第9話【上野ひとみ_とっても気持ちのいいマッサージ】⑦
学生時代は肩こりと無縁だった私の体は、就職してデスクワーク中心の生活になると途端にメンテナンスを要求してきた。
主な症状は、首・肩のこり、腰の痛み、目の奥の疲れ、それらに伴う頭痛。
特に、デスマの後はその症状が顕著で、今日も帰りの電車からずっと肩こりを感じていた。
セルフストレッチもするし、マッサージや整体、鍼治療も試したことがある。
どれも一定の効果は得られたが、凝りを完全に取り除くことはできず、働き始めるとまたすぐに体が固まってしまうので、そのうち行かなくなってしまった。
だから、山田くんがマッサージをしてくれると言った時も、大した期待はしていなかった。
私を社会的な死から救ってくれた恩人には申し訳ないが、私の凝りを甘くみないでもらいたい。
そう思っていた……のに。
「ああ゛あ゛……ギモヂイイです。
あう゛、そこ!そこ!そこなの」
私の凝りは、山田くんのマッサージの前に、簡単に陥落した。
彼の親指で背中の筋肉を押されるたびに、私の口からは情けない呻き声のような音が漏れ、だらしなく開いた口からはよだれが流れる。
私はYUZAME幹部のキラーフィンガー・ジョーにマッサージされた温泉Gメンのように、山田くんの親指の前に白旗をあげる事しかできなかった。
YouTubeを見ただけの素人、と本人は言っていたが、このマッサージはこれまで受けたどのマッサージとも違うものだ。
例えるなら、目に見えない3番目の手が山田くんに生えていて、その手が体の中に侵入して、外からは届かない奥の奥の凝り固まった筋肉を直接揉みほぐしているかのような、そんなマッサージだ。
以前、鍼治療で長鍼入れてもらい、深層の筋肉にアプローチをかけてもらったことがあるが、その時の感覚に似ている。
ただ、あちらが細い針でチクチクするだけだったのに対して、山田くんのマッサージは、深層の筋肉をそのまま鷲掴みにして直接揉みほぐしているような感覚がある。
一揉みごとにメリメリメリと、凝り固まっていた筋肉が剥がれていく感覚がある。
背中を揉まれているのに、首や足まで電気が流れるような痛気持ちいい刺激が駆け巡る。
それは人の技とは思えないほどの妙技だった。
それはまるで、魔法のようなマッサージだった。
「ああ゛あ゛
ゴクラクすぎる」
脊髄反射で漏れ出る声を、私は止める術を失っていた。
マッサージに蕩ける私を、山田くんは嬉しそうに見る。
「そんなに気持ちよさそうにしてもらえると、もっと頑張りたくなっちゃいますね」
山田くんはそういって立ち上がると、うつ伏せで布団に寝ている私のお尻の上に座ってきた。
山田くんの大事なところが、私のお尻の割れ目に乗っかる。
突然のことに驚いたが、マッサージで蕩け切った体は全く動こうとしてくれない。
山田くんは、私のお尻の上で少し腰を動かして安定する姿勢を見つけると、そのままマッサージを再開した。
いまさら、降りてくださいとはいえない。
それに、その姿勢でのマッサージは、先ほどの横からされていたマッサージよりもさらに数段階気持ちのいいものだった。
山田くん手が、仙骨のあたりから肩甲骨の周辺までゆっくりと動く。
その動きに合わせて、背中中の凝りがほぐれていく。
「ギモ゛ヂイイ゛イ゛」
私は、男子高校生がお尻の上になっている事も忘れて、マッサージの虜になっていた。
「じゃあ次は肩と首をマッサージするので、上の服は脱いじゃってください。」
山田くんの指示に従い、半袖の体操服を脱ぐ。
一瞬、脱いで平気かな?と思ったが、絆創膏も貼っているし、うつ伏せなので大事なところは見えないから大丈夫だろう。
服を脱ぐと、早速山田くんの手が肩と首に伸びる。
これもまた、天にも昇る気持ちよさ。
服を脱いでよかった。
山田くんの指は、肩甲骨、肩、首と攻め上がっていき、最終的に私の耳にまで到達した。
少し体温の高い手で、耳を覆い包むように揉まれる。
これもすごく気持ちがいい。
それもただ気持ちいいだけではない。
耳への刺激では、これまでの肩や背中への刺激とは異なり、私の体は単なるマッサージによる気持ちよさではない快感を受けていた。
「んっ、はぁ」
さっきまでの濁点混じりの声とは明らかに異なる吐息が口から漏れる。
私はこの時初めて、自分の耳が弱いことを知った。
まさか、7つも8つも下の男の子に、新しい扉を開かれるなんて思ってもみなかった。
さらに、とても不思議なことが起こった。
耳のマッサージに連動して、乳首が弄られているような感覚を覚えたのだ。
山田くんが、右の耳たぶを揉み込む。
するとそれに連動して、右の乳首が揉み込まれるような感覚に陥る。
山田くんが、左の耳たぶを指で弾くように刺激する。
するとそれに連動して、左の乳首が指で弾かれたような刺激を感じる。
それはまるで、さっきまで体の中に潜り込んで私の体を直接ほぐしていた目に見えない第三の手が、今度は私のおっぱいにイタズラをしているような、そんな感覚だった。
はじめは、山田くんが私の胸を触ったのだと思った。
けれど、山田くんの両手は私の両耳を揉み込んでいる。耳の感触だけでなく、目視でも確認している。
じゃあ足か?とも思ったが、私のお尻の上になっている体勢的に不可能だ。
それに第一、私の胸は布団に押し付けられている。
乳首だけを狙い撃って触ることなど不可能だ。
これらの状況証拠から導き出せる答えはひとつ。
私は、耳のマッサージを受けながら乳首で感じてしまう変態だったのだ。




