り除く1次浄水施設、

 細かい汚れや毒素を取り除く2次浄水施設と続くのじゃ」


その言葉を聞いて俺の驚きは更に深まる。

水を引くだけでなくそれを複数に分けて浄水する、

それはまさに俺が過ごしていた世界と一緒だった。


「ふふ、シュンは水道を見るのは初めてか?」

「いや…俺のところはもっとすごかったよ。

 浄化に施設六個くらい使うし、湖とか自分たちで作っちゃう」


小学生くらいの時に教えられたうる覚えの知識で答える俺。

イズモはなんじゃとー! と少し驚いていたようだが興味もあるようだ。


「そのうちエルから詳しく聞いてみるか。なぁエル」

『…シュン様』

「おう、どうした?」


エルの口調が真剣なものとなり、一旦足を止める。


『西南方向より、高速で接近する存在があります』


同時にスマホの画面に矢印が表示され、俺はその方向を向く。

水道の流れてくる方…つまりは、湖の方角だ。


バッシャアアアアァァァン! バシャァァァァン!!


とてつもなく大きな水しぶきが上がっている。

何か巨大なものが泳いでいる。


「二人とも! 何か来るぞ!」


俺は二人に警告する。同時にイズモとレリィも気づいたのか戦闘態勢を取る。


またあの恐ろしい怪物だろうか?

もうイズモとレリィが傷つく姿は見たくない。

いざとなれば俺とエルが二人を守り、全て倒す。


「グオォォォオオオオオオオ!!」


それはあまりに異様な魚だった。

目が正面にいくつもあり、ヒレらしき部分は虫のような足が複数生えている。

開いた口には多数の牙がありその中には蛇のように長い舌が見える。


率直な感想を言うと、気持ち悪い。

兎に角目がダメだ。蓮コラそのもの過ぎて生理的な不快感を感じる。


俺が目の前の巨大魚について観察していると、

前にイズモとレリィが身を乗り出す。


「大丈夫なのか? 二人とも!」


もしあの魚が白い怪物のような…

絶対的な力と恐ろしいまでの存在感を持つ相手ならば声などかけず

真っ先に突っ込んでイズモとレリィを守っただろう。


しかし、目の前の魚にはそれを微塵も感じない。

ただの気持ち悪くておっきい魚だ。


「任せるのじゃ!」

「これくらい、らくしょーだよ!」


「ギャアァァオオオオオオオン!!」


再び魚が咆哮をあげる。

それが合図かのように、二人は一斉に飛びかかった。

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