第一章 マリア(4)
窮地に現れたのは、エルドラド王国騎士団の沿岸警備隊だった。
彼らが現れるやいなや、今度は海賊たちの方が慌てて逃げ出す番であった。が、海賊船はあっという間に拿捕され、賊たちも精強な騎士たちの手によって残らず捕えられてしまった。
鮮やかな捕り物劇が収束した後、紫のローブの女性がリフローネたちの商船へと乗り移り、船員にあれこれ話を聞きはじめた。
「被害はどれくらい?死傷者は出ているの?」
てきぱきと事後調査を行う彼女の姿を、リフローネは感心して見つめていた。
女性は、リフローネの視線に気づくと、にっこりと笑顔を浮かべ、こちらへ近づいて来た。
「ねえ、あなたたち!見てたよ、なかなかやるじゃない!」
女性は、栗色の癖のある髪の下から、青みがかった瞳でナジャの方を見上げて言った。
彼女は、いかにも快活そうな格好をしていた。動きやすそうなラシャの上下に、革のブーツを履いて、目立つ深い紫のローブを羽織っている。フードは被らずに後ろへやってしまっていて、栗色のお下げ髪が露になっていた。
「助けていただき、ありがとうございました」
リフローネは右手を自分の胸に置きながら、女性に向かって感謝を示した。
「いいの。これが警備隊の仕事だからね。・・・それよりあなたたち、行商人のような格好をしているけれど、ただものじゃないわね?そんなものを身につけて」
彼女の言葉に、リフローネははっとなって自身の腰の短剣に目をやった。
どうやらエルドラドの警備隊のようだし、変に誤魔化そうとすれば却って怪しまれると思い、リフローネは自分達の身分を打ち明けることにした。
「実は私は、ハーラント王国の王女、リフローネ・レイナ・ハーラントと言います。彼らは私の護衛をしてくれているナジャとマルコです。訳あって、エルドラド王にお願いがあって来たのです」
それを聞いて、ローブの女性は驚いたようだった。
「え、あなた、王女なの!?」
そう言って、すぐまた魅力的な笑顔に戻って続けた。
「じゃあ、港に着いたら私が案内するね。実は私も王女なの。マリア・エインズワードよ。よろしくね!」
「ええ!?」
今度はリフローネが驚く番だった。




