第6話【鷲宮みずき_ラッキーすけべになる魔法】⑦★☆☆
チケットを渡したあと、僕と鷲宮先輩は、店員さんから店内のルールを説明してもらった。
プレオープンらしい、たどたどしい説明だったが、基本的には普通の入浴施設と同じように使えば問題ないようだ。
個室サウナには、脱衣所、シャワー室、水風呂、サウナに加え、整い場?というところがあるらしい。
90分制で、ワンドリンクがつくという事だったので、僕はオススメと書かれたオロポという飲み物を選んだ。
飲み物はサウナ内持ち込み禁止と念を押された。
ドリンクを選ぶ際に、料金表が目に入ったが、一番下のプランでも高校生にはなかなか手が出ない値段だった。
今日はプレオープンということで、お客さんが少ない。ラッキーな事に一番高いサウナが空いているという事で、そこを使わせてもらう事になった。
あれよあれよと説明が終わると、水着やサウナ帽、タオルなどレンタル品一式が入ったカゴを渡された部屋に案内された。
「それではごゆっくり」
店員がそういって頭を下げて個室サウナの扉を締めたところで、僕らはようやく一息つけた。
「えっと、入れてしまったわけですがどうしましょうか?」
「どうしましょうかって一緒にサウナに入りましょうか、以外にここからの選択肢があるの?」
店に入れてもなお及び腰な僕に対して、鷲宮先輩はレンタル品が入ったカゴを肩にかけて男らしくそう言う。
これは、さっき「そう言う対象に見えない」といった事を相当根に持っているようだ。
いつもの僕なら、相手が森崎先輩や大神のように元々の関係値が低い相手なら、こんな絶好のシチュエーションを逃したりはしない。
けれど、鷲宮先輩とは魔導書を手に入れる前からの関係があり、魔導書抜きで仲良くなった過去があり、魔導書なしで関わっていける可能性がある。
ここで下心を全開にしていまうと、その可能性を潰してしまう気がして思い切った行動に出れない。
「分かりました!90分制と言う事だったんで、代わりばんこに入りましょ」
「ここまできてそれはないだろ?
確かに少し狭めのサウナだけど、二人並んで入れるぞ」
僕のほうがエッチな展開になるのを避けると言う、世にも奇妙な常態が続くが、すでにサウナルームをチェックしに行っていた鷲宮先輩が、熱気に顔を顰めながら誘ってくる。
「それともやっぱり私のカラダに欲情しちゃうから並んでは入れないかな?
男の子は大変だよねー。そう言う気分になったらすぐバレちゃうから」
ジャージの長袖と長ズボンを脱ぎ半袖半ズボンになりながら、鷲宮先輩が言う。
僕より一回り小さい鷲宮先輩。
僕の体操服では、胸元や脇、太ももあたりの隙間が大きくその奥が見えそうになる。
「まぁ無理もないよね。
山田って女の子の体に耐性無いだろうし、緊張しちゃうのは分かるよ。
どうせ千紗にだって勇気出さないんだろうから。
水着姿の女の子とこんなところに入れるなんて、一生に一度しかないチャンスだよ。それを逃しちゃっていいのかな?」
僕が動揺している事をいい事に、鷲宮先輩はどんどん煽ってくる。
「でもそんな風に目の前のチャンスを逃し続けたら、この先女の子と仲良くなる事なく人生を終える事になっちゃうよ」
僕の反応がないのをいい事に、鷲宮先輩の煽りは加速する。
どれだけ煽っても僕なら問題ないと思われているのだろう。
……舐められたものだ。
僕の中で、何かスイッチが入った気がした。
「そこまで言うなら、一緒に入りましょうか」
「お、急にどうしたの?やっぱり私と一緒にサウナに入りたかったんでしょ」
「鷲宮先輩のことは、本当にそう言う目で見てませんから。それを証明するために一緒に入るんです」
「ほー強情だね」
僕と鷲宮先輩は、互いに煽りながら脱衣所に向かう。
個室サウナの脱衣所はひとつしかなく、流石に同時に着替えることはできないので順番に着替える事になった。
鷲宮先輩がトイレに行くと言うので、僕が先に水着に着替える。
男性用の水着は、よくある膝丈の海水パンツだ。
締め付けるのが良くないのか、インナーパンツが付いていないタイプだったのが少し心許ない。
鷲宮先輩はまだトイレのようだ。
一人になり冷静になると、仲のいい女性の先輩とサウナに入ろうとしている現在の状況の異常さを強く感じる。
それに今日は、自分自身の鷲宮先輩への気持ちがすごく不安定だ。
これから一緒に入るサウナで、もし醜態を晒してしまったら。
良くて暫くの間馬鹿にされまくるし、悪ければ今後の関係に影響が出かねない。
そうなる前に手を打たねば。
手荷物はラッカーに預けてしまったので、今手元に魔導書はない。
だから、己の道一つで対処する必要がある。
僕は、先輩のレンタル品が置かれているのを見つけた。
そこには、これから鷲宮先輩が着替える水着が入っている。
水着の写真は受付で見たが、改めて女性用水着がどんなものか実物をあらかじめ確認しておくことで鷲宮先輩が着替えた後に動揺しないようにしておこう。
そう思って、僕はかごから水着を取り出した。
「え……」
水着を手に取り、かごから取り出す。
取り出したものを見て、僕は言葉を失った。
「なんで……」
目の前の光景。
それを僕は信じることができない。
「でも、だって……」
僕は手に持った水着を何度も確かめる。
何度確かめたところで、現実は変わらない。
そこにあったのは、僕が履いているのと同じ男性用の水着だった。




