第7話【鷲宮みずき 男性水着サウナチャレンジ】④★★★
「結構暑いわね」
サウナに入って5分。
体の水滴が乾き、代わりに汗が全身から吹き出しはじめたタイミングで鷲宮先輩が呟く。
「無理は良くないですよ」
「別に限界ってわけじゃないけど、この体勢も楽じゃなくて」
肘を太ももについて上半身を支えている僕に対して、胸を両手で押さえている鷲宮先輩は、姿勢の自由が効かない。
サウナでは、その不自由さが外よりもより強く感じられるようだ。
「僕はそっちを見ないので、そろそろ手を外したらどうですか?
前屈みなら隠してるものも見えませんし」
「どうせ私のは前傾姿勢で垂れるほど膨らんでませんよ」
「別にそんなことは言ってないじゃないですか」
鷲宮先輩は、頑なに胸から手を離さない。
男性用の海パンを履き、上裸姿で後輩男子と並んでサウナに入る、と言う文字で書き起こすとより異常性が際立つ行動をとっていながら、そこだけはずっと理性が押さえつけているようだ。
「そんなに僕が、鷲宮先輩をそう言う対象に見れないって言った事を怒ってるんですか?」
「なによその言い方!
それじゃあまるで私が、山田にそう言う目で見て欲しいみたいじゃないの」
「違うんですか?」
「違う!山田のくせに私のことを対象外だと言う傲慢な態度に腹を立ててるの」
それは同じことではないのだろうか?
鷲宮先輩にとっては、大きく違うらしい。
「別に手を外してもいいけど、私の体じゃ興奮しませんって明言してる男に見せるなんて勿体無いからさ」
鷲宮先輩の体で興奮すると明言してる男に見せる方が色々と危険だと思うが。
だが、そんな理由で手を外さないなら、僕も態度を改よう。
「別に興奮しないとは言ってませんよ。
強がってましたけど、そんな格好の鷲宮先輩と隣に座ってるだけで、結構いっぱいいっぱいなんですから」
僕は前屈みになっていた姿勢を起こし、手をおしりの横につけて胸を張ってのけぞるような姿勢をとる。
隠れていた僕の下半身が露わになる。
そこには、どう言葉を紡いでも言い逃れができない、僕が鷲宮先輩のカラダに興奮している証拠が起き上がっていた。
鷲宮先輩は、隣から僕のその部位を凝視する。
「熱膨張したの?」
「エヴァネタですか?しかもテレビ版の」
僕の渾身のツッコミを、鷲宮先輩は無視する。
「そんな目で見れないとか言っておきながら、こんなに興奮してるのか?」
「興奮というか、仲のいい異性の先輩が半裸で隣に座ってたら、否が応でもこうなりますよ」
「ふーん」
熱さのせいかトロンとした目で僕のことを見てくる。
「じゃあこうすると、もっと興奮するってわけ?」
鷲宮先輩は、そういうとこれまで頑なに離さなかった胸の手を離し、僕と同じ姿勢を持った。
手をお尻の横について、上半身をのけ反らせるような姿勢。
もちろん、男性用水着を着ている鷲宮先輩の上半身を隠すものはない。
「それともこんなにちっちゃいおっぱいじゃ興奮しない?」
鷲宮先輩は、自分の胸を見下ろして言う。
首を動かしたことで、周辺に溜まっていた汗が集まり、胸の方は流れる。
流れる汗の軌跡は、なだらかに見えるそこにも、確かな膨らみがあることを教えてくれる。
僕は一度唾を飲み込んだ。
サウナの熱さのせいではない。
こんなに湿度の高い場所にいるのに、喉が渇いて仕方がない。
改めて鷲宮先輩を見る。
サウナの熱で赤くなり、熱さに瞳を潤ませ、シャワーと汗で濡れた髪からは水滴が滴り体を流れる。
今朝、スカートの制服を着ていた仲のいい先輩が、海パン一枚で横に座っている。
非現実的な光景と、サウナの熱が僕の思考力を奪っていく。
「触ってもいいですか?」
気がつくとそう口走っていた。
言い終えた瞬間に急に頭の芯が冷える。
脳が、まずいことを口走ったと理解する。
今は、言いくるめの魔法を使っているわけではない。
急にこんなことを言えば、良くて笑い者、悪ければ今後口を聞いてもらえないかもしれない。
サウナの熱とは関係のない汗が背中を流れる。
「あ、いや、これは違くて」
「いいよ」
慌てて否定しようとした僕の声と鷲宮先輩の声が重なる。
「え、なんて」
「だから、いいって言ってるの」
鷲宮先輩が、腰を捻り胸をこちらに向ける。
上目遣いでこちらを見る目が潤んでいる。
サウナの熱で赤くなった頬。
半開きの口からは、サウナの熱よりも熱い吐息が漏れている。
僕は、鷲宮先輩のその姿に見入るうちに頭がぼーっとしてきた。
一度冷めた脳は、また熱暴走を始めたようだ。
僕はもう、自分が何を話しているのか、何をしているのかが分からなくなっていた。
「それじゃあ、失礼して」
僕は、鷲宮先輩の方に体を向けて手をのばす。
どちらを触るべきか悩んで、結局両手を同時に突き出す。
鷲宮先輩は、少し恥ずかしそうにしつつも、胸を手で隠すことはせず、むしろ僕の手を受け入れるかのように突き出して待ち構える。
僕は手を開いたまま、鷲宮先輩の胸に触れる。
胸と言っても大きな膨らみはなく、中央の突起だけがそこを胸たらしめている。
僕の手のひらが、その突起に触れた。
その瞬間、まるでそれがスイッチだったかのようなタイミングで、警報が鳴り響いた。
「近隣店舗にて火災が発生。
ご利用中のお客様は、直ちに従業員の指示に従い避難してください」
警報と共にアナウンスが流れる。
僕は鷲宮先輩の胸に触れたまま、鷲宮先輩と見つめ合しばらくの間固まっていた。




