12.狐の少女&翼の少女は普通に強い
「まずはわらわから行くぞ!
赤火流・四の形! 身焦火球!」
最初に行動したのはイズモだった。
彼女の右手に炎の球体が現れ、それを勢いよく投げつける。
それは見事巨大魚に命中した。
ドゴオオオォォォォォォォォォン!!
巨大魚の体が爆風に包まれる。
しかし、
「グオオオオォォォォォオオオオ!!」
その勢いは衰えない。
命中したと思われる場所は焦げ付いており、
その周辺の鱗は無残にも吹き飛び、焼け爛れている。
効いてないといよりは恐ろしくタフなのだろう。
「次はぼくの番! ヴァン・トラシャート!」
イズモの攻撃にレリィが続く。
低空を飛びながら翼を大きく振り上げ、そのまま高速で下ろす。
それと同時に大きな風の刃が現れ、そのまま巨大魚へ直進する。
「グオオオォオオオ!!」
ぼうっ!
対する巨大魚は口から自分のサイズ相応の水球を発射した。
風の刃に比べれば遥かに遅いものの単純に質量の差がでかい。
そのまま二つの攻撃はぶつかるが、
「ぼくの方が、強い!」
バシィィィィィ!!
その通りだった。
レリィの出した風の刃は水球を真っ二つに切り裂く。
軸を失った水球はそのまま地面に落ち、水飛沫となって消える。
一方の風の刃は高速で巨大魚に到達し、血肉を裂く。
「ギャア、ギャァァァァアアアアアア!!」
命中した場所はイズモが火球を爆発させたところであった。
恐らくは合わせたのだろう。
巨大魚は先ほどとは違い、大いに苦しみその勢いは落ちる。
「ギャァァァ!! グオオオオオオ!!」
巨大魚の口にある舌のような部位から高速の水が発射される。
テレビで見たウォーターカッターというものに似ている。
それはレリィを狙ったようだが、彼女は巧みな飛行技術で容易に回避する。
「おぉ、なんか勝てそうだぞ」
『はい。わたくしの観測でも特に問題はないものと思われます』
やる事のない俺はそんなのんきなことを言っていた。
「赤火流・五の形! 壁壊爆槍!!」
巨大魚がレリィへと攻撃している隙にイズモは次の攻撃準備を整えていた。
今度は右手に炎の槍が現れる。
また投げるのかと思いきや、彼女がそれを勢いよく突くと先端が射出される。
レリィの刃ほどの速度ではないがかなりの速さで進み、
更に誘導でもあるのかわずかにホーミングしながら巨大魚に刺さる。
そして、一瞬の間の後爆発。
ド、ゴオオオオオォォォォォォォォン!!
「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
地下水道に爆発音と巨大魚の悲鳴が響く。
その音は俺の耳にとって地獄めいている。
あまりのうるささに耳を塞いでいると、煙が晴れ満身創痍の巨大魚が現れる。
「グオオオオオ…!! グオオオ!!」
さっきの爆発により大量にある目玉のうち半数はつぶれ、
さらに口は裂け牙もあらぬ方向に曲がったりへし折れている。
それでも、巨大魚は進もうとする。
「トドメを刺すぞ、レリィ!」
「わかったよイズモ!」
レリィがイズモの肩を掴み、素早く飛翔する。
そしてそのまま翼を交差させ、
「ショック・イガズィー!!」
技名を叫ぶとともに半球の壁が出現しその場に滞空する。
更にレリィは後ろ方向へ回転しながらイズモを空中で放す。
「赤火流・六の形! 地崩劫火斬!!」
イズモの右腕が燃え盛り、それを切り裂くように振るうと
そこから炎の衝撃波が生まれる。
それは先ほど設置された壁に接触し…
「「必殺! フェニックス・バスター!!」」
そのまま合体・変化し巨大な炎の鳥となり襲い掛かる。
凄い火力と壮観な見た目で俺も思わず感嘆してしまう。
「おぉ、すごい! 合体技だ!!」
男はこういうの好きだから仕方ない。
巨大魚は虫の足を二本振りかざしそれを食い止めようとするが…
バチィイイイイイイイイ!!
翼の部位が激しく爆発し虫の足を吹き飛ばす。
そしてそのまま巨大魚に命中。
ドッッッカァァァァァアアアアアアアアアアン!!
「グオオオオォォォォォォ……」
赤い爆発が巨大魚の全身を飲み込む。
先ほどよりも強力な爆風でこちらまで吹き飛ばされそうになる。
しかし今の一撃が致命傷になったのか、巨大魚は停止する。
「やったねイズモ!」
「ふふん、わらわたちなら当然じゃ」
降りてきた二人は無傷であり一先ず安心する。
本当に俺の出番なかったなぁとしみじみ思っていると、
『シュン様、まだ終わっておりません』
バットみたいなアイコンの上に『おすすめ!』マーク。
エルの画面を見て俺は全てを察した。
「やったよシュン! これくらいの相手だったらぼくたちでも余裕だったね」
「どうしてもというなら褒めてもよいのじゃぞ?」
笑顔で近づく二人に俺も笑顔で向かう。
ただしエルの画面をタッチしながら。
「お前らすげーよ。あんな一方的に倒すなんてな…
だけど、少しくらい俺にも手伝わせろ」
そのまま二人の横を過ぎ去る。少し驚いたようなレリィとイズモ。
向かう先は巨大魚の死体。
次の瞬間、巨大魚の内側を食い破るように小さな別の魚が飛び出る。
「シャアアアアアア!!」
かなりの速さだ。もし二人があのまま歩いていたら危なかっただろう。
しかしそんな事は許さない。俺の前で二人を傷つけることは…
「絶対に俺が許さん」
俺の手に上から降ってきたバットが握られる。
野球や小中高と授業でやったから少しはわかるぞ。
ルールはそうだな…
『PP-8 クレーター製造機。こちらの火力が勝ります』
ドゴォォォォン
確かこうやって飛んでくるボールに振り下ろして潰すんだろ? 違うか。
巨大魚の中にいたミニ魚は衝撃で抉れた地面に
ネギトロめいて盛り付けられていた。
「まさか隠し玉があったとは…わらわもまだまだじゃな」
「またシュンくんに助けられちゃったね…」
自らの詰めの甘さを悔いるイズモと少し落ち込むレリィ。
二人を慰めながら俺たちは地下水道を進む。
出口はもう少しだ。




