第8話【風の魔法使いと真のラッキーすけべ】④★★☆
「術者が気絶して魔法の効果が切れたのよ。
このホールは、そこの女の子の風魔法で守られていたってわけ」
花澤さんが現状を説明してくれる。
僕は落ち着いて状況を確認する。
僕たちは今、ショッピングモールのイベントホールの真ん中にいる。
ショッピングモールは、全焼する勢いで燃えており、イベントホールの周りは全て火の海だ。
花澤さん曰く、さっきまではレザー少女の風魔法でイベントホールは火の魔の手から守られていたようだが、今はその効果が切れている。
魔法が切れても風の流れというのはすぐには消えないらしく、イベントホールが一気に火の海になることはなくじわじわと無傷なエリアが狭くなっている。
まるでバトロアゲームの触れたら死んでしまう最終円のようだ。
「その子にまた魔法を使ってもらうのは?」
「ダメね、完全に気を失ってる。
それに気をとり戻しても私たちの言うことなんて聞かないわよ」
花澤さんはそういうと、自身のおしっこの水溜りで滑って転んで気絶したレザー少女に近づき、彼女のトレードマークのレザーのジャケットとスカートを脱がし始めた。
「え、ちょっとこんな時に何してるの。
花澤さんってそっち系?」
「変な勘違いしないで。
魔力を上げるために生き物の革を身に纏ってるのよ。
このままだと気を取り戻した時に危ないから」
花澤さんは、話しながらテキパキと服を脱がしていく。
服を脱がされている今になって、初めてレザー少女の顔をしっかりと見る。
衣装から連想した韓流アイドルという印象は間違っておらず、綺麗系の顔立ちをした少女だ。
そんな少女が下着姿に剥かれていく。
何か上着でもかけてやりたいが、僕は水着姿だし、花澤さんはトレーニングウェア、もう一人気を失っている鷲宮先輩は僕のジャージを着ている。
元レザー少女に分けてあげられる上着はない。
それに、周囲を取り囲む火はどんどんと勢いを増しており、それどころではない。
「ちなみにここから脱出する術を用意してたりは?」
「私一人ならどうにかできなくはないけど、流石に委員長を見殺しにするのは気が引けるわ」
花澤さんは、僕のジャージを着て気絶する鷲宮先輩を見て言う。
きつそうな性格をしてると思っていたが、図書委員の委員長の顔を覚える程度には集団行動へも参加する意識があるようだ。
ん?というか、
「この子と僕はどうなってもいいって言うのか?」
「あなたたちは魔法が使えるんだから、自己責任でどうにかしなさい。
関係ない一般人を巻き込みたくないってだけ」
「僕だって君に巻き込まれた一般人だぞ」
「下手な嘘はつかないで。
その格好を見れば私の連絡を受けてここに来たわけじゃないことくらい分かってるから」
僕の抗議の声を、花澤さんは軽く受け流す。
と、そんな話をしているうちにはの勢いはますます増してくる。
「無駄話している暇は無さそうだな」
僕は気絶した元レザー少女の脇に落ちていた魔導書を拾い中を見る。
他の魔導書と同じような文字で書かれたその本を読むことはできないが、書かれた内容の情報は頭に流れ込んでくる。
急いでざっと目を通す。
「花澤さんの緊急手段って、どうにかもう一人連れて行けないかな?」
「なによ、その魔導書使えそうなの」
「多分……でも初めて使う魔法だし、一緒に連れて行けるのは多分一人が限界」
魔導書のタイトルは【六門の魔法学 風魔法編】
六門の意味はわからないが、多分魔法に六つの流派があってそのうちの風魔法について書かれた魔道書と言うことだろう。
元レザー少女も風に関する魔法を使っていたので、そこは想定通りだ。
彼女はこの魔導書を使って大火事の中にセーフティゾーンを作り出していた。
僕にも同じ魔法が使えれば、この場から逃れることも可能だろう。
「二人か、その場合距離が出ないけど……
まぁいいわ、じゃあそこの女を連れていくわ」
花澤さんは、倒れて伸びている二人の女性のうち、下着姿の方を指さして言った。
だが、僕は首を横に振る。
「花澤さんには鷲宮先輩をお願いしたい。
多分外には救急隊員が来てるはずだから、そこに連れて行って欲しいんだ」
「ダメよ、私の目的はその女の子なんだから」
「じゃあこの子は確実に花澤さんの元へ届ける。
だから、お願い。
だって考えてもみて?海パン一丁の男が火事の中から女の子を抱えて出てきたら何事だってなるじゃない?
多分もう報道も来てるだろうし」
花澤さんは、僕の意見を聞いて少し考える。
「花澤さんはこの子が火事を起こすかもって知っていて一人でここに乗り込んできたんだよね?
警察にも連絡せずに。
それは魔法についてあまり大っぴらにしたくないってことだと思ったんだけど合ってるかな?」
「それはそうだけど」
「僕の魔法なら、人目につかずにここから離れることができる。
だから、下着姿と海パン姿の僕らがペアになった方が良いんだよ」
花澤さんは再度考え、頷いた。
「分かった。
もう時間はないわ。
私はすぐに離脱するから、あなたも気をつけて」
花澤さんそういうとすぐに鷲宮先輩のそばにしゃがむと、先輩の手を握った。
そして、ポケットから何かを取り出した。
手のひらで包めるほどの大きさらしく、それが何か分からない。
「100メートル……5か、悪くないわね」
その何かを手の中で転がしたかと思うと、次の瞬間には二人の姿が消えていた。
後には、海パンの僕と下着姿の元レザー少女が残された。




