14.バイバイメンヘラ
「おい古川っ!」
階段を降りて女子更衣室前で待つ、とはいかなかったので階段の前で待っていた。数分もしないうちにゆりが現れたので手を引いて三棟に行く。
三棟は基本部活時以外は人がいないので好都合だ。
「お前、胡簶さんの制服をズタズタにしただろ」
「えへへ、しーげ? 怒ってるのぉ?」
完璧に二人きりの空間。ゆりはその本性を現して俺に詰め寄る。その顔は笑顔だが、もはやそれは狂気以外の何物でもない。
「当然だろうがッ! どうして無関係の胡簶さんを巻き込むんだよ!」
「無関係? しげ、本当にそう思ってるの? ねぇ、ねぇねぇしぃげ」
「俺に色目を使ってる?」
「そーう。だいせいかーい! しげくんおめでとう100ポイントですっ!」
胡簶さんが俺に色目を使っている。ぶっちゃけ心当たりが無いわけではない。むしろまあまあある。でも、でも。
「でもそれはお前には関係ないだろ。お前が俺の彼女ならともかく、そうじゃないんだから」
「ぶぶー、しげくん残念マイナス50ポイントー。あの子が私たちが別れた瞬間にスイッチを切り替えたわけありませーん」
ゆりがさらに近寄ってくる。彼女の手に胡簶さんの制服を裂いた刃物が入っているのではないかと思うと怖くて息もできない。
「なら、以前から胡簶さんはそういう目を俺に向けてて、俺がそれに誘惑されてゆりを振ったと?」
「もちろん。あの泥棒猫ちゃんのせいでしげは私から心を離し始めた」
何を言っているんだ? お前だよお前。お前がフラれた原因はお前だよ。
「どれだけ憎いか分かる? この気持ち。あの子も長田君に告られたら揺れるんじゃないかと思って二人であの計画を立ててしげに見せたんだよ。結局失敗しちゃったけど」
つまりあれはそうか、俺と胡簶さんが一緒にいづらくしてさらに俺に好きな人を奪われる悲しさと寂しさを思い知らせる意図があったのか。
「ゆり。悪いけどここでキッパリ言っておく」
ゆりの目が俺の目を見据える。その堂々とした様子には俺も感心する。
「なに?」
「お前は普通の恋愛に向いてない。恋愛したいなら自分によく似た人としな」
その瞬間ゆりのスイッチが入れ替わった音がした。
もともと至近距離だったのに、さらに抱きついてきて距離をゼロにする。危険だ。反応がそう伝えてくる。
反射的にゆりを突き飛ばして距離を取る。
「いった……!」
彼女の手には刃渡り十センチほどの小さなナイフが握られていた。その目はもうイッチャッテル。
ここは学校だ変に戦う必要はない。全力ダッシュで職員室へ。いや待て。胡簶さんに何かされては困る。武器はここで奪わなければ!
途中で急ブレーキをかけて身を屈める。すると案の定ブレーキをかけきれなかったゆりが突っ込んできた。そのまま足をかけて床に倒し、手にあるナイフを奪い取る。
だけど油断はできない。本当はやりたくないけどゆりのポケットをまさぐる。ゆりは場違いな色っぽい声を出すがそんなものは耳に入ってこない。いや嘘ちょっと入ってきてた。
するとまさかのまさか、もう一つ同じものが出てきた。
「…………観念しろ古川ゆり。俺はお前を傷つけたくはない。だがそれと同じかそれ以上に胡簶さんを傷つけられたくない。これ以上変な真似をしたらそれこそ俺がどうするか分からないぞ」
ようやく。ようやく彼女の瞳に諦めの色が見えた
需要があると判断したら続き書きます。もっとざまぁしろでも、もっとイチャつけでもご要望があればお教えください




