12.文化祭準備、下見編
次の日から、俺らは誤解をとくのに必死だった。とにかく違うと訴える。それを続けていればみんなもだんだんその必死さを察して何かおかしいと感じる。
噂などそれだけで解消された。ちなみに長田はここ数日学校を休んでおり、文化祭まで残り二週間というのに何かが足りない感がクラスに蔓延していた。
そういえば、隣のクラスのカップルの噂もデマだったらしい。おそらくだがゆりと長田が俺らの噂を広める下地として生贄に捧げたのだろう。
「そろそろみんな材料を仕入れるお店を決めておいてね」
帰りのホームルームで文化祭委員の太田がそう呼びかけていた。そういえば長田が担当のもやしはどうするのだろうか。と思っていたら太田がそのことに触れた。さすがっす。
「でも長田が最近来てないからな、代わりにじゃあ、胡簶さんお願いできる?」
「…………」
胡簶さんは寝ている。机を叩いて起こしてやると、なんとも可愛い寝起き顔でございます。
「……ん?」
「長田のかわりにもやしを仕入れる店を探してくれってさ」
状況を察したらしい胡簶さんはパッと顔を上げて教室前に立つ太田に向けて大きく頷く。髪がさらさらと流れるように動く様は、男としての本能をくすぐられる。
ダメだ、あまり見過ぎてちゃ毒だ。
俺の生活には平和が戻ってきたどころか、人生最高の輝きを放っている。
放課後いつも通り胡簶さんと掃除をする。今日は水曜日で部活が休みだ。これは一つ、前に進むべきかもしれない。
「胡簶さん、もしよかったら今日一緒に仕入れ先探さない? キャベツともやしでどっちも野菜だから大体店も決まってくるし」
「おお! いいね、行こう行こう」
あの騒動の後から彼女の言葉の淀みが減っている。原因はよく分からないし、まだ照れてはいるけれど、目を見てくれる時間も延びた。何よりも肯定的な雰囲気が増した。
まあそんなわけで店を探すことになった。
「いくつか候補あるの?」
校舎から校門までの道で胡簶さんが訪ねてくる。しかしこうして二人並んで歩いているとなんだか変な気を起こしそうだ。ゆりと歩くときは大抵俺が斜め前を歩いて引っ張っていた。それがこうして横並びになるとやはり新鮮だ。
「坂を降りたところの商店街か、駅前のスーパーかなって思ってるんだけど」
「ああ、そうだね。じゃあまず商店街行こっか」
坂を下っている間、俺は胡簶さんとなんでもない話をいくつもした。しかしそんな何でもない会話も、一つ一つに花があるように感じた。本当にゆりとは大違いだ。
そんなこんなで体感的には3秒程度の短い時間に着いてしまった。主婦とおじいちゃんおばあちゃんが歩いている中、八百屋に向けて歩みを進める。
「よし着いた。じゃあ俺が話してくるね」
おっちゃんに何日に何をどれだけ欲しいか伝えて、それが可能か、それからお値段おいくらか計算してもらう。
予定だった。
「ウチはそういうのはしないんだ」
「へ? 物売りならこれは大チャンスじゃないんすか? たくさん売れますよ?」
「喧嘩売ってんのかクソ坊主! 何様のつもりだァッ!」
「勿体なぁ! まあいいや、失礼しました」
危ねえ何だアイツ。胡簶さんの前でガチギレしそうになったわ。クッソ、八百屋のクセにテメェこそ何様のつもりだ。
「み、宮本くん? 大丈夫?」
「いや、大丈夫じゃないわ。さっさとスーパーに行こう」
ああやっぱりイライラが伝わっちまったぁ! こんなことでイライラしてたらダサいよな。器の小さな男だと思われるよな。本当最悪。
「……でもよかった」
「うん? 何が?」
「ほら、宮本くん長田君と仲良いからさ、彼と同じように感情が嘘か本当か分からないなんていうのまで一緒だったら嫌だったなと思って」
そうか? 長田の感情は割と分かりやすいと思うが。いや、それがもしかしたら胡簶さんの言う嘘の感情なのかもしれない。
ところでスーパーでは。
「了解! 文化祭がんばってね!」
恐ろしいくらいスムーズにことが運んだ。
需要があると判断したら続き書きます。もっとざまぁしろでも、もっとイチャつけでもご要望があればお教えください




