鼠の輪は王と呼ばれる
ログイン。
まずはじめにコピーした友人のIDをIDでフレンド申請の欄にペーストして検索する。
『犬dog』
これが友人だろうか。名前をタップして申請するを選ぶ。
『犬dogへ申請をしました』
これでいいかな。
『申請が承認されました』
申請したというシステムメッセージがでた数秒後に、承認されたというシステムメッセージが表示される。はやいわ。
直後『フレンドからメッセージが届きました』と表示されたのでフレンド欄からフレンドメッセージを開き見てみる。
『名前てきとうだなw今どこいる?迎え行くわ』
ふむ。迎えに来てくれるのか……なんて言おうか。場所がよく分からないんだよね。
とりあえずわかっている範囲で返事を返す。
『名前は別になんだっていいでしょ』
『場所はよくわかっていなくて、街のマンホールから入った下水道の休憩エリアにいる』
メッセージを送るとすぐにメッセージが返ってきた。
『下水道の休憩エリアか……複数個所が該当するんだよな。探すと面倒くさい事になりそうだから、下水道のボスエリアまで行ってくれ。水が流れる方向にいけば着くからさ、そこで拾うわ。』
『わかった』と返事をしてから休憩エリアを出る。
水の流れる方向……右から左へ流れているから来た方向に戻ればいいんだ。……戻るのか。
少しの面倒くささを感じながらもダーティラットをサモンして来た道を戻る。
◇◇◇◇◇
代わり映えのない景色、魔法無しでも倒せるようになったダーティラット。
たまに出てくるエコーバット、ダークを使って一匹倒して自らを囮にシャドウスパイクで一掃。
慣れたものだよね。シャドウスパイクが暗い所ならどこでも置ける魔法だと気づかなければもっと苦労していたと思う。
『ダーティラットlv3を倒しました』
『汚鼠の毛皮を1個手に入れた』
『経験値を10手に入れた』
lvが上がったおかげでサモンしたダーティラットが、一匹で勝手に倒してくれる。楽だ。
そう思っていると聞き慣れない音が聞こえてきた。
カサカサ カサカサカサ
なんとなく予想ができる。下水道、カサカサと表現出来そうな擦音。
「チチッキチチチチ」
「うわぁ、虫慣れしているけどここまで大きいとキツいね」
長い触覚、艶のある焦げ茶色の長躯、棘のある脚。ゴキブリだ。
『グラトニローチlv32』
所謂、徘徊ボスと呼ばれるキャラらしい。
即座に距離を離し杖を構え、ダーティラットに命令をする。
「ネズミ君!ヘイト頼むよ!」
「ヂィア゙ァァァ」
ダーティラットが真っ直ぐ走って行き、近くになったら不規則な動きでグラトニローチの足の間を駆け回りつつ噛みつき攻撃を始める。
自分のlvは9、ダーティラットは7。かなり絶望的な戦力差だ。だが、勝てなくは無い。結局こちらが死なずに相手が死ねばいいのだから。
「シャドウスパイク、シャドウスパイク」
シャドウスパイクを2回放つ。杖の先から小さな粒が5粒、2回、ランダムに散らばる。下水道は常に薄暗くシャドウスパイクの設置条件が水場以外の場所すべてで満たされている。
これで引きながらダークで殴れれば常時ダメージが発生しながら戦闘ができるはず。
「ダーク」
一発ダークを放つ。
ボワッとした音が当たっていることを証明するが効いている気配がない。グラトニローチは足に噛みついているダーティラットを無視してコチラに歩み寄ってくる。
「無視出来るくらい効いてないんだ……かなりきついね。ダーク」
歩みに合わせてゆっくりと後退しながらダークを放ち続ける。
◇◇◇◇
十分くらい続けただろうか。グラトニローチが一度大きく仰け反った後、動きを大きく変えた。
「キィーーキィキィー」ブブブブブブ
グラトニローチが高音で鳴きながら翅を羽ばたかせ始めた瞬間、音もなく目の前にグラトニローチの顔が現れたと思ったら吹き飛ばされていた。
「っつぅ」
地面に叩きつけられ鈍い衝撃を食らう、HPは9割持っていかれた。ダーティラットはどこにいった?
「ヂァ……」
地面に頭から落ちヘタれた体勢のまま短く鳴きポリゴンとなって砕けていった。
「あぁ……だめかも知れないなぁ」
体勢を直し杖を構え直す。視界の先にグラトニローチは再び高速突進をしようとはばたいている。
「デスペナルティ嫌だなぁ……ダーク」
確定している死を前にペナルティのことを考えつつダークを放つ。飛んでいった黒い球はやはり直撃するが怯むほどに効いてはいない。
だめだね。
諦めて死ぬ事を受け入れる心の準備をしていると声が掛かった。
「お~い!担々麺!俺だよ!犬dogだよ!運良く会えたなぁ!!」
声の方を向くと反対側の道に純白の全身甲冑を着て青いマントをつけているプレイヤーがいた。頭上には緑文字で犬dogと表示されている。
「最高のタイミングだよ!助けて!」
「あ?あぁ!ゴキブリとやり合ってんのか!まかせろ!」
そう言うと反対側の道からジャンプでこちらに跳んでくると同時に、取り出した片手剣でグラトニローチを一撃で葬った。
「つよぉ」
「当たり前だろ。lv250だぜ?」
笑いながらそういいながら、黒い液薬を渡してくる。
『犬dogから混沌の災呪薬を1つ譲渡されています』
『受け取りますか?』
『y/n』
「なにこれ?」
「アンデッドに使うと全回復して超強化される最強デバフポーション。飲め。」
昔からこいつの命令は圧があって逆らい難い。
「了解」
yをタップして受け取りすぐに飲む。
『混沌の災呪薬を使用しました』
『地獄の悪夢が酩酊を誘い、悪魔と死霊が呼び覚まされる』
『lv上限が解放されました』
『ステータス上限が解放されました』
『1時間、HP以外のステータスに強力な補助が掛かります』
『種族【ヘルヘイムリッチ】、【グランデーモンスケルトン】、【インフェルノナイトメアレイス】が解放されました』
『条件達成をする事で種族変更をできるようになります。』
「どうなった?」
「何が起こるか知らずに飲ませたの?」
「おう」
悪びれもせずそう返事をする犬dogに呆れつつ状況を説明する。
「はー。めっちゃ効果出るじゃん。とりあえずさっさとここ攻略出来るくらい強くなってると思うからさっさと出てメインストーリーやろうぜ」
犬dogはそう言うとどんどん進んでいった。
「ちょっと!いったん落ち着かせてよ!」
犬dogを追いかけて自分も進んでいく。




