第二章 エルドラド王国(2)
「私たちのエインズワード家は、その大魔導士グラン様の直系の子孫というわけ」
舷側に並んで海を眺めながら、マリアは隣のリフローネに自分の国のことをあれこれ教えてくれた。
海賊船の一件の後、リフローネとマリアはすっかり打ち解けていた。歳が近く、同じ王女という身分であることもあり、お互いに親近感を感じたのかもしれない。
「もしかして、あの炎はマリア王女が?」
リフローネは、海賊船から投げられた鉤付きロープを焼き切った炎を思い出した。
「ご明察!私たち王家や、その他の魔導士の子孫にあたる貴族たちは、魔術を使うことができるの」
魔導の力は、血によって受け継がれる———マリアはそう教えてくれた。
「その、マリア王女は、どうして警備艇に乗っているのですか?」
リフローネは、先ほどから抱えている疑問を聞いてみた。
「マリアでいいよ!同じ王女なわけだし。私も、リフローネって呼ばせてもらうから。・・・うーん、でも、もうちょっと親しみを込めて、リーフ、っていうのはどうかしら?」
マリアはにっこりと笑ってリフローネに問いかける。その笑顔につられ、リフローネも思わず微笑んでしまった。
「もちろんいいですよ。ありがとう、マリア」
「あ、それでさっきの質問の答えだけど、エルドラドは、2年前に前の女王、私のお母さまなんだけど、病気で倒れて亡くなってしまったの。そこで姉さんが王位を継いだんだけど、まあ、いろいろあって、国内が不安定になってて。それに便乗して、海賊の被害も増えてきちゃったのね。姉さんも大変だし、私も何か助けになれればと思って、こうして騎士団のみんなと一緒に警備艇に乗ってるんだ。私は魔導が使えるし、こういうことででも役に立てればと思って」
海風に吹かれながら、あっけらかんと話すマリアの横顔を見て、リフローネは彼女という人間が段々と解ってきたような気がした。明るく快活な笑顔の裏側に、王女としての決意を秘めている。自分の母親を失ってまだ数年なのに、姉を支えようと前を向いているのだ。
リフローネは、自身が旅をしている理由を打ち明けることにした。
「私は、魔導について知るためにエルドラド王国へ向かっています」
リフローネは、ハーラント王国がカレンツァ帝国へ攻め込まれたこと、自分の兄が不思議な力を纏った騎士と戦い命を落としたことを話した。
「そう・・・。そんな理由があったの・・・」
快活なマリアも、リフローネの話を聞いたときは表情を曇らせた。
「わかったわ。港へ着いたら、王城へ案内するね。できるだけのことは協力させて」
マリアはそう言って、魅力的な笑顔で片目をつぶってみせた。リフローネは、この素敵な少女にすっかり親しみを覚えていた。
ちょうどその時、船はエルドラドの王都・グランルートの港へと入ってゆくところであった。




