第六章 救援(3)
「この声は・・・マリア!?」
フェルドリアが驚いて空を見上げると、王都上空に無数の飛竜の群れが飛来しているのが見えた。彼らは、市街を進む反乱軍の頭上を飛び交い、妨害を始めていた。
その内の一頭が、真っ直ぐに王城の方まで飛んできた。その姿はみるみるうちに大きくなり、遂に女王たちの目の前に降り立ったのである。
「姉さん!」
小柄な女性のゴルド人の背後から、マリアが顔を覗かせる。彼女は飛竜の背中から飛び降りると、勢いよくフェルドリアへ駆け寄っていった。
「マリア!」
フェルドリアは思わず、妹の身体を抱きとめていた。
「姉さん、ごめんなさい」
「ああ、マリア、無事でよかった・・・」
固く瞑った女王の眼から、滴が溢れ落ちて二人の足元の地面を濡らす。
マリアは女王の胸元から身体を離して、しっかりと姉の顔を見上げて言った。
「エイファ様が、私たちに援軍を出してくれたの」
マリアの後ろから、エイファが名乗った。
「お初にお目にかかる。ゴルド王エイファだ。マリア殿の信義に応え、貴殿らに味方することとした。今日は存分に暴れさせてもらう」
フェルドリアはエイファに向き直り、丁重にお辞儀をした。
「誇り高きゴルドの女王陛下。私たちのために救援に駆けつけていただき、感謝の言葉もありません。私たちエルドラドの国民は、今日のご恩を、永遠に忘れません」
ケント卿らもそれに倣い、エイファに対して身を低くする。
「姉さん!私に、『封呪の法』を教えて!リチャードは、私が止める!」
マリアは強い決意を宿した瞳で、姉に訴えた。
「しかし、それでは・・・」
躊躇う女王の前に、マリアはハンスから貰った翡翠色の石を取り出して見せた。
「大丈夫!兄さんの研究が、私を守るから!」
女王は一瞬だけ目を見開き、すぐに全てを理解して、そっとマリアに耳打ちをした。
全てを聞き取ったマリアは、再びエイファとともに飛竜の背中に跨がった。
「ありがとう、私、行ってくる!」
「エルドラドの女王よ、悪いが少し城を借りるぞ」
エイファがそう言って飛竜の腹を軽く蹴ると、飛竜は城の壁に爪を立てて、勢いよく頂上まで這い上った。そしてそのまま翼を広げ、グランルート市街へ向かって飛び立っていったのだった。




