第二部 第一章 新年会
年が明けた。
二〇二六年。
新しい一年が始まった。
だからといって、
何かが変わるわけではなかった。
テレビでは芸能人が笑っていた。
SNSでは友人たちが初詣の写真を載せていた。
「今年もよろしくお願いします」
そんな言葉が並んでいた。
画面の向こうは楽しそうだった。
でも、
自分はあまり笑えていなかった。
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会社を辞めてから二か月ほどが経っていた。
毎日が曖昧だった。
朝起きる日もあれば、
昼過ぎに起きる日もあった。
転職サイトを開く。
求人を見る。
閉じる。
また開く。
そして閉じる。
そんなことを繰り返していた。
働かなければいけない。
そんなことは分かっている。
でも、
また同じことになったらどうしよう。
そんな不安も消えてはいなかった。
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一月になった。
不思議なことに、
飲みの誘いだけは途切れなかった。
地元の友人。
高校の友人。
大学の友人。
それぞれ別の日に連絡が来た。
「久しぶりに飲もうぜ」
「新年会やるぞ」
「最近どうしてる?」
どれも特別な言葉ではなかった。
でも、
その何気ない連絡が少しだけ嬉しかった。
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正直、迷った。
みんな働いている。
みんな前に進んでいる。
自分だけ立ち止まっている気がした。
会えば仕事の話になるかもしれない。
次は決まったのかと聞かれるかもしれない。
そう考えると気が重くなった。
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それでも行った。
家にいても答えは出なかったからだ。
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地元の友人たちは相変わらずだった。
高校の友人たちも相変わらずだった。
大学の友人たちも相変わらずだった。
久しぶりに会ったはずなのに、
昨日も会っていたような感覚だった。
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仕事の話になった。
上司の愚痴。
残業の話。
取引先の話。
恋愛の話。
将来の話。
みんなそれぞれ悩みを抱えていた。
順風満帆に見えていた友人も、
実際にはそうではなかった。
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その時ふと思った。
みんな前に進んでいるんじゃない。
悩みながら進んでいるんだ。
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自分だけが苦しいと思っていた。
自分だけが立ち止まっていると思っていた。
でも違った。
みんな不安を抱えていた。
みんな迷っていた。
それでも毎日を生きていた。
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飲み会の帰り道。
冬の風が冷たかった。
駅前の灯りがやけに眩しく見えた。
友人たちは相変わらずくだらない話で笑っていた。
その少し後ろを歩きながら、
自分も笑っていた。
久しぶりだった。
心から笑ったのは。
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もう一回だけ。
頑張ってみるか。
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根拠はなかった。
自信もなかった。
未来も見えていなかった。
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それでも。
退職してから初めて、
少しだけ前を向けた気がした。
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家に帰る。
鏡を見る。
相変わらず天然パーマは暴れていた。
新しい年になっても、
そこだけは何も変わっていなかった。
少し安心した。
変わらないものもあるらしい。




