第9話【上野ひとみ_とっても気持ちのいいマッサージ】⑧
耳のマッサージは続く。
それと同時に、乳首への刺激も続いている。
「耳のマッサージは、肩こりにも眼精疲労にも効くみたいですよ」
山田くんはそう言って、肩や腰よりも念入りに耳を揉み込む。
山田くんが、耳たぶをキュッと摘む。
同時に、乳首がキュッと摘まれる感覚が生じる。
乳首への強い刺激が生じるたびに、私の体は反射的に腰を浮かしそうになる。
多分、乳首への刺激でその気になりそうな私のお股がさらなる刺激を求めているのだ。
事実、胸に刺激が加わるたびに、私のお股はキュンキュンと切なく疼いている。
けれど、お尻の上に山田くんが座っているのでそれは叶わず、柔らかな布団に擦り付ける鈍い刺激だけが蓄積されていく。
「うっふぅ……あぁぁ
っっく……ぅぅうあ」
男子高校生には聞かせてはいけないような、アラサーOLの発情した鳴き声がリビングに響く。
ことここに至っては、マッサージで発情しないと誓った私の決意はかけらも残されていなかった。
私の頭を支配していたのは、乳首と耳へ加わる刺激を震源地とする、脳を痺れさせるような快感だった。
「そんなに気持ちよさそうにしてもらえると、マッサージのしがいがありますね」
唯一の救いは、そんな私の姿を見た山田くんが「マッサージが気持ちよくて反応している」と勘違いをしてくれていることだ。
もし私の本当の状態を知られてしまったら、軽蔑されること請け合いだ。
「さぁ、そろそろ別のところもマッサージしましょうか」
永遠に続くかと思われた耳のマッサージと、それに付随する乳首への刺激は、唐突に終わりを迎えた。
私は、ホッとしたような、残念なような複雑な気持ちで耳から離れる山田くんの手を目で追う。
散々と刺激を加えられた耳と乳首は、もう爆発寸前まで気が高められていた。
あと少し長くマッサージが続いていれば、ゴールを迎えることができたのに。
この状態で迎えるゴールは、さぞ気持ちのいいものだろう。
……いやいやいやいや、男子高校生のマッサージでゴールを迎えるとか、それは流石に逮捕だ。
私は、山田君の手が離れたこの隙に呼吸を整え、エンジンのかかり始めていた体をクールダウンさせる。
山田くんは私のお尻の上を降り、まだ私の横に腰を下ろした。
「次は手です」
そう言って私の右手を取る。
手と手が触れ合う感覚に、クールダウンしかけていた体がキュンと起き上がる。早く寝なさい。
「足ツボと同じく、手のツボも全身とリンクしてるんですよ」
山田くんはそう言いながら指先から順にほぐしていく。
今度は耳の時のように、別の場所が刺激されることはなく、純粋に手と指が気持ちいいマッサージだ。
「ここが胃のツボ、ここが腎臓、そしてここが心臓」
山田くんは押しているツボを説明しながらマッサージしてくれる。
「胃がとっても痛い」
反応を返す余裕が生まれてきたので、痛かった場所を伝える。
すると、山田くんはその場所を特に念入りにほぐしてくれた。
手のマッサージを受けるのはこれが初めてだけど、こんなに気持ちのいいものだとは知らなかった。
私は、さっきまでの体の疼きを忘れて、でのマッサージに集中していた。
山田くんの手が、指先から根元へ、そのあと手のひらへと順に移動してくる。
「このマッサージで最後です」
山田くんは手のひらをほぐしながらそう言う。
私はその言葉を聞いて少し楽になった。
山田くんのマッサージはとんでもなく気持ちがいいのでいつまでも受けていたい。
だがその分、快感に抗うための体力や変な声を出さないための集中力など多くのものを使っている。
今日は上半身だけだったが、これで下半身もマッサージされていたらきっと身体と心がもたなかっただろう。
これで締めるくらいがちょうどいい。
そう思って気を抜いたその時だった。
私の全身に、これまでにない快感が走った。
それは、山田くんの手が私の手首をマッサージし始めた瞬間に起きた。
手首のマッサージと同時に、敏感になっていた女性器を弄られたようだ強烈な快感が襲ってきたからだ。
さっきまで、乳首を散々いじっていた第三の手が標的を変えたのだ。
脳を駆け巡る快感が、花火のようになって視界を覆った。
「ん゛ぅぅぁっ……」
叫び出しそうになったのをなんとか堪えた。
しかし、下半身は制御ができず、別の生き物のように跳ね上がると、お尻を突き出した形で固まった。
「あ、ここ効きますか?
じゃあ念入りにほぐしますね」
山田くんは、またも私の反応をマッサージが効いているものと勘違いし、揉み込む手を強めた。
歴代の彼氏との営みでも感じたことがないような、突き上がる快感が下半身に響く。
私は突き上げたお尻を左右に振り、快感から逃れようとするが、初めから私の下半身には何も触れていないので逃げようがない。
そう、山田くんは手首をマッサージしているだけだ。
手首だ。手首のマッサージだ。
下半身には指一本触れられていない。
そう言い聞かせても、確かに感じる下半身への刺激に抗うことはできなかった。
「気持ちいいのが、くる……」
下半身から、マグマのように吹き出した快感の波が、脊髄を通って脳を揺らす。
なんともいえない多幸感が体を包む。
雲の上に来たような、不思議な浮遊感で体の輪郭が溶け出したような気がする。
唯一はっきりと感じ取れるのは、手を握る山田くんの指の感触だけ。
永遠にこの時間が続けばいいのに。
私はそう思った。
そして、私の記憶はそこで途切れた。
次に目が覚めたとき、リビングは朝を迎えていた。




