第11話【森崎千紗_破れない契約を交わす魔法(低級)】④
僕はまず右側の女性に魔法を使う。
いつもの静電気のようなビリリとした感覚が指に加わった直後、右側の女性が内股になりモジモジし出す。
【尿意を操る魔法】で、尿意をあげたのだ。
森崎先輩であれば漏らしてしまうほどの尿意。
けれど、右側の女性は身体をくねらせながら耐えている。
そうえば、羽田さんに使った時は自分から放尿する事で魔法を解除していたが、その時ですら限界という感じではなかった。
この魔法で引き起こされる尿意が同じらレベルだと仮定すると、一度の使用で漏らしてしまう森崎先輩の尿道はかなり弱いのかもしれない。
続いて左側の女性の尿意もあげる。
こちらも、急に訪れた尿意に身体をくねらせる。
「二人ともどうしたの?」「ちょっとお腹が」「私もトイレに行きたくなって…」「スポドリの飲み過ぎよ」
真ん中のリーダー格の女性が、苛立ちながら両脇の二人を責める。
だが、遠目に見ても明らかに限界が近い二人をこれ以上後輩いびりに動員するのは難しいと見たのか、大神の背中を記念樹に押し付けると、肩を掴んでいたその手を話した。
「いい、これは警告よ。
インターハイで私たちの代の邪魔したら、その時は高校に来れなくなるような酷い目に遭わせてあげる。
言っとくけど、これは脅しじゃなくてマジだから。
私にはその力があるって覚えておいて」
捨て台詞を吐いてだリーダーは、おしっこを我慢してそれどころではない取り巻き二人を引き連れて中庭を後にする。
大神は、先輩たちのいびりが急に終わってキョトン顔だ。
僕としても、当初の目的が達せられたのでこれで終わりにしてもいいのだが、クラスメイトに向けられた明確な悪意に対して多少怒りを覚えていた。
それに、両端の二人には魔法を使って真ん中にだけまだ何もしていない。
このリーダーにも何か痛い目を見てもらいたい。
とはいえ、三人とも尿意では面白みがない。
何かいい魔法はないか、とページをめくっていると【パンチラを起こす魔法】が目に止まる。
そういえばこの魔法、スカートを履いていない人に使ったらどうなるのだろう?
つむじ風が起きるだけ?それとも何も起きない?
魔法の説明にスカート着用者限定とも書かれていないのでなんらかの効果はあるのか?
そんな疑問もあり、興味本位で長ズボンの体操服を着たリーダー格の女性に使ってみた。
指に電気が走る。
その直後、彼女たちの周りに一瞬風が吹いたかと思うと、リーダー格の女性のズボンが足首まで一気に脱げ落ちた。
「きゃーーーー」
高校生に似つかわしくない、黒の花柄レースの下着を露わにしながら、その場に座り込む。
隠しているつもりだろうが、僕の位置からは腰からお尻にかけてのラインが丸わかりだ。
「大丈夫?」「何があったの?」「ズボンのゴムが急に切れたの!ホント最悪」
尿意を我慢した二人が、それでも目の前でパンツを露わにした仲間のことは放っておけないのか、中庭の先にあるトイレとパンツ露出女を交互に見ながら気遣う。
気遣われた方も、自分からパンツを露出したわけではないことを伝えるためか、必要以上に大きな声で原因を伝えてくれる。
なるほど、ズボンを履いていてもこうやってパンチらを引き起こすのか。
何がなんでもパンチらを引き起こすということは、対象の服装によってはかなり不自然なことが起こりかねない。
魔法を使う相手はよく考えないといけないな。
リーダー格の女性は、ゴムが切れたというズボンのウエストを持ち上げると、そこを掴んだまま歩き始めた。
パンツを晒したことが恥ずかしいのか、はたまたパンツを晒したことを後輩に目撃されたという事実を確定させるのが嫌だったのか、決して、大神の方を振り返ることはなかった。
僕はその後ろ姿を胸がすぐ思いで見送った後、本来の目的である売店へと向かった。
あとの二人が無事トイレに辿り着けたかも少し気になったが、さっきまで威張り散らしていた人が無様にパンツを晒す姿を観察できたので、僕の中のスカッとジャパンは十分に満足していた。
売店でチョコとコーヒーを買う。
図書室はもちろん飲食厳禁なので、隣接する食堂で食べたあと図書室に戻る。
気分転換の散歩が良かったのか、それとも小腹を満たした影響か、はたまた現実でザマァな展開を見れてテンションが上がっていたのか、図書室に戻ってからの僕は珍しく勉強に集中できた。
僕の集中は、12時のチャイムが鳴るまで続いた。
そろそろ小腹が空いてきたな、と思いながら取り組んでいた力学の問題を解き切って顔を上げた。
視線の先に森崎先輩がいた。
先輩はまだ集中した面持ちで参考書とノートに向き合っている。
結局、午前中は声をかけられることはなかった。
まさか契約の魔法が失敗して既に漏らしてるってことはないよな、と思いつつ森崎先輩に近づく。
近づくにつれ、森崎先輩が小刻みに揺れている事に気がつく。
よく見ると額にはうっすらと汗が滲んでいる。
右手はペンを握っているが、左手は下腹部を押さえている。
それはどこからどう見ても、おしっこを我慢している人の姿だった。




