第10話【山田のモーニングコーヒー】⑦
【パンチラを引き起こす魔法】
今回僕が使った魔法は極めてシンプル。
対象の足元につむじ風を起こしスカートを巻き上げ、パンツを露わにするという魔法だ。
日曜日に風魔法をいくつか使ったことが影響したのか、新しく使えるようになった魔法の一つだ。
正直、ここまで使ってきた尿意や痒みを引き起こす魔法の効力とその結果遭遇できたエッチな経験と比べると、いまさらパンチラか……と思うかもしれない。
だがこの魔法は、どちらかといえばクローズドな空間で対象と対面しているときに効果を発揮したこれまでの魔法と違い、オープンな場所で不特定多数の衆人環境に適していると言える。
現に、スカートが巻き上がりパンツを皆様に開示した女子生徒は何が起こったのかわからずその場にしゃがみ込んでいる。その顔は羞恥に赤く染まっている。
すぐ近くを歩いていた男子生徒やサラリーマンは、突然のラッキーパンツに頬を綻ばせながら通り過ぎていく。
衆目の中で突然恥ずかしい目に遭う女の子を観察するのが、これほどまでに心を高鳴らすという事を僕はこのとき初めて知った。
もちろん、パンチラを目撃しただけで、僕の興奮が絶頂を迎える事はない。
それなのに、昨日まで繰り返していた一人作業の100回分よりも密度の濃い快感と満足感が脳を突き抜けるのを感じた。
溜まっていた欲望が発散されるが、まだまだ全てを吐き出すには物足りない。
僕は即座に次のターゲットの物色を開始した。
連続でパンチラを起こすと怪しまれる。
僕は適度な間隔を空けながら、目についた女の子のスカートを次々と捲り上げていった。
眼鏡をかけた優等生風の生徒が履く、肌触りの良さそうな、白いコットン生地のパンツ
黒髪が目を引く長身の女子生徒が履いていた、光沢のある黒いナイロン生地のパンツ
おとなしそうな見た目とは裏腹に、高校生にしては装飾が派手な青い花柄のパンツ
スポーツ少女のような見た目の生徒が履いていた、イメージ通りのレディースボクサーパンツ
十人十色のパンツが、朝の駅前を華やかに彩る。
パンツが十人十色であれば、パンチラした時の反応もまたそれぞれに個性があった。
きゃーっと大声をあげて、自ら注目を集めてしまう人。
何事もなかったかのように平然と歩いているが、耳の先が真っ赤に染まった人。
パンツが見えた事を、仲間内で笑い話にして消化しようとする人。
ヘッドホンをしてスマホをいじっていたせいで、パンツが見えていることに気が付かない人。
どの反応も素晴らしいが、その中でも恥ずかしそうな反応が一番欲望の発散に効果があるようだった。
その点では、一番最後の無反応な子はいただけない。
それにパンツが衆目に晒されているというのに、それに気が付かないというのは、警戒心が無さすぎる。
罰として、その子にだけ二度目の【パンチラを起こす魔法】をかけた。
またスカートが捲れ上がる。
そして今度は運のいいことに(彼女にとっては悪いことに)後ろ側のスカートが鞄に引っ掛かり捲れ上がったままになってしまった。
くまさんパンツが朝日を浴びて左右に揺れる。
彼女自身が気がつくか、それとも友達に指摘されるのが先か、どのタイミングで気がつくかは分からないが、しばらくの間はパンツ丸出しで通学路を歩くことになる。
自分が恥ずかしい状況であると無自覚なまま、恥ずかしい姿をさせられている人にもこれほどまだに唆られる事を。僕は初めて知った。
パンツを丸出しで、そのことに気が付きもせずに歩いていく女の子の背中を見て、僕は溜まっていた欲望が晴れていくのを感じた。
心は軽く、気分は晴れやか、股間の圧迫もない。
通勤通学ラッシュのピークが過ぎ、人がまばらになった駅前で空を見上げる。
この街の空はこんなにも輝いていたのか。
僕は、【取るに足らない存在になる魔法】を解き、学校へ向かった。
数日ぶりに、心穏やかな状態で授業を受けられる。
もう女子生徒の体を目で追いかけることも、すれ違いざまに香る匂いに脳を焼かれるような思いをすることもない。
その事実を噛み締めながら、僕はスキップしそうな気分で通学路を進む。
この時の僕には、何人もの女の子のパンツを衆目の下に晒したことへの罪悪感はかけらもなかった。
パンチラを見るためだけに早起きして、何時間も駅前のベンチに座り続けた自らの行動に疑問を持つこともなかった。
どれも、『少し叡智な魔法の使い方』を持つものであれば当然の行動だと納得していた。
むしろ、パンチラだけで満足できている自分は、なんて無欲なのだろうとさえ思っていた。
この前修得した【対象の衣装を変更する魔法】を使えば、つむじ風を起こしパンチラした瞬間にそのパンツを別のものに変えることだってできた。
例えばくまさんパンツを紐パンツに変更してしまうとか。
でも流石にそれは可哀想だ。
こんな魅力的なコンボ技を思いついていながら、我慢ができる理性を持っているなんて、さすが僕だな。
そんな事を考えながら一日授業を受けた。
僕が、今朝の行動のことを冷静に省みれるようになるのは、夕方家に帰ってからのことだった。




