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ノアの終焉  作者: 齋藤昴
第3部
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第四章 暗影(5)

 全速力で走る馬の背から振り落とされないように、マリアはリチャードの腰に手を回し、しっかりとその背中に抱きついていた。自分の腕から伝わる彼の体温を感じながら、胸は激しく鼓動していた。

 二人を乗せた馬は、街道を疾走し、見る見るうちに郊外へと走り抜けてゆく。馬を走らせながら、リチャードは背中のマリアに話しかけた。

「マリア様、お許しください。私は・・・あの男が、許せませんでした。奴は、モンテリオ伯は、貴女を侮辱した。実に、聞くに堪えない暴言でした。私は耐えられなかったのです。気づいたら、思わず・・・」

 マリアは彼の背中にしがみつきながら、じっとその言葉に耳を傾けていた。

「分かっているわ。貴方は、あの卑劣な男から私を守ろうとしただけでしょう。・・・ひどい、ひどいわ・・・!あの男だけじゃなくて、ケント卿も、姉さんも、みんな私を都合のいい道具としか見ていないのよ!ああ・・もう、何もかもが嫌になった・・・。お願い、リチャード、私を連れてどこか遠くまで逃げて!あなたと結ばれるなら、私、どこへでも・・・」

 リチャードの腰に回したマリアの腕に、力がこもる。

「ええ、ええ、勿論です。このリチャード、貴女様と共に生きられるのであれば、他のすべてを失っても構わない、この上ない喜びです。行きましょう、二人で。恐れる必要はありません。私たちには、協力してくれる仲間たちもいます」

 二人を乗せた馬は、いつの間にか、辺りに建物が一つも見当たらない、広い海岸線を走っていた。

 このままどこまでも、彼とともに走り続けていたい。

 すべてを忘れ、彼に身を委ねていたい。

 マリアの心は今、暗闇の中を一条の光となって、真っ直ぐに走っているようであった。

 いつの間にか日はすっかり傾き、海から強い潮風が吹き付けてくる。

 紫色のローブを翻しながら、ひとかたまりとなった男女を乗せた馬は、どこまでも走り続けた。

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