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ノアの終焉  作者: 齋藤昴
第3部
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序章

 殺風景な田舎の漁村が目に映る。

 まばらに建つ粗末な家の外には、網や(もり)といった漁に使う道具が無造作に置かれている。だが、そこに住む人の姿はほとんど見かけない。

 聞こえるのは、打ち寄せる波の音と、空高く飛んで行く鳥の鳴き声だけ。

 あるいは、その景色をして牧歌的と言えなくもないかもしれない。

 生憎、そのような感慨に浸るほどの感性は、持ち合わせてはいない。心の中には、常にどす黒い感情が漂い、渦を巻いている。

 ここを指定したのは、人目を避けるため。ただ、それだけだ。

 しばらく歩き、待ち合わせ場所に指定された一軒の廃屋に辿り着く。

 傾いた戸を押し開き、中へ入るとすぐに、埃にまみれた床に一人立っている人物の姿が目に入った。

「ようやく来たか。少々待ちくたびれたよ」

 低い、ややしわがれた声が響いてくる。どうやら歳のいった男のようだが、薄暗い部屋の中で頭から白いローブを被っているため、顔はよくわからない。

 答える代わりに鋭く目配せをすると、男は軽く笑ったようだった。

「やれやれ、せっかちな御仁だ。・・・案ずることはない。ここに用意してある」

 男は、ローブの袖から琥珀色の宝石のついた首飾りを取り出し、目の前に掲げた。宝石には、見たことのない呪い文字のような紋様が刻まれている。

「アウラ様と『禁呪』の契約を結べば、この石が輝きだす。そうなれば、神の偉大な力がお主の体に宿るのだ」

「報酬は・・・」

 その言葉を聞いて、男はもう一度笑った。

「金などは望まぬ。ただ、お主は授かった力でアウラ様に『命』を捧げ続けるだけでよい。我らの究極の目的には、もっともっと『命』が必要なのだ」

 男の手から首飾りを受け取ると、宝石がひとりでに輝きはじめた。

 ローブの男は満足そうに笑っていた。

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